【ラジオ|チャポンと行こう!】第188夜:初めての自宅で出張収録! 2025年上半期買ってよかった「暮らしのおとも」シェア会
【好きな色はなんですか?】食材の色を自由に描く、キャンバスのような「白」(中川たまさん)
料理家さんがつける白いエプロン、写真家さんが着る黒い服。日々身にまとう色には仕事柄があらわれるように思います。
自分を鼓舞する日の赤い口紅、歳を重ねてから好きになったピンク。色は、ただ身につけたいという理由だけでない、そっと背中を押してくれる力を持っているような気がします。
好きな色はなんですか? 色から、大切にしていることの話を聞きました。
中川 たま
料理家。自然食品店に勤務の後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。神奈川・逗子に暮らし、旬の果実や地産の野菜を生かした、日々の料理を提案する。
ーーー好きな色はなんですか?
「白です。白からの生成り、アイボリー。もしかしたらお気づきかもしれませんね」
住まいに、身にまとう服、食器棚におさまる食器の色。たまさんをイメージするとき、頭に浮かぶ色はいつも白。はじめてお会いしたのも、白いキッチンをテーマにした取材でした。
「ただ真っ白ではない、そこに時間が重なったような色が好きです。白い食器に、使い込まれていくうちに色が重なっていくような。温かみが加わっていくような色です」
料理家として独立し、もうすぐ20年。雑誌やwebで名前を見かけない日はないほど、活躍を続けるたまさん。
忙しそうで、でも、いつも楽しそう。食べることも好きだけれど、それ以上に「作ること」が好きだと話す彼女には、白いエプロンがよく似合います。
「今は蒸し菓子の製作をしているんです。同じ黒糖の蒸し菓子でも、調べてみると地方によって形も呼び名も違って、おもしろいんですよ」。
おやつにと出してくださったおまんじゅう。白い器にちょこんと載ったそれは、昔どこかで食べたことがあるような、懐かしい味がしました。
子どもの頃、黒い絵の具だけが残っていました
「小さい頃から絵を描くのが好きで、絵画教室に通っていました。油の匂いは苦手でしたが、それを我慢してでも、油絵を続けて。色を自由に重ねていけるところが、自分に合っていたのだと思います。
山の絵や木の絵、自然を描くことが多かったですね。ペガサスのような架空の動物を描くのも好きでした。ただ、いつも黒色だけは使わなかった。絵の具も色鉛筆も、黒だけが最後まで残っていました。
それは今も変わらなくて、黒い服は数えるほどしか持っていません」
「絵は高校の頃には辞めてしまいましたが、今でも器が白いキャンバスに見えるような瞬間があります。
料理も、食材の色をのせていくような感覚で作っているのかもしれません」
失敗は宝だと思っています
自身を料理家か、料理研究家かと聞かれたら、迷わず「料理家」だと言います。
「研究という言葉がつくと、理論や数字をつきつめる印象があります。でも、私にとっての料理はそうではない。感覚派なのだと思います。
だから本当はレシピを書き起こすのも苦手です。料理を作るのは楽しくても、具体的な数字を出していく段階には、ぐっと力が入ります」
「季節の果物や野菜って、一定ではないじゃないですか。旬のはじまりか終わりかで、水分の量も違う。個体差もあります。
それなのに、果物ひとつに対して調味料が何グラムとか、一概に言ってしまっていいのかなって。分量に落とし込もうとするたび、決めきれなくて、困ります。
料理って結局は、自分の好みのあんばいなんです。できることなら ”適量”と書きたい。そうもいかないのもわかるんですけどね。
ただ、思うようにやってみて失敗した方がいい。失敗は宝だと私は思います。そこから学べることの方が、ずっと多いですから」
料理が作れるなら、料理家でも、主婦でもいい
料理家という肩書きがついたことも、意図していたわけではありませんでした。はじめに目指していたのは、暮らし周りのスタイリスト。大阪で、服飾の学校に通っていました。
「学校を出て、卒業後は地元である神戸のアパレルで働いていました。そのときに阪神・淡路大震災があって。当時付き合っていた夫のいる東京へ移ることに。
環境も変わるから違うことをはじめてみようと、食の道へ入ることにしたんです」
東京で自然食品店に勤め、料理や菓子作りの担当に。食の知識や料理の仕方を学ぶ、それは刺激的な時間だったといいます。
その後結婚、出産を機に仕事をやめ、神奈川へ移住。
専業主婦をしていた頃、専門学校時代の先輩と葉山に住む友人から、近所のマルシェへ一緒に出ないかと声がかかり、1日限りのケータリングユニットを組むことに。
その日限りのつもりが、次第に機会が増えていき、その後、それぞれが独立。
いつのまにか「料理家の中川たまさん」になり、20年近くが経ちました。
「仕事は楽しいですし、料理を作ることは好きです。でも『料理家』でありたいと思ったことはなくて、専業主婦のままでもよかった。今でも、どちらでもいいんです。
料理は仕事でなくても作れるじゃないですか。暮らしの中に作ることがあれば、それがお仕事であっても、なくてもいいかな。そんなこと言ったら怒られちゃうかもしれませんけど。
ただ、季節の食材で何かをすることは好きなんです。今の時期なら、スーパーで梅や山椒を見たら、どんなに忙しくても何か作りたくて、つい買ってしまったりね。
旬のものは、やっぱりおいしい。それをおいしいと感じられるくらいの幸せの大きさが、わたしには合っているのだと思います」
料理を作り、器のスタイリングも手掛け、文章も書く。1人で三役をこなすこともあります。
「手が抜けないんだと思います。全部、ぎりぎりまで考えてしまって。それは、仕事と暮らしの間に明確な線引きがないからかもしれません。
これがいいんじゃないかと閃いたら、夜中だってとりかかり始めてしまう。眠れなくなることが今でもよくあります。
結局元の方がよかったなと思うことも多いんですけど。やっぱり、やってみて失敗しないと、わからないからね」
独学で作り上げてきた料理。自分らしい味とはなんだろうと考えた時期もありました。でも今はようやく「信じる」ことができるようになったと。
食材を信じ、自分を信じる。
そうして手を動かしていくうちに、味の決め方、素材の組み合わせの中に、おのずと自分らしさが宿り、自分らしい料理が生まれるのだと、思えるようになったといいます。
「白に限らず、昔から薄い色が好きでした。緑よりはエメラルドグリーン、黄色よりはたまご色。
少しだけ白の混じった、あいまいさを楽しんでいるのかもしれません。
それは自分の料理もそうです。洋食か和食か、はっきり括らない。果物を入れた塩味の料理があったりね。境界のないものを作りたいと思っています」
”あいまい” という感覚を信じて、納得いくまで手を動かす。
白い皿の上で、素材の色を混ぜながら。そこに出来上がる料理は、たまさんにしか作れないグラデーションを帯びていきます。それは淡いようでいて、ぶれのない芯のある色。
「白」とは強い色なのだと知りました。
【写真】吉田周平
感想を送る
本日の編集部recommends!
今から着れて先まで活躍するファッションアイテム入荷中
まだまだ続く暑い日も、快適に過ごせるオールインワンやシアーニットなど、 旅のおしゃれにもおすすめです。
当店オリジナルスキンケア送料無料でお届け中
一緒にご注文のアイテムも送料無料となり、ご好評いただいています!
旅行におすすめのアイテム
便利なミニショルダーも再入荷!疲れ知らずのスニーカーやパッキングバッグもございます。
【動画】しあわせな朝食ダイアリー
食べるものが自分をつくる。身体も心も安定する朝ごはん。