【店長コラム】メイクアップアイテムをつくりたいと構想したあの日から。
店長 佐藤
当店のオリジナルブランド「KURASHI&Trips PUBLISHING」から新たなメイクアップシリーズを発表することができました。
店の品揃えを化粧品にも広げることについて初めて構想をもったのは数年前のことであり、「2020年の春発売」と照準を定めて本格的に開発に乗り出したのはちょうど一年前の今頃のことでした。
検討と開発の長い道のりのなかで、世の中全体が生活に大きな変化を求められるタイミングでの発売となるとは予想だにしていませんでした。
でもこのブランドの「日常にひとさじの非日常を」という本分に立ち返り、準備してきたとおりに発売することを決めるとともに、このメイクアップアイテムが気分を変えたり「自分」という存在を大切に扱ってあげたいときに少しでも役立つ道具のひとつになればと心から願っています。
雑貨や服だけでなく化粧品も?
暮らしは「生活」であり「人生」だから
北欧、暮らしの道具店は開店当初から「フィットする暮らし、つくろう」というコンセプトを掲げて運営をしてきました。
北欧で買い付けたヴィンテージ雑貨の販売が主だった当初から、「暮らし」というテーマ全般を扱っていきたいと願っていました。
しかもそれを丁寧な暮らしではなく、着心地のいいシャツのように自分にとって心地よいと感じられる「フィットする暮らし」と表現したかったのにはきっと何らかの意思があったのだと思っています。
店名にも含まれる「暮らし」という三文字は、楽しいことや充実の瞬間や喜ばしいひと時以上に、切ないことや辛いこと、自分ではどうにもコントロールできないことの分量が実のところかなり含まれている、「生活」であり「人生」そのもの。
であるならば、様々な変えようのない現実を乗り切っていくためにも、「好き」と感じられたり「フィットしている」と感じられるモノやコトを身の周りに増やしていくことに心強さや希望を見出したいとわたし自身も願ってきました。
だからこそ、暮らしのなかで「フィット」を見つけるのに個人として難易度を感じている分野にまで事業領域を広げようとチャレンジし続けることに、大きなやりがいを感じます。
ちょうど3年前にオリジナルの服の販売をスタートしたのも、自分自身にとって雑貨以上にフィットすると感じられる服を探すのが困難であったから。
そして時間が経ち、次は服以上に「好き」や「フィット」を見つけるのが困難だと感じていた化粧品にいずれ展開を広げたいと考えるようになったのは自分のなかではとても自然な流れでした。
「自分ごと」として感じているフラストレーションや願望をひとつひとつ言葉にしてモノづくりにつなげ、今度はそれを大切な人たちと共有していく。
これによって当店のお客さまのあらゆる必要に応えられるブランドに成長していきたいと願っています。
とは言っても最初はその道の専門家ではない私たちが新たな分野のモノづくりをするわけですから、何よりもお客さまに安心してご利用いただくために、開発プロセスに十分な時間をかけること、品質や使い心地に納得感を持って発売できるまで繰り返し諦めずにつくり直しをすること、社外からこの道の専門家やアドバイザーを招き知見とともに併走してもらうこと、信頼できる製造メーカーを選ぶことなどに強くコミットしています。
(今回のメイクアップアイテム開発においては、過去に美容ブランドで商品開発の経験もお持ちであり現在はビューティライターという肩書きで執筆やディレクションのお仕事をされているAYANAさん。そして数十年にわたり化粧品の製造メーカーで大手ブランドの開発を請け負ってこられたご経験をお持ちの方にもプロジェクトに参加していただきました)
「そうか、そういうことか」と膝を打った日
わたし自身はメイクにはこれまでも興味はあったのですが、苦手意識と向き合うのが嫌で自分の世界からは遠いものだと思おうとしてきました。
そんな背景もあって、自分にとって必要最低限のベーシックだと感じる同じメイクをほぼ毎日していたのです。
でも一昨年2018年の夏に、今回の開発にも参加していただいたビューティライターのAYANAさんと出会い、自分に施したいメイクを「雑貨のように、インテリアのように、洋服のように」選びとり考えていいんだと気づけたときは、霧が晴れ視界が開けたような気持ちになったのを覚えています。
「どう暮らしたいか」と同じイメージで「どんな顔(人)になりたいか」を考えればいいんだと思えたら、それまでずっと遠いと感じていたものが実は近くにあったのだという気持ちに。
これはここからさらに年齢を重ねていくうえで、小さな希望の芽生えとなりました。
そこからは「雑貨やインテリア、洋服と同じような感覚で選びやすいメイクアップアイテムとはどんなモノだろう?」と考えを巡らすことが止まらなくなりました。
「メイク」と「暮らし」に自然と繋がりが生まれるようにフィンランド在住のデザイナーさんと当店初のオリジナルテキスタイルも作りました
積極的にさまざまなカラー、テクスチャーのメイクアップアイテムを試すようになり、その中で受ける情緒面での影響、五感や自分自身の肌で感じる快感や違和感を逐一言葉に落とし込むようになりました。
オリジナルでつくるとしたらこんなものをという輪郭が見えはじめたところで、社内外のメンバーを集めて本格的に開発プロジェクトを始動。
それが昨年の春のことでした。待ちに待った、頭のなかの構想を飛び出して実際の仕事としてスタートを切れた瞬間でした。
とは言え2アイテム、計8色をつくるのに1年間……
肌質や顔色にフィットすると感じられるのが望ましいのはもちろんのことですが、雑貨やインテリアと同じように考えるとしたら、どんなことをメイクアップアイテムに求めるだろうか?と当時書き出したメモの一部を抜粋してみます。
・自分がそのメイクをしていてソワソワしない。そのメイクをした自分にある種の居心地の良さがある
・カラー構成は冒険心にもささやかに応えられるもの。冒険の方法も簡潔に理解できるものにしたい
・シンプルな展開の設計であることで雑貨と同じ感覚をもって直感や好奇心で選びやすい。そのシンプルなラインナップを組み合わせることで楽しみ方が広がっていくように
・「好き」に忠実に選ぶ「ひとつめ」の雑貨や道具は暮らしの中のシンボルになる。それをきっかけにインテリアや暮らしが彩られていくことがある。つくろうとしている化粧品も同様に「こういうの好きだな」で選ぶ最初のひとつめになったら嬉しい
・持ち歩くこと、部屋に置くこと、メイクボックスに入っていること自体が嬉しくなるアイテム
この一年間、上に書いたメモに添うものに仕上がるよう、チームのみんなで、社外の専門家のアドバイスも聞きながら、膨大な時間の話し合いをし、数えきれない回数のサンプル作成と試用を繰り返してきました。
カラーも私たちも抵抗なく使いやすい定番系のカラーから、ひとさじの冒険心をくすぐられるようなものまで。
アイカラー5色・リップカラー3色という、ある意味ではたった2アイテム・計8色の基本セットをつくるのにこんなに時間がかかってしまうとは……と自分たちでも振り返るほどです(汗)
でも暮らしのあらゆるシーンで、単色で、混ぜたり重ねたりの組み合わせで楽しんで使っていただけるものになったんじゃないかと思っています。
その他にもコンセプト以上に重要となる品質面での確認、成分についてもたくさんの判断が必要となりました。
配合のバランスによって透明度や伸び方、肌にのせた時の色のつき方、パール感などが異なってくるので「このくらいがちょうどいい」に行き着くまで、もはや自分の顔や指先で味わう感覚が研ぎ澄まされていくようでした。
こうしてようやく発売に至ることができたオリジナルのメイクアップアイテム。
さらなる詳細は開発プロジェクトのリーダーをつとめたスタッフ竹内が記事にして公開しています。ぜひこちらもじっくりお読みいただければ嬉しいです。
この半年、ほぼ毎日使っています。
特集に出演して下さった一田憲子さん、AYANAさんと撮影現場にて記念撮影。この日私は目元はフォレストグリーン、リップカラーはアミュレットレッドをつけていました。
わたしは子供を出産した30代半ばから唇はほぼ保湿のためのリップクリームのみ。元々、唇が敏感でなかなか合うものを見つけられなかったことも重なりリップカラーをつけることを全くしなくなっていました。
アイメイクも自分が自分の表情にソワソワしないで済むベージュ系やゴールド系と決めていました。
でも、本当は試してみたいカラーやメイクがありました。
今回オリジナルのメイクアップアイテムの開発にあたり、そんな自分の心の奥にしまっていた願望や本心を取り出すのは時に苦しかったり気恥ずかったりする作業でしたが、扉を開けたことによって新たな生活の楽しみを得られたとも感じています。
本当はピンク系のアイカラーをつけてみたかった。でも幼く見えるんじゃないか、可愛いイメージは自分にはちょっと、奥二重のまぶたがもっと腫れぼったく見えてしまうんじゃないか。いろんなことを気にしていたことが分かりました。
じゃあ、そんな自分が抵抗なくつけられるピンク系のアイカラーやリップカラーをつくりたい。そんなふうに一つ一つ工程を進めて行きました。
アイカラーは5色つくりましたが、わたしは現在「フォレストグリーン」がダントツ好きです。寒色系のアイカラーをつけることに抵抗があったけれど、このグリーンは気軽に指先でぽんぽんとのせたり二重の部分にだけブラシでシュッと引いてあげると見る角度によってニュアンスが異なり、グレイッシュな色にも見えて落ち着きと艶っぽさを加えてくれると感じます。
アイホール全体に「クリアムーン」をのせて、奥二重の二重の部分にだけ「フォレストグリーン」を重ねたり。
そして今日は大事な会議があるなっていう日は気持ちがシャキッとするお守りのような「アミュレットレッド」をリップカラーに選んだりも。
どのアイカラーも3色のリップカラーと合わせやすいので、その日の服装や気分に合わせてリップカラーもいろいろに。
わたしのメイクボックスにもこれらのアイテムが加わったことで毎朝メイクをすることが義務や作業ではなく、意思をもった楽しみに変わりました。
お客さまお一人お一人もきっとメイクに対してはあらゆるスタンスを持ってこられたと思います。元々コスメフリークだったという方、どちらかと言うとわたしと似た感覚でメイクをされてきた方。いろんな方がいらっしゃると思います。
これまでもメイクをすることが好きだった方、たくさんのメイクアップアイテムに触れてこられた方には何かが新鮮にうつり、そして私たちと似た感覚を持ってこられた方にはどこかに親しみを感じてもらえたら。心からそう願っています。
2020年4月28日
北欧、暮らしの道具店
店長 佐藤友子
【写真】
一枚目、三枚目:滝沢育絵
五枚目:上原未嗣
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