【ケの日のこと】助けてもらうのは “申し訳ないこと” じゃない。教えてくれたのは、お隣さん。
「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野
第29話:「ご近所」付き合い
先日、いつもお世話になっているお隣さんが庭で柚子の実を落としていました。
柚子の枝は鋭いトゲがいっぱいなので、高枝バサミを使って切るのもなかなか大変そうです。そこにちょうど通りかかったわたしと夫。お隣さんより背も高いし力もある夫が「お手伝いしますよ〜」と申し出たのですが、ハサミをちょうど実の上のところに入れて切るのはなかなか難しかったようで「意外とむずかしいでしょう〜」と、3、4個落としたところで「もう大丈夫よ〜」と笑われてしまいました。特に力になれないまま、これ持って行って、と獲れたばかりの柚子をカゴいっぱいに持たせてもらって帰りました。
そんな調子で、ここに越してきた2年前から、お隣さんご夫婦(年齢は60代後半)には、お世話になりっぱなしなのです。引越しの日、生後2ヶ月ほどだった息子が泣いている声をききつけて「大丈夫?作業している間ちょっと抱っこしていてあげるよ」と声をかけてもらって以来、顔を見るたび娘にも息子にも声をかけてくれ、道で出会えば駅や娘の学校まで車で送ってくれたことも一度や二度ではありません。
春にはユスラウメ、夏はトマト、秋にはシラトウリと、しょっちゅう庭で育った実や野菜を頂くので、お礼にお菓子を焼いて届けてみても「ありがとう〜。じゃあこれ持って帰って」と自家製の漬け物を瓶にいっぱい詰めて渡してくれる。もらうばっかりで申し訳なさが募ります。
その上、気づけばお隣さんだけではなく、多めにできたからとおかずを持ってきてくれたり、駅まで行くなら送るよと車を出してくれたりするご近所さん(わたしはまだ免許を持っていないのです)がいっぱいおり、なんだか助けられてばかりの毎日なのです。
▲お隣さんにいただいた柚子でつくったホットレモネードが子供達のお気に入り
最初、何かしてもらうたびにお礼、お礼と思っていたわたしでしたが、ある時「すぐ返すと、してもらったことをちゃんと感じられないよ。お礼は感謝の気持ちを心に溜めて、いつか困っている人に返せばいいものなんだよ」という言葉を聞いて、目からウロコが落ちました。誰かに何かをしてもらうこと、してあげることを、そんな風に捉えたことは今までなかったのです。
ここに来る前、子供がうるさくないかな、迷惑に思われてないかな、と気にして、近所の人と挨拶以上の関わりを持てないまま同じ場所に何年も暮らしていました。もう少し開いた心でいられたら、嫌な思いをすることもあったかもしれないけれど、助けてもらうことや助けられること、楽しいことや嬉しいこともたくさんあったのかもしれません。
今、日々の小さな温かさを感じるたびに、わたしもその温かさを誰かに手渡したいと思うようになりました。甘えたり、助けてもらうことって「申し訳ない」ことじゃないんだな。そう感じられるご近所付き合いのある「ケの日」は、とても幸せだなあと思うのです。
とはいえ、わたしの知らぬ間にお隣さん宅に上げてもらっては、まるで我が家のようにお菓子をボリボリ食べている娘を見つけるたび「ちょっとちょっと大概にしなさいよ〜」と慌ててはしまうのですが。
【写真】中村暁野
中村暁野(なかむら あきの)
家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。8歳の長女、1歳の長男を育てる二児の母。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。制作中だった『家族』2号も、年明け(1/14)の発売が決定した。http://kazoku-magazine.com
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