【雑貨のはなしをしよう】暮らしに花とリズムを。〈KURASHI&Trips PUBLISHING〉の生花ハサミ

渡辺平日

日用品愛好家の渡辺平日です。秋も深まり、肌寒さで目覚めることが多くなりました。なかなか布団から出られなくて困っています。

そのままいつまでも温もりを感じていたい。でも、家事や仕事はそんなに長くは待ってくれません。なんとかしてスイッチを入れる必要があります。そこで僕は、ふたつの習慣で気持ちを切り替えるようにしています。

 

寒い朝、スイッチを入れるふたつの習慣

起きたらまず、作り置きのコーヒーを温めなおして飲む。

これがひとつめの習慣です。風味が飛びにくいと聞いたので、ちょっと手間ですけどミルクパンを使っています。温かいものを飲むと目が覚めるし、鍋をジッと見守る時間もけっこう好きで、いつの間にかルーティンになっていました。

(洗うのが面倒だし、今日はレンジで温めようかな)と思うときもあります。面倒に感じるのは心に余裕がないサイン。そういうときは難しいことを考えず、コーヒーを飲みながらゆっくりします。

のんびりしていると気持ちにゆとりが出てきて、小さなことに目が行くようになります(この前は揺れるカーテンを見て「カーテンの形は、風の形でもあるんだな」と気づきました)。

そういうふうに心が動き出すと、だんだんと調子も整ってきます。起きてからここまでで、だいたい20分くらいでしょうか。

コーヒーを飲んで一息ついたら、次に花の手入れをします。これがふたつめの習慣です。

水を換え、花瓶を洗い、必要があれば茎を切断。慣れた作業ですが、ひとつずつ手順を確認するように、ゆっくりと手入れをします。花瓶を元の位置に戻したら準備OK。いつでも仕事に取りかかれる状態になっています。

それらは合理的なルーティンではないかもしれません、でも、僕にとっては大事なひとときです。

大事な時間だから、使うアイテムにもこだわります。いい道具を使うと習慣にリズムが生まれ、そのひとときがより素敵な時間に変わるからです。

それは特別なものや高級なものとは限りません。むしろ、気軽に買えて、デザインや使い勝手もいいと思えるものが「優れた道具」だと思っています。

……と、いきなり言われてもピンとこないですよね。ですので今回は、手に取るたびに(これ、いいなあ)と思える愛用品についてお話しします。

 

優れた道具はリズムを生んでくれる

こちらは北欧、暮らしの道具店のオリジナルブランド〈KURASHI&Trips PUBLISHING〉の生花ハサミです。ホワイト&モスグリーンのシックなカラーリングに、丸っこいフォルムが合わさることで、とっても愛らしいデザインに仕上がっています。

紙をたくさん切るときは、シャープな造りのハサミがしっくりきますよね。逆に、繊細なお花を扱うときは、こういう柔らかい雰囲気のハサミがしっくりきます。適材適所というやつですね。

気に入っているのは見た目だけではありません。実用性も高く、はじめて手にしたときはその切れ味に驚きました。まるで柔らかいバターを切るように、ほとんど力を入れることなく茎をカットできます。

それもそのはずで、製造を手掛けているのは新潟県三条市のハサミメーカー〈SAKAGEN〉。花や植物のプロたちからも信頼されている老舗企業です。

よく切れるハサミを使うと、生花が長持ちするようになります。茎の中には導管という管が通っていて、そこから水分や養分を吸い上げています。簡単にいうとストローみたいなものですね。この大事な管が潰れないから、花全体に水が行き渡って長持ちするというわけです。

グリップしやすく、疲れにくいのもこのハサミの魅力。「シュッシュッシュッ」とリズムよくカットできるので、葉の多い観葉植物の剪定もずいぶんと楽になりました。この使い心地を知ってしまうと、もう戻れなくなりますよ。

 

納得できる道具は、大切な方へのギフトにも

専用カバーが付属するのもポイントですね。装いをしっかりと整え、お行儀よく出番を待っている様子はなんともキュートで、早く使ってあげたくなります。

カバーを付けることで道具感が増すのも面白いなと思いました。それを外したときにあらわれる白い刃面を見ると、(そうか。これはハサミなんだ)というふうに自然と気持ちが引き締まります。

ここまでこだわっていてお値段は税抜で2350円。僕は「なるほど、納得できるちょうどいい値段だなあ」と感じました。高すぎもせず安すぎもしない、それも「優れた道具」の条件だと僕は考えています。

オリジナルのパッケージも用意されているので、大切な方への贈り物するのもグッド。バスケットにクロスや霧吹きを詰めてギフトセットにするのも素敵ですね。

ここでちょっと補足を。ハサミは「悪いものを断ち切る」という意味を込めた縁起物として重宝されてきました。その一方、「縁を切る」ことを連想させるという理由で、贈り物にふさわしくないと考える方もいらっしゃいます。ですので、心配なときは事前に確認しておくと安心ですよ。

……今朝、お花の手入れをしようと蛇口をひねったら、水がとても冷たくて驚きました。季節が移り変わるのが早すぎて、瞬きをしている間に冬になりそうな気がしています。

寒くなると気分が落ち込んだり、わけもなく寂しくなったりしますよね。そんなときは、すこし早起きしてコーヒーを飲んだり、花の世話をしてみるのはどうでしょうか?

風に揺れるカーテン、白い湯気をあげるコーヒー。そして愛らしい花たちを眺めていたら、今日という一日がぴかぴかに輝き出すような、あかるい気持ちになれるはずです。

 

本日登場したアイテム

【イラスト】イチハラ マコ
【写真】クラシコム

 


渡辺平日

日用品愛好家。海の見える小さな町で生まれ育ちました。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。そういう話題が耳に入ると、反応して振り返ります。主な寄稿先は『LaLa Begin』『和樂web』『goodroom journal』など。Twitterアカウントは@wtnbhijt

 


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