【ノルウェー日記】日本へとじんわり思いをはせる、北極圏の映画祭。
ライター 桒原さやか
「Verdensteatret」は100年以上つづく、町でいちばん古い伝統的な映画館。
ノルウェーで日本の映画が上映される?
ノルウェーの映画館では、字幕はノルウェー語になることがほとんど。わたしにとっては「映画館にいく」ということが、なかなかハードルが高いものでした。
映画はまだまだかな……と思っていたタイミングで、よい情報を耳にしました!
世界各国の映画が上映される「TIFF(トロムソ国際映画フェスティバル)」が開催されるというのです。
この期間はコンサートホールや劇場、さらには屋外など、町中が映画館になります。
友人に会うと「なにを観た?」という話に必ずなるほど、この期間は街中映画ムード一色です!
なにもこんな寒いところで!とツッコミたくなる、野外の映画上映。たくさんの子供たちが身を寄せ合ってたのしんでいました。
悩みつつ観にいったのは「湯を沸かすほどの熱い愛」でした。
イベントのパンフレットに日本を見つけるだけでうれしくなります。
このイベントでは日本の作品も上映されるので、ひさしぶりの映画館、さらに日本の映画が観れる!ということで、ずっと楽しみにしていました。
日本からはぜんぶで4本。古いものでは、黒澤明監督の「羅生門」。その他には日本でも話題の「この世界の片隅に」などが上映されます。
どれを観に行こうかと悩みつつも、わたしが選んだのは「湯を沸かすほどの熱い愛」でした。日本では去年の10月から上映されているので、すでに観たという方もいらっしゃるでしょうか。
主演は宮沢りえさん。娘役はとと姉ちゃんの三女を演じていた、杉咲花さんです。
銭湯を営む家族のまわりにさまざまな事件が巻き起こり、衝突が何度かありつつも、すこしずつ家族の絆がつよくなっていく。まさに「愛の物語」です。
日本の映画、ノルウェー人の反応はいかに……?
映画館の入り口にはバーがあって、お酒やコーヒーを飲みつつ上映を待つ人がたくさん。
夫とともに映画館に向かうと、200席ほどのちいさな館内は満席になっていました。
実は映画がはじまる前、すこし緊張しました。
というのも、日本らしい描写(言いたいのに言えずに、そっけなくしてしまう等)が多いと知っていたので、ノルウェーの人たちはどんな風に受けとめるのだろうと。好奇心はありつつも、すこし心配でもあったのです……。
ところが、いざはじまると、そんな心配もヒュンとふきとびました。
笑うところでは、わたし以上に声をだして笑い。泣けるシーンではいたるところから、鼻をすする音が聞こえてきます。
日本の繊細な感覚、十分に伝わっているみたいです。この感覚が共有できるって、なんだかジワジワうれしくなります。
ノルウェー人も控えめでシャイな性格というのが、日本人と似ていて近い感覚があるのかもしれませんね。
上映がおわると、大きな拍手がひびきわたりました。胸がジンとなりつつ、どこか誇らしい気持ちで私たちも映画館を後にします。
家へ帰るバスの中、夫とともに映画のこと、日本のことをたくさん話しながら帰りました。いや〜、とてもいい夜でした。
映画館で観ると、また特別ですね。
「湯を沸かすほどの熱い愛」機会があれば、ぜひ観てみてください。愛ってすごいな、日本っていいなって、素直に思う素敵な映画でした。
ライター 桑原さやか
『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。旅が好きで、冬の旅行で訪れたノルウェーの北極圏にある町、トロムソに一目惚れ。スウェーデン人の夫と共に、2016年6月より移住をはじめている。
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