第8回 おにぎりカフェ、いよいよ繁盛!
店長 佐藤
■◇◇■ 第8回 「おにぎりカフェ、いよいよ繁盛!」 ■◇◇■
今週は、おにぎりカフェがちらりと繁盛?した、お話をしたいと思います。
それは、ある週末に始まったのです。突然、何の予告もなしに。
正午12時をほんの少し回った頃、いつもの通りお客様がパラッパラッと
入り始め、いつもの通り注文を聞いて料理を出す準備に取りかかろうとした時
でした。
最初のグループに続いてゾロゾロ次から次へとお客様が入ってくるじゃ
ありませんか!!
計13人。全員女性。
全員同じグループで年齢30〜35歳くらい。
思わず唖然とする私。戸惑いと焦りでアタフタする彼氏。
(その日は週末だったため、丁度手伝いに来てくれていたのです。)
そんな私たちにはお構いなく、承諾無しにそしてテキパキと店内のテーブル
やら椅子やらを自由に並べ替えるお客様。
スウェーデン人は意外とこういう所は遠慮というものがない。
まあ、こちらとしては人手も足りなかったのでお好きにやって頂けて
良かったのですが、一言断るくらいしてくれても良かったのに。
完全に見下されてる。
何とか正気に戻り、厨房で全員のメニューをもう一度おさらいして段取りを
考える。
彼氏はお客様に水を出したり、セルフサービスのサラダとパンの説明を
一生懸命しているが、お客様は大人数での初めての場所に興奮覚めやらず、
といった感じで全く彼の話を聞いていない様子。
「まあ、好きにやってくれれば良いさ」と私は料理に集中。
おにぎりセットが5つにオムレツロール寿司が3つ、カレーが3つに
ラザニア2つ。
おにぎり圧勝!
しかし、そんなときに限っておにぎりの作り置きがないっ。
土曜日だしそんなに早く来ないでしょうとの〜んびり構えてたのが甘かった。
超特急で一気に15個のおむすびを握る。
作り終えた時は辺り一面、体全体、米粒だらけ。
「お米の神様ごめんなさい」と唱えながらロール寿司に取りかかる。
こちらはふわふわな卵が勝負なので、いつも注文が入ってから作っていた
んです。
まさか一度に3つも出るとは思ってなかった。
焦れば焦るほど手に力が入り、オムレツは破けるし中身のアボガドは
元気よく飛び出してくるし、上手く巻けない。
ボロボロになりながらも上手く継ぎはぎしてごまかす。
オムレツ寿司に四苦八苦していると、お客様から早くもプレッシャーの声が。
まだ注文から10分しか経ってないのにもうクレーム??
そう。スウェーデン人はレストランで料理が待てない。特にお昼は注文して
5分で出て来ないとピリピリし始めるんです。
味なんて二の次で、オムレツがふわふわしてようがトロ〜リとしてようが
どうでも良いのです。
早く出てくればそしてボリュームがあればそれで良いのです。
パスタだって15分待って茹でたてパスタを食べるよりも5分で出てくる
作り置きパスタの方を好むのです。
もちろん高級レストランでの食事は別ですが、普段食べるようなランチは
時間が勝負。
そんな国で、私は何も知らずに味で勝負を掛けていたんです。
無知って怖い。
そうこうしているうちに、セルフサービスのサラダやパンもすっからかん。
もうすぐでメインが出来上がるっていうのにそっちの方も急かされる。
しょうがないからまずサラダボールに野菜をぶっ込み、新しくパンを切って
カゴに入れていると、一人のお客様がなんとキッチンの中までズカズカと
入り込み、すかさず横からパンのかごとサラダを持って彼らのテーブルへ。
「えっ、今の誰?」「客?」「私の助っ人彼氏はどこで何をしてるの?」
色々な疑問が一瞬にして頭をよぎり、1人立ち尽くす。
ふと店内を見渡すと私の彼も一人棒立ち。
どうやら13人の30代女性軍団に圧倒されっぱなしで身動き一つ
出来なかったみたい。
スウェーデンの女性は強いっ!!迫力が違います。
特に人数が集まると怖い物知らず。
物怖じしない態度は、素敵なワインバーで1本2万円位するフランス製の
赤ワインみたい。
そんな彼らを怒らせたらもっと怖い。
料理がなかなか出て来なくて微妙に店内の様子が嫌な冷たい雰囲気を
帯び始めているのを感じ、慌てて私の中の過去10年でグランプリに
輝くであろうと思われる猛スピードで全てを用意し、
皆様の待つテーブルへ運ぶ。
最初は皆「遅いわよー」と言わんばかりの表情を浮かべていたが、
初めて見るおにぎりやオムレツロール寿司の姿に感銘を受けたのか、
徐々にピンっと張った空気に暖かみと柔らかさが戻ってくる。
あんなに沢山サラダやパンを食べたのに、全員完食。
有り難い事にカレーもラザニアも綺麗に食べてくれたのです。
良く食べるなぁ。やはりあのパワーはそこから来ているんだろうな。
食後に挨拶に行くと、どうやら彼らは同じ通りに新しく出来た
マッサージ教室に通い始めたばかりだそう。
皆、マッサージに興味があるという事で健康にも気を遣っているらしく、
日本食にも関心が高いとのことで、それ以来マッサージ教室が開かれる
土曜日は毎週のように来てくれるようになったのです。
このように、ジワリジワリとではありましたがファンが出来、
また目に見えて私の出す料理を食べに来てくれているというのが
実感できるようになったのは、それまでの苦労以上に嬉しかったし、
カフェを続けるやり甲斐にも繋がっていったんだろうなと思います。
ちらり繁盛と言っても1人、2人で切り盛りしていた訳ですから、
書いてみたらせいぜい13人が限度だったんです。
あの時は必死でキッチンの中は一人大奮闘だったんですけどね。
働くって大変です。稼ぐって大変です。
来週は、今でも覚えている心に残るお客様のお話をしたいと思います。
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