【メイク迷子を卒業したくて】第2話:どんな自分でいたい?からはじめる「定番メイク」の見つけ方

商品プランナー 斉木

何を選んだらいいのか、どう使ったらいいのかわからないメイク迷子の店長佐藤が、ビューティライターのAYANAさんメイクに始まり、年齢の重ね方から、どんなふうに人と向き合いたいかに至るまで、じっくりと語り合った今回の特集。

第1話では、佐藤がメイクと向き合いたいと思うようになったきっかけと、いま感じている不安や戸惑い。AYANAさんの、メイクは自分の好きな空気感をまとい、なりたい自分に近づくためのスパイスだという言葉をお届けしました。

続く第2話では、自分が好きな空気感やメイクって、どうやって見つけたらいいんだろう? そのヒントを探します。

 

メイクも洋服も、気になりだしたのは40歳目前の頃でした。

店長佐藤:
「わたし、洋服やアクセサリーに興味を持ち始めたのが40歳になる少し前からで、メイクは43歳の今になってようやくという感じで、遅咲きだという自覚があるんです。実は小さい頃から母にずっと言われていた言葉があって。

『将来何になってもいい。たとえばお医者さんとか美容師さんとか。何を選ぼうと、大事なのは、どんなお医者さん、どんな美容師さんになるのかを考えることだよ』

その言葉があったからか、肩書きや外見ではなく、内面を面白いと思ってもらえる人間になりたいと思ってきました。だから、どこかで洋服やメイクを気にすることを避けていたのかもしれないなと」

AYANAさん:
「たしかに、外見を気にすることと中身を重視することは、不思議と両立しないように語られますよね。

でもわたしはメイクって、他人の目を気にするよりも、まず自分のためにするものだと思うんです。こんな自分でいたい、だからメイクでこんな空気をまとおう、と。

そんな気持ちでメイクをすると、鏡に映る自分の捉え方が変わります。そうすると目の前の風景も変わるんです。

同じ物事でも自分の捉え方次第で、美しくも、醜くも見えますよね。どうせなら物事のきれいな部分に気づけた方が、暮らしは豊かになると思うんです。日々自分の好きなメイクをすることで、そんな視点が宿っていくような気がします」

 

どんな自分でいたい? 服選びがヒントになることも

AYANAさん:
「こんな自分でいたいというイメージを整理して、それに近づくためにメイクをしようと考えるようになると、アイテムも選びやすくなるし、美容部員さんにもイメージを伝えやすくなります。

そろそろ、具体的に自分がどんなふうになりたいか考えてみましょうか。例えば佐藤さん、洋服を買うときはどうやって選んでいるんですか?」

店長佐藤:
「わたし、こんな服が着たいというのがほとんどなくて……着たくない服の方が圧倒的に多いんです。ベルトはしたくない、顔色が悪く見える色はイヤとか……。そういう “着たくない項目” を心のなかに持っていて、その検閲に引っかからない服があったらすぐに購入しちゃいます。

すごく制約が多いんですよね。『こうしたい』はあんまりないけど、『したくないこと』は山ほどある。保守的だなとも思うんですが、意外とその制約が自分らしさなのかもしれないとも思っています」

店長佐藤:
「でも、たまにその自分で作った制約を壊さないとつまらないなとも、同時に思っているんです。

だから洋服は、1シーズンに3〜4回『冒険買い』をすると決めています。小心者なので、そうやって回数を決めて、仕事みたいにしないと怖くて買えないんです(笑)

冒険買いでは、失敗してもいい、1シーズンしか着なくてもいいと決めて、自分が普段選ばないような服を買う。そんなふうに制約と冒険、両方でバランスを取るようになってから、洋服が楽しいと思うようになったかもしれません」

 

大切なのは、何を使うかより、どうなりたいか

AYANAさん:
「洋服でいうところの制約にかなうアイテムって、いわば佐藤さんの定番ですよね。シルエットやディテールが自分にしっくりフィットする、落ち着くもの。そういう定番があるからこそ、冒険もできるんだと思います。

メイクも同じで、まずは『定番』を作ることからはじめてみませんか? そのためには、アイテム選びや使い方に入る前に、『どんな自分であることが心地いいか。いつもどんな人でいたいか』を見つけることがカギです」

店長佐藤:
「そっか、インテリアも洋服もメイクも、『自分がどんな人でありたいか』から出発して、それを表現していくという点では同じなんですね。こんなふうにいたいから、そのためにメイクでこんな空気をまといたい。その流れ、すごく腑に落ちる気がします」

 

たとえば、庭に咲いている花のような

AYANAさん:
「具体的に考えてみましょう。佐藤さんは、ひとと会った時、どんな人だと思われたいですか? どんな印象を持ってもらいたいでしょう」

店長佐藤:
「えっ……なんだろう、普段考えたことないからとっさに聞かれると難しいですね……。割とおしゃべりは得意なはずなのに、恥ずかしさが先に立って、なかなか浮かんできません(笑)」

AYANAさん:
「これって普段から考えていないと、意外とポンとは出てこない質問ですよね。でもメイクをするうえで結構大切なことなんです。

こんな性格で見た目はこうで……とオリジナルの人物像を作ろうとしなくても、誰か憧れのひとでもいいです。もっといえば、ひと以外にも雑貨や家具など、その佇まいが好きと思える雰囲気ってないでしょうか。“なぜか無性に惹かれるもの” のような。

大切なのは、そのもののどこに惹かれるのか、できるだけ客観的に、そして具体的に考えてみることです」

店長佐藤:
「あっ、ちょうどいま窓辺に飾っている鉢植えにも近いかもしれないですが、わたしペチュニアとかビオラ、パンジーみたいな、道ばたの花壇とか家の庭先に咲いているような花にグッとくるんです。

悪目立ちしなくて、でも街を歩く人を確実に楽しくしてくれて、見つけるとホッとする。ひまわりみたいにパッと視線を集めるような華やかさはないんだけど、部屋に飾って安心するのはそういう花なんです。

誰かと会ったときも、一緒にいて緊張しなくて、話しかけやすいひとだと思ってもらいたいです」

AYANAさん:
「なるほど、すごく面白いです。例えば店長のような、みんなを引っ張る立場の方だと、キリッとした威厳を表現したいという人も多いんです。だから、気さくで面白い人だと感じてほしいという佐藤さんの気持ちには、人柄やオリジナリティを感じます。

それを尊重した『定番』を見つけていきたいですね」

 

もっとメイクをたのしむための、「定番」づくり

もし自分の好きなメイクや雰囲気がわからず、佐藤と同じように悩んでしまったら。そんな方へのアドバイスをAYANAさんに伺ってみました。

AYANAさん:
「まず幼少期からの記憶を辿り、自分がどんな人や、どんな世界に惹かれてきたかを思い出してみましょう。

また、気心の知れた友だちにきいてみるのも一案です。自分に似合う服や色、性格、どんな仕事が合いそうか……。あまり肩ひじはらずに、雑談っぽく。そしてできれば数人にきけるといいですね。

その答えは、意外と自分では自覚していない魅力をあぶり出してくれるかもしれません」

さて、悩みながらも「こうなりたいという雰囲気」を掴みかけてきた店長佐藤。ここからいよいよ、具体的なメイクアイテム選びに入っていきます。

続く第3話では、AYANAさんから店長佐藤へ、これから “定番” になりそうなアイテムと、その使い方を勧めてもらいました。

「えっそれをわたしにつけるんですか!?」と終始おっかなびっくりだった店長佐藤の表情が、だんだん和らいでいく様子や、対談を終え変化したメイクや自分との向き合い方もお届けします。そこには、主観だけでは辿り着けない、うれしい驚きがあったといいます。

(つづく)

 

【写真】市原慶子


もくじ

 

AYANA

ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang  http://www.ayana.tokyo/

 


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