【スタッフコラム】趣味とは無縁だったはずの、母のこと
お客様係 石井
先日、母が「祭りで踊る」というので見に行ってきました。
踊るといっても、いわゆるダンスではなく「佐渡おけさ」。よさこいや阿波踊りのような、新潟県佐渡島の盆踊りです。
これは、母が60歳を過ぎてから始めた趣味。
こんなこと始めたよ、と聞いたときはかなり驚きました。私にとって、「母」と「趣味」はとても遠い印象だったから。
私が中高生のころ、母によく言っていたお決まりのフレーズを覚えています。
「趣味のひとつくらいないと、定年後に一気に老け込むよ」
なんとまぁ、偉そうな物言いをしていたものだ、と今は思います。
当時の母は、朝は誰より早く起きて家事をして、仕事をして、子どもの面倒を見て、家事をして、とにかく忙しかったはず。
平日の夜はひと息ついたらゆっくり寝たいし、休日だって家でのんびりしたかっただろうことは、今なら、心の底から、よーく、わかります。
趣味の入る隙間なんて、なかったわけです。
そう考えれば、母にもやっと自分の時間ができた、ということなのでしょう。
趣味のひとつくらい、が難しい
一方で、当時の母よりも少し年下な今の私と、趣味。
あのころ母に言っていたセリフが、見事にそのままブーメランとなって自分に返ってきています。
母と違うところは、せめてもの悪あがきをしているところでしょうか。
たとえば、お菓子づくり、洋裁、編み物、レース編み、ビーズ、消しゴムはんこ、カリグラフィー、映画、観劇、ワイン。
私が、中高生のころから今までに手を出してきた「趣味っぽい」ことです。
ひと通り道具を揃えて、時間も使って、一時期ものすごくハマります。でも、続かないんです。
今、だれかに「趣味は?」と聞かれたら「うーん、読書…かなぁ」と答えますが、それほど読書家というわけでもないですし。
無趣味な自分がすっかり長くなってしまいました。
40歳も近いのに、趣味のひとつもないなんて…と、妙に自意識の高い自分の声が聞こえます。
見つけに行くのではなくて
さて、踊る母を見た日のこと。
なんだかとっても楽しげな母がいました。
祭りの後に声をかけに行くと、「本番までは、いろいろ大変だったのよ」と愚痴っぽく言う顔も、笑っていました。
ああ、趣味ってこういうことだよな、とあらためて思います。
「これが私の趣味です」と誰かに自信をもって言うためなんかではなくて、自分が楽しむことそのものであるはず。
やっぱり頭でっかちだなぁ、私は。
ちなみに母が踊りを始めたきっかけは、誘われて断る理由もなく、というものだったとのこと。
焦らなくたって、私にも20年後くらいには、自然と出合う何かがあるのかも。
そんな期待を感じつつ、母の笑顔に少し心が軽くなった一日でした。
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