編集スタッフ　寿山

平日はごはん党のわが家ですが、週末だけは朝食にパンを食べます。

ありきたりの材料だけど、ホームベーカリーで焼いた食パンに、お気に入りの発酵バターをたっぷりと塗って、そのまま食べたり、はちみつやメープルシロップをかけたり。とにかく週末の朝ごはんは、ちょっとだけ特別な気分を味わいたいのです。

ところが先週の土曜の晩、いつものようにパンを焼く準備をしていたら、牛乳やバターに砂糖、塩を入れ終わったあたりで強力粉を切らしていることに気がつきました。

これを仕込んだらお風呂に入って映画でも見ようと思っていたのに……

焼き立てのパンをあきらめるのか、スーパーへ強力粉を買いに行くのか、迷いに迷って自転車にまたがりました。

向かった先は近所のドラッグストア。わりとなんでも揃うはずと思っていたけれど、棚には強力粉が見当たりません。

あきらめて帰ろうかと思いながらも、その時間でも営業しているちょっと遠いスーパーまで足を伸ばすことに。売り場で無事に強力粉を見つけて、ホッとしつつ帰路につきました。

と、信号の向こうに街灯に照らされた桜の木が見えます。

せっかくだから夜桜でも見ながら帰ろうと、少し遠回りの道を選んでペダルをこぎはじめました。

昼に見たはずの桜が、夜の街灯に照らされてなんだかドラマチックな雰囲気で、前に進むほどにいろいろな表情を見せてくれます。

ときにバス停のあかりに、ときに青信号に透かされた花びらはとても幻想的で、墨のような夜空に浮かぶ白いポンポンを見ていたら、強力粉を切らしたという失敗がスーと胸から消え去っていました。

夜に自転車をこぐことも久しぶりで、いい時間をもらったな〜と、夢見ごこちで家に戻りました。

3月くらいから気持ちが忙しなくて、つい効率的に過ごしてしまっていたけれど、やっぱり寄り道とか余白って大事だなあと桜が思い出させてくれた夜。

きっとまた何回も忘れてしまうだろうけれど、慌ただしさもひっくるめて、春にしかない空気感や景色を楽しんでいけたらなと思うのです。

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