【ラジオ|チャポンと行こう!】第172夜:カゴ愛、再燃中! シルバニアや赤毛のアンなど、カゴ好きのルーツも紐解いてみました
【スタッフコラム】割れてしまった器
編集スタッフ 齋藤
先日、すごく久しぶりに器を割りました。8年間ほど使っていたもので、購入した当時私は社会人になりたて。お金がなく、靴も買えなかった私にとってはとても奮発をして買った器でした。
手からするりとこぼれ落ち、あっと思った時にはもう遅かったのです。次の瞬間にはがしゃんっという音とともに何をしても間に合わない姿になっていました。束の間、気づいたのにどうしようもできなかったというやるせない気持ちがわき起こり、気持ちを整える時間が必要だったのかしばらくキッチンでひとり呆然。
でも、床を片付けおわる頃には、残念だけどまぁしょうがないよねという気持ちになりました。使っていれば傷もつくし、ふとした油断で壊れてしまうことだってある。
そういえばお気に入りの小さなイヤリングも失くしたし、大切に着ようと思い切って買った服も、小さなシミがついて落ち込んだ日もあったなと思い出しました。
どれもこれも、私の毎日に馴染んでくれた頼もしいものたちでしたが、だからこそ使う頻度が高く、ほころびやシミ、傷が自然とついていったのです。
この日、食器が減ってしまったついでに器を整理してしまおうと、シンク上の棚を久々にじっくり見てみました。そうしたら、いつの間に使わなくなっていたグラスや器が棚の奥の方に並んでいるのを発見したんです。どれもこれも気に入って買ったものですし、特に嫌な部分があったわけではありません。けれども暮らしてゆくなかで、私には合わなかったのか、自然と奥へ奥へとしまわれてしまったものたちでした。いつも自分の暮らしに馴染むかどうか考えた末に買うけれど、実際の生活の中で淘汰され、残るもののなんて少ないことか。
そして新品のようにどれもこれもピカピカしているそれらを見て、なんだかまたやるせない気持ちになったのです。
私の日々をサポートしてくれていた器やグラスは、私が毎日触れるから、欠けたり傷がついたりしてしまう。そしてもしかしたら、やがて私自身で壊してしまう日がくるかもしれない。少なくとも使う頻度が高まれば、その可能性だって増える。そして残るのは棚の奥の方にしまわれているような、私が存在を忘れてしまうものばかりなのだとしたら、なんとももどかしい気持ちが湧いてきたのです。
頼りになるからつい使ってしまうけれど、壊れるのは嫌。けれど壊れるのを恐れていたら、使えなくなってしまう。飾るためではなく、使いたくて買ったのに。
お気に入りだから使っていたのか、それとも使っていたからお気に入りになったのか、どちらだったのかはわかりません。けれども使っていたからこそ、日々の思い出とともに大切なものになっていったのは、確かなことのように思います。
そんなことを考えていたら、ふと、人間関係だってそうかもしれないなぁと思いました。距離を置いて付き合えば傷がつかず、いつまでもお互いにお互いをキレイな存在にしておけるかもしれない。
けれども、日々を良きものにするために協力しようと思えば自然と距離が縮まって、時にその結果残念なことになってしまう関係もあるかもしれません。
あんなことを言われてしまったと傷つくこともあるかもしれないし、あんなことを言ってしまったと傷つくこともあるかもしれない。傷つきたくないのであれば、飾るように遠くに置いておけば良い。けれどもそこに、時間をかけて育まれる感情は生まれるわけもない。
傷つくこと、傷つけてしまうこと、そして大切に思うこと、大切にすること。それらはどうしたって切り離せないもので、私は日々の暮らしの中で実は取り返しのつかない繊細なものをたくさん抱えて生きているのだということに、急に気付かされた気がしました。
暮らしの中に内包された、小さな痛みのようなもの。
その痛みが、ただ乱暴にした結果ではなく、大切にしようとした結果であればいいなぁと思います。壊れて良かったではなく、あぁ残念だと心の底から思えるように。
いつか失うのだとわかっていながら、それでも勇気を持って接することができる人になりたいと、少しばかり桜が咲きはじめた東京の片隅で、ふと思ったのでした。
感想を送る
本日の編集部recommends!
冬のファッションアイテムが入荷中!
冬のときめきを詰め込んだニットカーディガンや、ポンチ素材のオールインワンなど、冬ものが続々入荷しています
乾燥する季節に頼りたい、お守り保湿アイテム
新作のフェイスマスクや北欧から届いたボディオイルなど、じっくりと自分を慈しむのにぴったりのアイテムも揃っています
【期間限定】WINTER SALE!
当店オリジナルの雑貨が、最大20%OFF!冬のおうち時間にぴったりのアイテムも揃っていますよ
【動画】夜な夜なキッチン
縫って、編んで、お気に入りの景色を作る(「HININE NOTE 」スタッフ・彩さん)