【スタッフコラム】娘のハナウタ。
編集スタッフ 寿山
“月ようび、月ようび、
りんごを 1つ たべました〜
それで〜も、まだま〜だ、
おなかは ぺっこぺこ〜♪”
いつの頃からか、教えてもいない歌を娘が口ずさむようになりました。
音が外れた鼻歌に耳を傾けると、どうやら絵本『はらぺこあおむし』の歌のよう。
ほぼ毎日聞こえてくるそのメロディーを、うろ覚えで私も歌っていて。ちょっとした不協和音をふたりでいつも奏でています。
そんな彼女が大好きな絵本『はらぺこあおむし』の原画を見に、終了間際の「エリック・カール展」を訪れました。
会期中の最後の週末ということもあり、美術館の前には長蛇の列が。
会場内は家族連れはもちろん、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い層の閲覧客で賑わっていました。
▲ステージに上がると、子どもが蝶々になれる撮影スポット。娘はあと少し、届きませんでした
作者エリック・カールは、6〜16歳までをナチス政権下のドイツで過ごしたそう。
戦時中は空爆を回避するため、街じゅうの建物が地味な色に塗られ、窓の外には灰色の景色が広がっていたのだとか。
色とりどりの原画からは、想像もつかない生い立ちを知り、とても驚きました。
そんな辛い幼少期の体験から、絵本では愛に溢れた、やさしく、批判的でない世界観を表現しているといいます。
来日時のインタビューでは「子どもたちが経験するであろう恐怖や不安、難関を、楽しく乗り越えられるような絵本をつくりたい」というような想いを語っていました。
また、「はらぺこあおむし」を世に出す際、当時拠点を置いていたアメリカの印刷会社では、ページごとに規格を変えたり、ページに穴をあけるような、意図したデザインを具現化する技術がなかったそう。
そのため製本技術があった日本でたまたま初版本が製作されることになり、彼の作品は日本で広く愛されることになりました。
▲はらぺこなあおむしが、果物を食べて穴があいたページがいくつか出てくる本編
娘を虜にした絵本が完成するまでのストーリーを知って、私もこの作品のことがとても好きになりました。
それと同時に、幼い頃の体験や記憶がはぐくむ感性や価値観について、改めて考えるきっかけにもなったのです。
2歳を過ぎて、一気に言葉や感情が豊かになってきているわが子に、これからどんな世界を見せてあげたらいいのだろう。
▲気づかないうちに大きく成長した足。赤ちゃんの頃とは、ほど遠い逞しさを感じます
どんなものを好み、何に興味を惹かれるかを、親が操作することはできません。
ただなるべく多くの機会をつくって、いろんな色の世界を見せてあげたい。
出来ることなら、あまり重荷に感じないように、軽やかに導いてあげたい(あまり自信はありません)。
▲私が買い集めた絵本は、どれも響きませんでした。もう少し大きくなったら見てもらえるでしょうか……
そんな親の不安をよそに、確実に子どもの個性は形成されているような気もします。
教えていようといまいと、好きなものは自分で見つけてくるし、欲しいものは決して手から離しません。
自分の想いがどこまで実を結ぶかは見当もつかないけれど、伝えることは辞めずにいようと思います。
▲いま家で浴衣を着るのが大ブーム。そして謎の鬼プレイに興じるのが彼女なりの休日の楽しみのようです
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