第14回 プリンセスケーキのおはなし

デザイナー 村田

■◇◇■ 第14回 「プリンセスケーキのおはなし」 ■◇◇■


今週は、スウェーデンの伝統スイーツ「プリンセスケーキ」と、おにぎりカフェでの
スイーツについてお話しします。

スウェーデンのスイーツで代表的なものといえば、プリンセスケーキ。

日本のデコレーションケーキのようなものだが、名前からは想像も出来ない程、
見た目がかなり毒々しい。
簡単に言うと、カラフルな色のマジパンでコーティングされたスポンジケーキである。
一番オーソドックスなものは丸形で真黄緑。
ド黄緑と言った方がしっくりくるかもしれない。

「何これ、食べ物?」

と最初に見た時、それがケーキかどうか、人間が食べるものかどうかすら
疑問に思えたものだが、スウェーデンで生活をしていると何かとお祝い事があると
出てきて、その頻度にこれまた驚く。

子供も大人も大好物らしい。
一度、昆虫好きの坊やへと、真っ黒のマジパンで覆われたアリンコ型のプリンセス
ケーキが贈られているのを見た時は、「あぁ、スウェーデン人に生まれなくて良かったぁ」
と思わず感じてしまった。

そんな私も、お寿司屋さんでアルバイトをしていた頃、その寿司屋のオーナーから
誕生日にとっても大きなプリンセスケーキを貰った事がある。
定番の黄緑色の台に真っ赤なバラ付き。(全部マジパン)

みんなで切り分けて食べたのだが、何せ大きいし、マジパンは見た目にも舌の上でも
日本人の好みではない。
親切にも誕生日の私には大きなバラのマジパンの部分を付けてくれた。。。

一体どこの誰が好んで、雨上がりに元気よく出てくる鮮やかなアマガエルのような色の
ケーキを食べようと思うのだろう。

食べると、ざらっとした食感と何とも例え難いクセのある味が口の中に広がる。
中にはスポンジよりも厚い層の生クリームがたっぷり挟まっているし、その中には
フルーツの一つも入ってない。

甘さは意外にも抑えめだが、よっぽどの生クリーム好きではないとちょっと厳しい。
小さい頃から甘いものが大好きで、ケーキ食べ放題では15個くらいペロッと食べて
しまう私だが、生クリームを生クリームだけで食べるのにはやはり抵抗が。

周りの人はどうなのかと見回すと、もう既に二切れ目に突入していた。

名前こそ上品なのに、どうしてそこに繊細で品やかなお姫様のようなケーキが生まれ
なかったのだろう。

ということで、おにぎりカフェをするにあたって、食事だけではなくスイーツもまた
悩みの種だったのである。

何せ、スウェーデン人の舌が分からない。

一応、スウェーデンのカフェスイーツの代表作「チョコレートボール」を作って
出してはいたが、特に自分が好きで作ったものではなかったのであまり売る気もない。

作り方は至って簡単で、特にスウェーデンのレシピの多くはグラムではなくカップで
量るので適当で大ざっぱなところがとても楽。

1、室温に戻したバター100グラムとグラニュー糖1カップを泡立て器で滑らかになるまで混ぜる。

2、そこにオートミール1.5カップ、ココナッツフレーク0.5カップ、カカオ大さじ5、
粉砂糖大さじ1.5、そして冷やしたエスプレッソ1杯分を入れ、手で全体が馴染むまで良く混ぜる。

3、良く混ざったら、直径5〜6センチのボールを作り、まわりにココナッツフレークを
ぎっしりまぶし、冷蔵庫で30分ほど冷やしたら出来上がり。

不味くはない、と言うよりもむしろ結構美味しいが、どこのカフェにでもあるので
わざわざうちで出す必要もない、と最初はすぐやめるつもりだった。
無難な定番商品を売ったって面白くも何ともない。

しかし、そういうものに限って次々と売れて行くのである。
皮肉なものである。
世の中ビジネスを成功させたければ、こだわりよりも先にまず売れるものを売れ、
という事なのだろうか。

あずきや抹茶を使った和スウィーツを出したくて、どら焼きを作った事もあった。
抹茶小豆パフェを作った事もあった。

しかし反応イマイチ、予算厳し。

どうしてだろ。
どうしてみんな「おにぎりカフェ」という少なくとも日本人がやっている日本語のカフェに
入っているのに、いつもと変わらないものを選ぶのだろうか。

すぐ目の前には日本らしい素敵なメニューがあるって言うのに。
パターンはいつも同じ。

「こちらがお薦めです」

「どんなスイーツ?」

「日本の伝統の味で、グリーンティのアイスやazukiという豆を甘く煮たもので、
子供から大人まで日本では広く慣れ親しまれているものです。」

「あら、美味しそう。じゃ、次頂くわ。」

「つ、次って。。。」

結局、スイーツでも聞いた事の無い抹茶小豆パフェよりも、食べ慣れた馴染み深い
チョコレートボールの方を好むのである。
「古いものは古いもので大事にしながら、新しいものにもどんどん挑戦して行こうぜ」
と思う私には、到底理解し難い文化である。

うーん、またもや悔しい思いをしたが、当時の私にはそれを克服するほどの忍耐力と
粘り強さと徹底さが足りなかった。

浸透させる為の宣伝力とカリスマ性がなかった。

やはりスイーツの世界でもスウェーデンは手強かったのである。

さて、この「おにぎりカフェ体験記」の連載の残りわずかとなってきました。
来週は、愛着のあったこのカフェを辞めなければならなくなったイキサツなどに
ついてお話したいと思います。

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