【少なくっても、大丈夫】第1話:靴箱にあるのは、全部で8足だけ。玄長なおこさんの、おしゃれの基本
編集スタッフ 岡本
靴は、たくさんなくちゃダメですか?
“おしゃれは足元から”
もう何度聞いたかわからない、この決まり文句。
もちろん、洋服やシーンに合わせて思い通りの靴を選ぶことができたら、おしゃれさんに近づけるはずです。
でも実際はそんなにたくさんの靴を持っているわけではないし、手持ちのなかでもよく履くのは足に馴染んだ数足だけだったり。
やっぱり選択肢が多いほど、おしゃれはたのしいのでしょうか。
そんな疑問を、“着まわしの女王”と呼ばれている、スタイリストの玄長なおこ(げんちょうなおこ)さんにぶつけてみました。
玄長さん:
「私が持っている靴は、全部で8足です。雨靴や夏しか履かないサンダルを含めても、それだけ。
でも足りないと思うことはないし、自分らしいファッションをたのしめていると思います」
特集「少なくっても大丈夫。」では、数足の靴を着回すコツや、自分らしいファッションを見つけるヒントを全3話でお届けします。
第1話では、玄長さんがとくに愛用している靴をご紹介します。
出産を機に。まず見直したのは「靴」でした
根っからのファッション好きで、もともとは靴も洋服もたくさん持っていたという玄長さん。
持ちものを見直すきっかけとなったのは、現在2歳になる娘さんを妊娠したときだそうです。
玄長さん:
「夫婦ふたり暮らしの住まいのまま家族が増えると考えたら、必然的にモノを減らさなくちゃと思いました。
職業柄どうしてもファッションにまつわるものが増えてしまっていたので、洋服や靴を重点的に見直すことに。
だいたい、服は5分の1の量に、なかでも靴は一番減らしたかな。
靴って色数をそんなに持っていなくても、いろいろなコーディネートに合わせられると気がついたんです」
玄長さん:
「私がよく履く5足があるんですが、それは白・黒・赤の3色だけ。テイストがちがうものを選んでいるので、十分さまざまなシーンに対応できます。
あとは、靴下も印象を変える大きなポイントですね。
サンダルは夏しか活躍しないかと言えばそうでもなくて、靴下を合わせれば秋口まで履けます。さらに、同じ革靴でもボトムとのすき間で差し色を効かせれば、ちがう表情を見せてくれます。
そう考えると、靴が少ない代わりに靴下はけっこうたくさん持っているかもしれません。
省スペースで収納できますし、手に取りやすい価格なので、重宝しているアイテムです」
玄長さんの言葉を聞いて手持ちの靴を思い描いてみると、最近履いていない靴の共通点が浮き彫りに。
そういえば、「いつか履くかも」ととっておいたちょっと奇抜な色の靴は、靴箱の隅で存在感を失いつつあります。
靴箱にあるのは、8足。これでオールシーズン大丈夫
雨用やサンダルなども含めて8足と考えると、とても少なく感じます。本当に足りるのでしょうか?
玄長さん:
「8足の内訳は、
・スニーカー3足
・バレエシューズ2足
・サンダル1足
・ドレスシューズ1足
・雨用ブーツ1足
です。
こうやって聞くと少ないですよね。改めて数えて、自分でもちょっとびっくりしました。
でも、気に入ったものを選びとっていったら自然とこの数に。暑い夏にドレスシューズは履かないので、季節で区切ると本当に少ない数をローテーションさせています」
なかでも、とくに愛用しているという5足を見せていただきました。
△左上から時計回りに、スニーカー:CONVERSE ALL STAR 100(Red)(White)、サンダル:BIRKENSTOCK(ARIZONA )、ドレスシューズ:ADIEU TRISTESSE、バレエシューズ:OPERA NATIONAL DE PARIS
少ない足数のなかに、似た形のスニーカーがあるのが気になります。
テイストがちがうものを、というセオリーとは異なるように思いますが、なにか理由があるのでしょうか。
玄長さん:
「靴はデザインの良さも大切ですが、なによりも履き心地の良さが一番。
赤と白のスニーカーは、一見ふつうのコンバースですが、ブランド100周年を機に発売された記念モデルです。
合わせやすい定番デザインはそのままに、インソールのクッションや、シュータンの厚みなど、機能性がバツグンに進化しました」
玄長さん:
「スニーカーが好きでいくつも持っていたのですが、デザイン性・機能性の高さともに文句なしのこの靴が自然と残り、年間を通して愛用しています。
初めて履いたときの驚きは、今でも忘れられません。それくらい履き心地がいいんですよ!
ここまで満足度の高い靴はなかなか出会えないので、そういったものは万能色と差し色でそれぞれ持っていると、コーディネートの幅が広がります」
玄長さん:
「サンダルは、歩きやすさとモデルの豊富さから、ビルケンシュトックがワードローブに残りました。
ビルケンの特徴は、買ったその日から足に馴染むところ。
よく、靴屋さんで『履いているうちに慣れますよ~』と言われることがありますが、このサンダルは待たなくっていいんです。笑
靴下と無理なく合わせられる点も、選んだ理由のひとつ。それだけでグンと幅が広がりますから。
コンバースもビルケンも、いつでもある安心感って、定番靴ならではの良さですよね。
履きつぶしても買い替えられる、だから自然と長く付き合いたいと思うんでしょうね」
玄長さん:
「お呼ばれや保護者会など、たまにしか履かないけれどなくてはならないフォーマル用の靴は、2足に絞ることに。
悩んだすえに選んだのが、丸みのあるフォルムが柔らかで上品な雰囲気を演出してくれる、バレエシューズでした。
ヒールがあるものは苦手で、思い切って手放したんです。
フラットの中でもバレエシューズが好きな理由は、足の甲が肌見えするデザインであること。
なので、馴染みのいい明るい色が合わせやすくて、白とシルバーを愛用中です。
シルバーと聞くと難しそう!と思われがちですが、意外とふだん着との相性がいいんです。白と同じ感覚で合わせれば問題ないはず。
歳を重ねてもさりげなく履ける差し色で、おすすめですよ」
△バレエシューズ:MAISON EUREKA
とはいえ流行もキャッチしたい。新しい服を買うときに欠かせないのは?
スタイリストという仕事柄、「流行には敏感でいたい」と話す玄長さん。
出産後に変化したという「新しいモノの買い足し方」について、教えていただきました。
玄長さん:
「大幅にモノは減らしたけれど、ファッションが好きな気持ちは以前と全く変わっていません。
変わったのは、買うときに試着を面倒くさがらないようになったこと。
鏡の前で合わせて素敵だと思っても、サイズが合っているか?手持ちの服に合うか?素材は気にならないか?そういった細かい部分は見えません」
玄長さん:
「それと、試着するまで気持ちが高まったアイテムは、お店の方の意見を聞くことも大切にしています」
ときに億劫に感じてしまう、店員さんとの会話。でも考えてみたら、靴や服と毎日接している店員さんの方が、まちがいなく自分よりもそのモノについて詳しいはずです。
玄長さんによると、コーディネートの相談やきれいに見える小技など、雑談から得るものが多いのだとか。
次回の買い物からは肩の力をぬいて、すこし頼ってみようと思います。
玄長さん:
「試着で自分の感覚を確かめて、店員さんとの会話で第三者の意見を聞く。そうして買ったものは、きっと自分に似合っているし着心地もいいはず。
私はこうするようになってから、買う量が半分くらいになりました。
アイテムは減ったけれど、クローゼットにも靴箱にも似合うものしかない状態になったので、おしゃれをラクチンに楽しめている気がします」
今まで抱いていた、“おしゃれな人=たくさんの靴を持っている”というイメージ。
玄長さんのお話を聞くうち、おしゃれさんの条件がそれだけではないことに気づきました。
続く第2話、第3話では、実際に玄長さん流コーディネートのポイントや、自分に似合うを知るためのコツについてお届けします。
おたのしみに。
(つづく)
【写真】かくたみほ
もくじ
玄長なおこ(スタイリスト)
北海道出身、夫と2歳の娘の3人暮らし。バンタンデザイン研究所を卒業後に独立し、さまざまな雑誌でスタイリングを担当。現在は、リンネルやnina’s(ニナーズ)などで活躍中。日本人の体型に合った、自然体のコーディネートが人気で、多くのモデルや読者から支持されている。
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