【スタッフコラム】新しいことを学ぶなら

編集スタッフ 田中

3月になり、「新生活」というフレーズが頭に浮かぶ季節になりました。

新生活というと、大きな転機とともにやってくるようなイメージを持っているので、いまの私のそばには特段「新生活」が訪れる気配はないけれど。次いつ「新生活」と呼ぶにふさわしい目新しいものがやってくるのだろう、とちょっと寂しく思いながら。

それでも、春はいいですね。緑が増えて、花が咲き、暖かな風が吹く。

天気の良い日には、柔らかな光が加わって、その景色に包まれていたら、漠然とした不安はどうでもよくなってきて、頭の中まで春爛漫…!

「新生活」がやってこなくても、日々、わからないこと・まだ知らなくても生きていけると思っていたことに直面するできごとがちょこちょこやってきて、ふいに私は「学ばなければ」という想いに駆られます。

仕事で誰かとお話するとき、知ったかぶりはよくないので物事はなるたけ素直に聞くように。でも、これを聞いてしまうのは失礼? と踏みとどまったときには、学ぶタイミング。

学校をとうに卒業してしまった私には、学ぶことが懐かしくも遠い存在に思えてしまう時があって。“学ぶ場所” に常に属していた頃はそんなことは無意識だったから。

本で調べる派?
まず人に聞いちゃう派?
実践から学ぶ派?
どれも有効で、どれをとっても遠回りでないと思う。

でも私には、いつの間にか芽生えていた本への苦手意識があって。仕事にまつわる書物は苦手で、甘えるようですが白状すると、元気があるときにしか読めません。

先日母と会話していたら、「幼い頃は本好きでよく読んでいたよ」と言われて驚きました。「どこで覚えたんだろうと思う言葉も使っていて。本が好きだからかなと思っていた」とも。

驚いたのは、学生時代はスポーツに明け暮れていて、記憶の中に本を読む私はもういなかったから。でもそう言われて、ほんとかうそか、記憶の彼方に、学校の図書館の新着棚を覗き込むかつての自分の姿が思い起こされました。

あれは、小学校低学年だったかな。今では本のタイトルを思い出せないのですが、お地蔵さんのイラストが書かれた本のシリーズを好きでよく読んでいました。友達はたしか、「かいけつゾロリ」を読んでいたあの頃。かつての私は、趣味が渋すぎて笑えません……。

おぼろげながら、半分にイラストが、半分に文字が書かれたシンプルなその本は、わたしのなかにすっと入り込んできて、何かの置き土産をくれたのでしょう。じゃなきゃ、そんなに熱中する理由がないように思うので。

この記憶を思い出して、「学ぶ」ってこういうことの積み重ねでやってきたなと思うのです。

無意識に学んでいたあの頃と比べ、今は意識的に学ぼうと肩に力が入っている。

でもシンプルなあの本のように、余白で何かを思いながら学ぶ経験は、今の私にとって大きな財産になっているような。

テストに向けた勉強と違って、これからの私の学びは概ね、なにかの結論を急ぐ必要もないのかもとも思います。

「学ばなければ」とプレッシャーを背負い込む自分と、「急がずにいこうよ」とお茶をすする自分。ひっくるめて経験にかえて、このはざまを楽しめたらな、なんて思う新生活の少し前のことでした。


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