【メガネとわたし】後編:「好き」の気持ちを大切に。もっと楽しくなる、メガネの選び方
編集スタッフ 奥村
顔に似合うことだけが、メガネの正解じゃない? この特集では眼鏡ライターの伊藤美玲(いとう みれい)さんに、「フィットするメガネ」に出合うコツを全2話で伺っています。
前編では、似合うかよりも「自分らしいか」を大切にする、伊藤さんのメガネ観について聞きました。
後編では、そんな伊藤さんが普段実践している、具体的なメガネ選びのポイントを教わります。
レンズの形は、顔型を気にせず選んでいい?
前編で、アクセサリーのように直感で『好き』と思えるメガネを選ぶと話していた伊藤さん。その直感を引き出すために、買うときはできるだけたくさんのメガネを見ると言います。
伊藤さん:
「メガネフレームには、丸、四角、台形…といろんなフォルムがあるもの。お店でたくさんの選択肢を見れば、自分がどんな形に惹かれるのかが、なんとなくわかってくるはずです」
わたし奥村が前から気になっていたのは、丸みのあるラウンド型やオーバル型のメガネ。けれど、丸顔な自分には似合わない気がして、挑戦できずにいました。
伊藤さん:
「丸いフレームが好きと感じたなら、その気持ちは大事にしていいんですよ。顔型別に似合うメガネが提案されることもありますが、それはあくまで提案のひとつ。
丸顔と一口に言っても、パーツの配置によって印象はさまざま。丸いフレームだって色々な種類があるから、セオリーに囚われる必要はないんです。
好きな形がわかったら、店員さんに希望を伝えて一緒に探してみるのもいいですね」
形にかかわらずおさえておきたいのは、掛けたとき『レンズの中心に黒目がくるようにする』ことだといいます。
伊藤さん:
「黒目がレンズの中心にくるのが、ベストなバランスです。顔の中でおさまりがよく見えて、それだけで『似合っている』印象にもつながります。
メガネは使うにつれて型崩れし、掛け位置もずれてきやすいもの。正しい位置で美しく掛けこなすためにも、気になったときは、お店で調整してもらうのがおすすめです」
フレームは、いつものアクセに合うものを
続いてはフレーム。色も素材もさまざまなものがあって、自分に合うデザインがなかなかわからずにいたのですが……
「そんな時は、自分の好きなアクセサリーを基準に考えてみたらどうでしょう?」と伊藤さん。普段つけているピアスやネックレスに近いカラーや素材感のものを選ぶと、まとまりが出るのだとか。
伊藤さん:
「わたしが今日つけているのは、『プティローブノアー』のイヤリングとネックレス。ゴールド系の華奢なアクセサリーが好きなので、自然になじむよう、メガネもゴールド素材の細いフレームを選びました」
伊藤さん:
「反対にオフの日は、ベレー帽などの帽子や、大きめのバングルやイヤリングなど、オンの日とは違うテイストの小物を身につけることが多いので、メガネもカジュアルなプラスチック素材のものを掛けています。
少し太めのフレームを選ぶと、主張の強いアイテムにも、バランスよくなじみますよ」
一生ものと気張らずに、気軽に付け替えたっていい
その日の服装や気分に合わせて。伊藤さんとメガネの関係は、ルールや制約にとらわれず、とっても自由で軽やかです。
これまで「メガネは一生もの」というイメージがあったわたしにとって、その向き合い方は新鮮なものでした。
▲娘さんの幼稚園へ行く日は、清潔感を意識したメガネを
伊藤さん:
「メガネはたしかに一生もの。でも、バッグや靴だって一生使えるものだけど、シーンによって使い分けていないでしょうか? だからメガネももっと気軽に付け替えてもいいアイテムだと、わたしは思っています。
暮らしには色々なシーンがあるから、それに合わせて皆いろんな顔をもっていますよね。わたしには仕事の日と休みの日に加えて、娘が生まれたことで、『幼稚園に行く日』の顔ができました。
だから『1本だけ』と気張らずに、それぞれのシーンで自分を飾るアイテムのひとつとして、わたしはメガネを選んでいます」
「コンプレックスがあったから、フィットするメガネに出合えました」
これまでわたし奥村のメガネ選びのネックになっていたのは、丸顔というコンプレックスでした。
けれど伊藤さんにとっては、それすらも、選ぶメガネの可能性を広げてくれる要素だと言います。
伊藤さん:
「わたしは昔から、キツい顔立ちなのがコンプレックスでした。
そこである時、柔和な印象の丸フレームのメガネを掛けてみたら、自分の表情がとても優しく見えて。メガネ次第で自分はこんなに変われるんだと、その楽しさに気づけたんです。
だから、コンプレックスは自分に合うメガネを探すための大事な『自分らしさ』でもあると思っています」
思えばわたしは、メガネそのものに対してよりも、メガネを通じて自分の嫌いな部分に向き合わなければならないことに、抵抗を感じていたのかもしれません。
それをどうカバーしようと考えるより、そこに合うおしゃれを見つけようと思うこと。
それは、服やアクセサリーを探すときと同じ感覚で、シンプルにおしゃれを模索する、ワクワクする挑戦に思えてきました。
1本のメガネをきっかけに、伊藤さんのようにわたしも、思いがけないおしゃれの可能性に出合えるかもしれない。
そう思うと、メガネは目が悪いゆえの制約じゃない。新しいおしゃれの入り口なんだと気づきました。
(おわり)
【写真】岩田貴樹
もくじ
伊藤美玲
眼鏡ライター。保険会社、出版社勤務を経て、2006年にフリーのライターへ。メガネ専門誌やモノ雑誌を中心に、メガネにまつわるインタビューやコラム記事を執筆している。2015年から2017年まで、メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。プライベートでは1児の母。http://mireito.petit.cc/。Instagramアカウント(@eyewear_note)
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