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第１１回　寒〜い早朝の仕入れ

デザイナー村田

■◇◇■　第11回　「寒〜い早朝の仕入れ」　■◇◇■

今日は、おにぎりカフェの食材仕入れ話です。

朝の買い出し。

ガリガリ、ガリッ、バサッ。

車のフロントガラスに降り積もった雪を払い落とし、霜で凍り付いた窓をヘラで削る。
もう手はカチカチに凍っていて、釘があったら打てそうなくらいだ。

私がカフェをやっていた期間は丁度、冬真っ只中。
11月から4月までの半年間。
思えばスウェーデンでの最初の冬はおにぎりに燃え、そして冬が終わると同時に
おにぎりカフェは消えてしまったのだった。

午前8時半、もう早朝とも言えない時間なのに辺りはまだまだ真っ暗で、
空を見上げると天には星空さえ広がっている。
朝の挨拶には暗すぎて、おはようと口を開くには寒すぎて、雪まみれの体をはたいて
無心で車に乗り込む。
完全に冷えきった私の体とは裏腹に、夏場あまり出番のなかった星達は、冬になると
急にはしゃぎだすのだ。

慣れないマニュアル車をぎこちない手つきでスタートさせ、慣れない雪道を恐る恐る
運転する。
日本でもマニュアル車なんてほとんど乗った事のなかった私、
今思うと、雪の中一人でよく運転したなあと思う。
さすが怖いもの知らず。

朝のストックホルムは意外にも通勤ラッシュというものがあり、特に道路はピークに
ぶつかってしまうと、とんでもない渋滞に巻き込まれてしまう。

朝の弱い私はついつい後５分、後１０分と布団の中でゴロゴロしてしまい、
魔の通勤ラッシュの餌食になるのである。

食材の買い出しはいつもカフェ出勤前。
カフェの近くの「PRIS EXTRA」という巨大スーパーマーケットで大体の生鮮食品は揃う。
高いが日本の某有名メーカーの醤油や寿司キット（お米、海苔、すし酢、醤油、巻きす、
そして太巻きの作り方がセットになっている）まで売っているのだから寿司ブームが
どれだけ侵入しているかがお分かりいただけると思う。

外国お決まりの、大人もすっぽり入る大きな買い物カートを引いて、
まずは野菜コーナーから。

レタス、トマト、キュウリ、パプリカ、アボガドなどを色や形、傷んでいないかを
確認しながら慎重にカゴへ入れて行く。
そこのスーパーは「メガ」がつくほど大きく、一つの商品の量もものすごく多いが、
その代わり商品の扱い方も物凄くひどい。
どうしようもなく傷んだキュウリやパプリカに出会ってしまう事も多々あるのだ。
適当に選んでどんどんカゴに入れてしまうと、後で半分くらい捨てるはめになるの
である。

野菜が一通り揃うと次はフルーツ売り場へ。

お客様が小腹がすいたときにも気軽にお店で買ってもらえるよう、バナナやりんご、
オレンジなんかも調達。
スウェーデン人はカフェでもバナナやりんごを丸かじりするのだ。

続いて、乳製品。

前回も書いたが、スウェーデン人はカフェラテをよく飲む。
一人当たりのコーヒー消費量はなんとフィンランドに次いで世界第2位で、
皆カフェラテを取り憑かれたように飲む。
だから牛乳の減りも驚くほど早い。
恐らく牛乳の消費量だって世界上位に違いない。

乳製品では他に、バターやチーズも欠かせない。
実はあまり今まで書いて来なかったがサンドウィッチもやっていて、
それにはた〜っぷリのチーズを使っていた。

ブリーやモッツァレラ、スウェーデンの牧師さんが作っているプレストチーズが人気。
スウェーデン人は、食べてる先からチーズの汗が出て来るのではないかと思うほど
惜しげもなく、罪悪感の欠片もなく、チーズを沢山食べるのである。
それだからマネキンだってお腹が出てくるのだ。（これも前回執筆あり）

他にもスムージーやミルクシェーク用のヨーグルトやお徳用バニラアイス、
ブルーベリーやラズベリーのジャムなども買う。

最後におにぎりの具材であるサーモン。
スウェーデンでは鮮やかな色で脂がのったツヤツヤのトロサーモンでも、
しっぽの先の方のかさついたサーモンでも値段は一緒。
魚の部位や魚の質によって値段が変わる事はないのである。
魚なんて日本では滅多に買ったことがなかったけど、そのくらいの違いは分かる。

「いかにも知ってます！」みたいな表情で品選び。

肉厚で脂ののった選りすぐりのサーモンをゲットし、ちょっとプロになった気分でレジへ。

外国のスーパーってなんでこんなに楽しいのだろう。
ついつい長居をしてしまう。

パン屋で買った焼きたてのクロワッサンを齧りながら、足早にカートごと駐車場へ。
大きな袋6,7個を手早くトランクに積み込む。