【とっておきの椅子選び】第3話:ビンテージ家具が選ばれるワケと、お手入れ方法(北欧家具talo)
編集スタッフ 栗村
北欧家具taloの山口太郎さんに、椅子選びのポイントを教えてもらっている本特集。
1話目では、デザインを中心にフィンランドとデンマークの椅子の違いを、2話目では座り心地の良い椅子の選び方と、デザイナーの椅子のポイントを教えてもらいました。
3話目では、ビンテージの良さや、椅子を迎えた後のお手入れ方法をお伺いします。
おしゃれな家にビンテージの椅子がある理由
山口さん
「買い付けに行ったときに、海外のディーラーの家に伺うことがあるんです。
そこで、いろんな方の家を見てわかったのが、おしゃれな人ってひとつのものに対する興味の幅がすごく広いんですよ。
椅子を買うにしても、ただいいものが欲しいとなったら新品のYチェアやフィンユールの椅子を買えばいいんですが、彼らはそれはしない。
その椅子ができた背景や、デザイナーの特徴を理解して掘り下げる。その結果、歴史があって面白みのあるビンテージを選んでいるんです」
山口さん
「もちろんビンテージって、なんかかっこいいよねって言って選んでいる方もたくさんいます。それも素晴らしいことだと思います。
だって、古いモノを大切に使うって大変なんですよ。壊れていたらメンテナンスが必要ですしお金がかかる。
これだけ簡単にモノを買い換えられる時代に、ひとつのものを丁寧に使っていく姿勢は大切だなと思っています」
山口さん
「さらにビンテージの家具のいいところは、今作られている家具よりもいい素材が贅沢に使われているんです。
例えば最近のチークの木は、薬剤を使って人工的に育てられているので、木目が均一で表情がないんです。
でも古いものは、雨が多かったり風が強かったり自然の変化で木目が変わって、それが味になります」
山口さん
「この椅子には、オーク材が使われていますが、今だとこんなに表情のある木目を使うことなんてできないんです。しかもその良い部分を背もたれに使っていて、もしも部屋にこの椅子があったら、一気に雰囲気が出ますよ」
ビンテージだからって、こまめなお手入れはいりません
ビンテージの家具を迎えたら気になるのが、どれくらいメンテナンスが必要なのかと言うこと。お手入れ方法について伺ってみました。
山口さん
「乾燥している北欧だと家具用のオイルを塗るのですが、日本は湿気が多いので年に何度もオイルを塗るといった特別な手入れは必要ありません。
意識することと言ったら、清潔に保つことですね。汚れたら布巾で拭きあげるのが基本です。
もしも簡単に取れない汚れがついてしまったら、食器用洗剤をつけた布で拭いてあげてください。
洗剤を使った場合は、乾燥を防ぐために家具用のオイルを塗ってあげるのが良いですよ。
お手入れのタイミングは半年〜1年に1回ほどで良いと思います」
山口さん
「あと気にしてあげるのは、椅子のぐらつきくらいです。
使っていていきなり、椅子が折れるということありません。椅子が壊れる原因は、ほとんどが緩みを直さず使い続けた場合です。
ネジで止めているものなら、ネジをしめてあげれば大丈夫ですし、そうじゃない場合はメンテナンスに出してあげれば大丈夫です。
でもこれはビンテージだけじゃなくて、新しい椅子でも同じ。ビンテージだからってこまめなお手入れが必要ということはないですよ」
すぐ塗るフィンランド人と、何もしないデンマーク人
たくさんある椅子を見ていると気になったのが、フィンランドの椅子に塗装されたものが多いこと。いったいなぜなのでしょうか。
山口さん
「フィンランドはリノベーションの文化があるので、家の壁など汚れたらとにかくペンキを塗っているような気がします。
他の北欧諸国よりも塗ることが好きなので、椅子も同じで、古くなってペンキを塗られたものが多いですね。
だからフィンランドの椅子は使っていくうちに、塗り替えてしまって良いんですよ。それがフィンランド流なので。
他にも、北欧の国によってリペアや手入れの方法が全然違います。スウェーデン人はとにかく張り替える文化があって、デンマーク人は何にもしない。汚れても気にしないで使っていることが多いです。だからビンテージのソファーとかもスプリングが出たままのものをそのまま使い続けていますよ」
▲ペンキが塗られたフィンランドの椅子。背面だけ塗らないというのも、よく見かけるのだそう
ビンテージの椅子の2脚目、3脚目の選び方
それぞれ個性のあるビンテージの椅子。だけどおしゃれな家には、バラバラでも統一感があるような気がしています。
2脚3脚と増やしていくときに、統一感を出すコツはあるのでしょうか。
山口さん
「一番簡単なのは、ビンテージの家具は、古いほど貫禄があるので、近い年代で合わせるとしっくりきやすいです。
他には、例えばアアルトの椅子に合わせるなら、デンマークの椅子の中でも、少しぽってりとした美しすぎないデザインを選ぶと良いかもしれません。ウェグナーやモーエンセンなどは相性がいいですよ。
でも難しいことは考えなくても良いかもしれません。椅子や家具の好みってガラリと変わるものでもないので、自分が好きなデザインのものを集めていけば自然と統一感が出てくるような気がします」
ずっと難しそうと思っていたビンテージは、ずっと手軽でおもしろい魅力がたくさんありました。
さて、3話に渡ってご紹介してきた椅子選び。この記事をまとめていたら、ますます椅子のことが頭から離れなくて、毎晩夜更かししながらアアルトやモーエンセン、ウェグナーの椅子をぐるぐる探し回っています。
とっておきの椅子が見つかるまで、もうしばらくこの楽しみが続きそうです。
(おわり)
【写真】鍵岡龍門
山口太郎(やまぐちたろう)
1973年生まれ。神奈川県伊勢原市にある北欧家具taloのオーナー。27歳でフィンランドに行き、北欧家具の買い付けをはじめる。現在は1年の約半分を北欧で過ごす。
WEBサイト:https://www.talo.tv/
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