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【雑貨のはなしをしよう】「時代」を軽やかに飛び越えるデザイン。〈BRAUN〉の壁かけ時計
渡辺平日
僕は掛け時計が大好きで、6種類のアイテムを気分で使い分けながら暮らしています。
「なんでそんなに?」とたまに聞かれますが、自分でもちょっと分からないです。いったいどうしてだろう。……と、それでは話が終わってしまうので、すこし考えてみました。
なんというか、掛け時計っておもしろいんですよね。一日に何十回も見るものだから自然と愛着がわくし、だんだん時間がズレてしまうのも人間臭くていい。
インテリアのなかでも道具性が強いからだと思いますが、こだわりや工夫が詰まっているところにも魅力を感じます。たとえば〈BRAUN〉のプロダクトなんかはすごいですよ。
小さなボディーに、多くのこだわりを詰めて
▲部屋を彩るインテリアであると同時に、時間を知らせる道具でもある掛け時計。ふたつの要素を両立させるために古くから創意工夫が重ねられてきました。
この掛け時計は、1982年に発表された〈ABW30〉という作品を復刻したものです。
もしかしたらこの時点で「おや?」と思われた方もいるかもしれません。日本でBRAUNといえば「髭剃り」のイメージがありますが、実は、生活家電やオーディオ機器なども手がけている老舗メーカーなんですね。
ここでちょっと寄り道を。ためしに「LE1 スピーカー」と検索してみてください。シンプルでスタイリッシュなスピーカーが出てくると思います。
これはなんと1959年(!)の作品です。「21世紀のプロダクトだよ」と言われたら信じてしまいそうなくらい、先進的なデザインではないでしょうか?
▲約40年前のデザインですが、まったく古臭さはなく、新しさすら感じられます(はじめて見たとき、ごく最近の作品だと勘違いしたほどです)。
「Less but better(より少なく、しかし、より良く)」を合言葉に、革新的なものづくりを行ってきたBRAUN。長い歴史のなかで多くのフォロワーを生み、あのApple社のプロダクトデザインにも強い影響を与えました。言うまでもなく、この掛け時計にもさまざまな知恵とアイデアが詰め込まれています。
文字盤に傾斜をつけていてるのが工夫のひとつ。斜めからでも数字が分かりやすく、ストレスなく使うことができます。風防(カバー)がないのも特徴です。照明や太陽光の影響を受けにくく、視認性の向上につながっています。
サイズは約20cmとかなりコンパクトなのですが、その小ささを忘れてしまうくらい見やすい時計です。「小さい時計は時間が分かりにくい」という常識を、細やかな工夫や新しい発想で覆す。これが「デザイン」の醍醐味ではないでしょうか。
個人的に一番驚いたのは、針を直接さわって時間を修正できる仕様ですね。写真を見てビックリした人もいるかもしれません。ズレに気がついたとき、わざわざ壁から外さなくていいのは想像以上に便利です。
ただ、この仕組みはどちらかというと、メンテナンスのためではないかと推測しています。というのも、風防がない時計は文字盤にホコリがたまりやすく、特に針の下のお手入れはかなりめんどうです。でも、この掛け時計なら清掃も楽々。美しい状態を保ちやすくなっています。
▲裏面もスッキリとした仕上がり。普段は見えない部分にもこだわっています。
厚さはわずか32mm。圧迫感がなく、玄関先や廊下のような手狭な場所でも気軽に飾れます。重量も153gと非常に軽く、画鋲やピンなどで固定可能。なるべく壁に穴を空けたくない人にもおすすめです。
必ずしも必要なものではないからこそ
僕がこの作品に出会ったとき、すでに掛け時計を持っていました。狭い部屋に住んでいたし、それでまったく問題はなかったのですが……。こだわりを知っていくうちにだんだんと欲しくなり、気づけば購入していました(それでタガが外れしまったのか、いまでは6個も所有するに至っています)。
「買って後悔した?」と聞かれたら、自信をもって「いいえ」と答えられます。いや、ほんと、使えば使うほどによさが伝わってくる素敵なプロダクトですよ。長いあいだ愛され続けているのにも納得です。あえて不満をあげるとすれば、穴が小さいなと感じることがあるくらいでしょうか。ピンの形によっては入らないかもしれませんのでお気をつけください。
あくまで個人的な考えですが、「掛け時計はもはや必需品ではない」と思っています。パソコンやスマートフォンでいつでも時間を確認できるし、絶対に必要ではないですよね。
でも、必需品ではなくなったからこそ、「こだわりを投影できるようになった」とは考えられないでしょうか。もしも生活に絶対に欠かせないものだったら、好みが介在する余地はなくなってしまいます。たとえば数字がない時計なんかはとても選べないですよね。
さて。好きなものを手に取りやすくなった時代に、あなたはどんな時計を飾りますか?
パッと人目をひく掛け時計、学校で使われているような掛け時計。遠い国からやってきたヴィンテージの掛け時計。数えきれないほどの選択肢が目の前に広がっています。
もしお悩みであれば、シンプルで美しく、機能的で、哲学を感じられるプロダクトを選んでみてはいかがでしょうか? 色褪せないデザインは、きっと、僕らの暮らしを豊かにしてくれるはずです。
本日登場したアイテム
【イラスト】イチハラ マコ
【写真】クラシコム
渡辺平日
日用品愛好家。海の見える小さな町で生まれ育ちました。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。そういう話題が耳に入ると、反応して振り返ります。主な寄稿先は『LaLa Begin』『和樂web』『goodroom journal』など。Twitterアカウントは@wtnbhijt。
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