【ただいま収穫中!】都会暮らしから農家へ。「食べてくれる人」を思う、野菜づくり
坂ノ途中 倉田
こんにちは!京都から日本全国へ、環境負荷の小さな農業で育てられた野菜をお届けする『坂ノ途中』の倉田です。
うつわや革小物など、日々の暮らしに欠かせない道具たち。デザインや使い心地のよさがいいことに加え、作り手の顔が見えるとより愛着や信頼が湧くことってありませんか?
私たちは、それは日々の食卓に欠かせない「食材」もきっと同じだろうと考えています。
定期宅配のボックスに野菜と一緒に同梱している「坂ノ途中だより」でも、たびたびご紹介していますが、坂ノ途中が提携する農家さんにはユニークな経歴を持っているかたもたくさんいらっしゃいます。
その多くは、ほかの仕事をしながら何かきっかけがあって農業を志し、一歩を踏み出した方たち。今回は、私が「きっかけ」のお話を聞いてみたいな、とずっと思っていた農家さんの畑へお邪魔してきました。
30代で都会暮らしから農家へ。二名翠さんを訪ねました
(撮影:二名 一気)
今回伺ったのは、就農1年目、京都府南丹市の「グリングリンファーム」二名 翠(ふたな みどり)さん。私と同じ30代。もともとは都会で働いていた女性です。
翠さんの育てた野菜たちは、元気いっぱいでどこかかわいらしい雰囲気。私がスタッフをしている東京の店舗「坂ノ途中soil ヨヨギ garage」「坂ノ途中soil キョードー」でも、この夏、食用ホオズキやトマト、ズッキーニなどを販売していました。
どんな選択を経てひとりで農業を始めるに至ったのだろう、どんな物語があったのだろう……翠さんの野菜を見るたびに思っていました。
翠さんは植物を使った染色作家としても活動されていると知り、学生時代に伝統染織の研究をしていた私は、すこし親近感を覚えたりも。
翠さんの物語を伺いに、9月のある日、翠さんの農場「グリングリンファーム」を訪ねました。
「自分の手を動かす仕事をしたい」
グリングリンファームの二名翠さん(右)と、私・倉田(左)
優しい笑顔と語り口調が印象的な翠さんは、もともとは生まれも育ちも東京の都会っ子。大学進学を機に北海道へ。もともと興味があった農学部で学びますが、専攻は穀物の品種。実験室での作業がメインだったそうです。
翠さん:
「卒業後は横浜で造園の設計や施工管理の仕事につきました。仕事は楽しかったのですが、次第に、管理するより自分の体を動かしたい、現場で仕事をしたいと思うようになっていったんです。
そんな思いを抱えながら、3年がたったころ。学生時代を過ごした北海道に戻ろう。北海道で農業をしよう。ふっと、そんな思いが生まれました。なぜかそれが自分の中ですごくしっくりきて。仕事をやめ、北海道へ移住しました」
私は自分の手を動かす仕事をしたいんだ。そう気づいたのが、翠さんのひとつめの転機でした。
暮らしとひと続きにつながる仕事。「この生き方を大切にしたい」と思った
翠さんの畑で鈴なりになった食用ホオズキ。甘酸っぱくておいしいんですよ。
東京から再び北の大地へ戻った翠さん。どんな暮らしが待っていたのでしょう。
翠さん:
「北海道には2年いました。最初は有機農家で住み込み。畑の真ん中に、電気も水道もない納屋があって、試しに住んでみたんです。それがすごく楽しかった。
日が暮れ農作業を終えて薪でご飯を炊いたり、日の出とともに起きて水汲みに行ったり、季節の野菜や山菜をその場で調理して食べたり。
『生きている』って手ごたえを感じました。仕事である農作業が、暮らしの中に溶け込んでいるというか、ひと続きになっていたんです。
他の農家さんを訪ねたりもしたんですけれど、農家のお母さんたちって、夜、テレビを見ながら豆よりをしていたりするんですよね。彼女にとってそれは仕事というより、暮らしの一部。自然と手を動かしてやっていること。
そういう昔からずっと続いてきた暮らしと仕事を、私は大切にしたい。これで生きていきたい。そう思いました。
染めものを始めたのもこの頃。農業と同じく、周囲の自然の中にあるものを生かす、暮らしに密着した仕事をしたいなと思ったんです」
農業は「食べてくれる人のことを思う仕事」だと学んだ
収穫後、乾燥させてから出荷する食用ホオズキ。重ならないよう、ひとつひとつ並べていきます。
こうして、農業への思いを深めていった翠さん。北海道で2年目を迎えたころ、次の転機が訪れます。北海道へ出張に来ていた、坂ノ途中代表 小野との出会いでした。
翠さん:
「小野さんに『これから農業をやっていきたいんだ』と話をしたら、『それなら、京都にあるウチの農場に研修に来てみたらどうか』と。思い切って京都へ移住し、1年間、坂ノ途中の自社農場 やまのあいだファームで農作業をしました。
やまのあいだファームは、ひとつひとつの作業がとても丁寧なんです。まわりの生き物の循環を考えながら、食べる人のことを考えながら、畑に手を入れていく。農業は食べてもらう人のことを考えて、手をかけて大切に営む仕事なんだと学びました」
そして2016年。翠さんは、やまのあいだファームからもほど近い、京都の南丹市に土地と古民家を借り、「グリングリンファーム」と名付けた農場をスタートさせました。
栽培品目のメインはころんとした形がかわいらしい食用ホオズキ。女性ひとりで農業をするなら……と考えた結果、軽くて日持ちがし収穫や出荷がしやすく、またジャムなどへの加工にも向いている食用ホオズキを選んだそうです。
農業は「生き方を選べる仕事」
身近にある竹を使って手づくりした物干し台に、ホオズキと染めものを干す翠さん。
ひとりで農業を営むって、すごく大変ですよね?翠さんにとっての農業の魅力って何なのでしょう。と聞いた私に、翠さんは笑って答えてくれました。
翠さん:
「確かに、苦労することも多いです。虫に苗の葉っぱを全部食べられてしまったりとか。でも、がっかりする一方で『ああ、他の生き物たちと一緒に生きているんだな』という手ごたえみたいなものも感じます。
生き物の連鎖の中にいることを実感できる仕事って、なかなか他にないと思うんです。わからないこと、失敗してしまうこともたくさんあるけれど、やっぱり、自分の手を動かして働くのは楽しい。
農業って『生き方を選べる仕事』だと思います。どんな農業をするのか、どんなものを育てるのか、どんな場所でするのか。農業を『暮らしとひと続きの仕事』と捉えてもいいし、そうでなくてもいい。
私のように、染色というもうひとつの仕事を持つという選択肢もあります。色々な場所を経て選んだ今の生き方は、自分にすごくフィットしているな、と思っています」
自分が「しっくりくる」と感じる生き方を選んだ結果、農業にたどりついた翠さん。ひとつひとつの「転機」で自分に正直に向かい合い、のびやかに乗り越えてこられたのだな、とお話を伺って感じました。
大変なこともたくさんある、と語りながらも、野菜たちへのまなざしは愛おしげ。わたしが感じていた翠さんの野菜の「かわいらしさ」は、きっと、そんなふうに大切に育てられたからこそ生まれるのでしょう。
坂ノ途中の提携する農家さんの野菜は、食べる人のことを考え、自然の力を大切に丁寧に育てられたもの。農家さんたちの思いや自然の手触りも一緒に感じていただけますように……そんな思いを込めて、野菜セットをお届けしています。
▽グリングリンファームの野菜も!坂ノ途中の「お試しセット」はこちらから。
倉田優香
環境負荷の低い農業でつくられた野菜を全国へ届ける『坂ノ途中』の広報。1984年、福岡県生まれの31歳。もともとは電機メーカーでバイヤーとして働いていたが、1年ほど前に『坂ノ途中』へ転職。広報のほか、東京にある店舗「坂ノ途中soil ヨヨギ garage」、「坂ノ途中soil キョードー」を担当する。いちばん好きな野菜はナス。自己紹介はコチラ。
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