【ケの日のこと】欠けては継いで。わが家の歴史が詰まった器たち

「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野


第11話:歴史は器に刻まれる


 

わたしと夫の共通点のひとつが、器が好きということです。なので、食器棚は家のなかでいちばん家族の歴史と思い出がつまった場所かもしれません。

アスティエ・ド・ヴィラットのバラのプレートは出会って最初にもらったプレゼント。村上躍(むらかみ・やく)さんの急須と湯飲みは一緒に暮らし始める時に購入したもの。夫が「これでごはんを食べると美味しく感じるよね」と言って以来、毎日使い続けている青木亮(あおき・りょう)さんの夫婦茶碗。子供のおやつをいれるのにぴったりで、ひとつひとつ買い足している須田二郎(すだ・じろう)さんの木の器。

すてきな器は料理をするモチベーションをあげてくれるし、握っただけのおにぎりや切っただけの果物もなんだかおいしそうに見せてくれる。実は手抜きにも一役買ってくれる強力な味方です。それゆえお気に入りの器ほど登場回数は増えていき、避けられない事件が起きるのです……。

▲青木亮さんの夫婦茶碗と中鉢

落ちる。ヒビが入る。割れる。子供と生活するようになって以来、その確率は倍増しました。子供はうっかり手を滑らせることも多いし、気をとられることが増えるので大人のうっかりもまた増えるのです。壊れてしまったお皿やカップを見つめ、何度涙をのんだかしれません。だからといって大人になるまでしまっておこう、とは思えない。やっぱり器は日々使ってこそだから。

そんなジレンマを抱えた我が家にふいに現れた救世主。それは近年独学で金継ぎを始めた義父でした。つくろった後にまるで模様のように入る金や赤がとても美しくて。かくして割れてしまったものの捨てられず溜め込まれていたお皿やカップは、義父の手によってきれいに継がれ、再び食卓で活躍してくれるようになりました。

▲アスティエ・ド・ヴィラットのプレートと、マーガレット・ハウエルのカップ&ソーサー

不思議なもので金継ぎされた器たちには、前よりも一層愛着が湧いています。割れてしまったこともまた家族の思い出となって、「ケの日」の歴史は器にも刻まれていくのでしょう。

とはいえ、会うたびに割れた器を手渡す我々にそろそろ義父もあきれているかもしれないので、自分でも金継ぎを覚えたいなと思う今日この頃なのです(いつになるやら)。

 

【写真】馬場わかな(1枚目)、中村暁野(2枚目)

中村暁野(なかむら あきの)

家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。7歳の長女、1歳の長男を育てる二児の母。現在は『家族』2号の取材を進めている。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。http://kazoku-magazine.com

 


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