【スタッフコラム】帰る場所

編集スタッフ 寿山

ことの発端は、さかのぼること七ヶ月前。

昨年末に「自分がどんな親でありたいのか」を考えさせられる出来事に直面しました。

娘を出産してからというもの、目のまえの命に向き合うことに夢中で、先を見通す節目もなく走り続けていたように思います。

でも、ふと考えたのです。

自分は、どんな親でありたいのだろうと。そもそも親として、どれだけの覚悟があるのだろうかと。

ちょっと堅苦しい話ではあるけれど、夫婦で話しあって出した結論は「どんなときも子どもが安心して帰れる、場所をつくろう」ということでした。

そのための一歩として、賃貸暮らしをやめて家を購入することに決めた私たちは、年明けから物件さがしを始めることに。

それまで不動産を購入するなんて、考えたこともありませんでした。いつだって状況に合わせて動けるよう、ずっと賃貸でいいとさえ思っていたのに。

40歳が見えてきた頃に、家族でひとつの場所に根ざして、暮らしを積み重ねていきたいと感じるのだから、人生ってわからないものです。

家を建てようと決意したものの、頭金らしきものがある訳でもなく、年齢を考えたら35年ローンを返済するのは難しい。

いちから建築家に設計してもらう家や、注文住宅は予算オーバー。すぐに住める建売住宅も中古物件もたくさん見たけれど、どうしても納得できる家を見つけられない。物件探しが暗礁に乗り上げたころ、不動産業者からある土地を勧められました。

更地を買うなんて考えたこともなかったので驚いたのですが。よくよく話を聞くと、売主が建設会社で、その会社に建物も発注すれば、低コストで家を建てられると。一定の制約はあれど、自分たちで間取りも決めることができるし、インテリアに使う材料や色もある程度は選べると。

今の自分たちに、ちょうどいいかもしれない。

デメリットが隠れているのでは?と、あれこれ詳細を確認したのですが、私たちにとって負荷になる要素はない印象。他の選択肢を何度も検証したけれど、この感覚を上まるものがなくて。何より自分たちで決めたことであれば、どんな仕上がりでも納得できそうだと感じたのです。

そんなこんなで限られた条件の中から、好きなものだけというより、嫌じゃないものを寄せ集めたわが家が、間もなく完成します。

決断した時は、今のような状況を想像もしていなかったので不安は消えませんが、身の丈に合った真っ白な箱を手にした気分です。ここで暮らしていくという覚悟とともに。

どれだけこの家を好きになれるだろう。

今まで中途半端にしてきたインテリアや、失敗つづきのインドアグリーンにも、真剣に向き合ってみようと思っています。

そしていつか、家族全員が「家がすき」と、心から言える日が来ることを願って。ここを、帰る場所にできたらと思うのです。

 

photo:松浦摩耶


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