【スタッフの本棚】第6話:思い出本と、積ん読本と、お気に入りの雑貨を詰めて(スタッフ野村編)
編集スタッフ 糸井
インテリアの一部としても、そしてその中身も気になる「本棚」という存在。誰かの家を訪ねたとき、じっくりのぞいてしまう一角でもあるのではないでしょうか。
本棚の持ち主のことをより深く知れるような気がしたり、共通して好きな本を見つけた時には嬉しくなったり。
小説、エッセイ、雑誌に漫画、アートブックやビジネス書、そして絵本。ジャンルも形もさまざまな本の居場所からは、並べ方ひとつとっても、その人らしさが垣間見えるような気がします。
この連載では、不定期でスタッフ宅にお邪魔し、本棚まわりのインテリアや収納で工夫していること、読書習慣や大切にしている本など、「本棚」にまつわるアレコレについて、根掘り葉掘りきいていきます。
第6回は、スタッフ野村の本棚です。
#06
スタッフ野村の本棚
今回たずねたのは、当店の読み物や、プレイリストの制作を担当している編集スタッフ野村の自宅です。
野村が暮らすのは、間取り2DKの賃貸マンション。行きつけのビンテージショップで買い集めた家具や、動物や小人のオブジェなどが、スペースを埋め尽くすように散りばめられています。
▲デスク横の壁にも、色々とお気に入りが。鹿でなく『熊』のオブジェと、クリスマス・リースの並びがチャーミング。
リビングの一角には、野村のデスクスペースが。本棚があるのは、このデスクの隣とのこと。さっそく覗かせてもらいました。
本棚は、ダイニングテーブルの目の前に
▲上段の列が家族の本や化粧品、中段と下段が野村のスペース。ずらりと下に並ぶのは、学生時代に読んでいた雑誌。サクッと読みたいときのお供として保管しつづけている。
野村:
「学生から社会人4年目まで関西で暮らしていたのですが、仕事の研修の関係で、1年で3回ほど引っ越しするタイミングがあったんです。そのときに本は大分減らして、実家に移動。なので、今並んでいる本たちは、新参者が多いですね。
研修を終え、引っ越しが落ち着いた時期に、そろそろ大きめの棚があってもいいかなと思うように。そんなときに『無印良品』で見つけたのが、この本棚。
正方形がいくつも並ぶ形状は、どんなものも柔軟に並べられそうだなと思ったのが、決め手でした」
▲手に取りやすい手前には、新しい本や積読中のものを置くようにしているそう。
野村:
「休みの日にふと思い立ち、家具の配置をガラッと変えるのが好きなのですが、この本棚も、当初置いていた窓際から、段々と僕のデスク側に移動させ、結果今の、ダイニングテーブルで隠れるような配置に。
本棚すべてを見渡せなくなるので、不便かな? と思ったのですが、試しに過ごしてみたら案外気にならず、定着しました」
▲読書は、窓際のソファにゆったり座りながら。絨毯の下に敷かれたホットカーペットが、足をぬくぬくと暖めてくれます。
野村:
「平日は慌ただしい分、ゆっくり本を読むことはあまりなく、ぽっかりと時間が空きがちな土曜日や、休日前夜に『明日休みだし、夜ふかししよう』と決めて、読書をすることが多いかもしれません」
本棚に負けない「大きなポスター」を飾って
▲家にある植物のお世話は、野村担当。毎週土曜日に、たっぷり給水するのが休日ルーティンになっているそう。
本棚の一番上は、好きなものを飾るスペース。
野村:
「可愛くて捨てられなかった缶や、つい集めてしまう動物の置物。左のタラブックスの原本は思い出の一冊、赤い『くまのプーさん』の本は装幀が気に入っています。
大きな額縁のポスターは、染色工芸作家・柚木沙弥郎さんの展示会で購入したもの。あるホテルの客室に大きく柚木さんの作品が飾られているのをSNSで見かけてから、憧れていたんです。お値段もやさしく、見つけたときには即決でした。
これは本棚の上に置くと収まりがちょうどよくて、模様替えをしてもこのポスターだけは定位置が変わりません」
▲絵しりとりを収録した単語帳型の本は、お絵描きユニット・ゴンピスによるもの。表にイラスト、裏にそのイラストの名称が書かれ、次のページには絵しりとりが続く。なかでもお気に入りの『積み木』のイラストを一番前にして飾っていた。
最近、積ん読が捗っていまして……
普段、どんなジャンルの本を読むことが多いのでしょう?
野村:
「学生の頃は雑誌『WIRED』を定期購読していたり、伊坂幸太郎さんの小説を読み揃えたりしていました。
この頃は、特定のジャンルよりも、気になる人の書いた本やエッセイが増えてきました。雑食読みですが、ライトなものというより、今も昔も深く読み進めるものを好んで手にとっているかもしれません。
とはいえ、前列に並んでいるのはほとんど積ん読中ですね……。隙間時間に読んで、また戻して、と楽しんでいます」
▲電子書籍版も活用中。雑誌はもっぱらこちらで読むようにしているそう。
日々の出会い・できごとが詰まった世界
野村:
「最近面白くて印象的だった本は、三砂慶明さんの『千年の読書』です。
大阪・梅田の蔦屋書店の書店員・三砂さんの本なのですが、書店界隈では有名なコンシェルジュの方で。
僕が関西に住んでいたときにも、実際に書店で何度かお会いしたことがありました。レジに本をいくつか持っていくと『この組み合わせがお好きでしたら、きっと◯◯という本もお好きだと思いますよ』と気さくに話しかけてくださる、本への愛が溢れた方で。
そんな三砂さん自身の読書体験に基づいて書かれたこの本は、昔生きづらさを抱えながらも本に助けられた出来事や、今の仕事を通して至った『本』に対しての考察などが書かれていて。読み進める度に、胸にくるものがありました」
野村:
「あとは、R.P.ファインマンの『ご冗談でしょう、ファインマンさん』もお気に入り。
こちらは、ノーベル物理学賞を受賞した物理学者・ファインマンさんの、日常に起きる出来事について書かれた本。
肩書だけみると、きっと気難しい本に思えるのですが、全然そんなことなく。ファインマンさん自身による社会や人間の観察、いかに面白いイタズラをしたかといったことが中心に綴られているエッセイなので、上下巻とも、面白くするすると読んでしまいました」
最後に、野村にとって思い出深い本を聞いてみました。
母子でファンの……
・トム・ハンクス FAN BOOK/榊原茜
野村:
「母がトム・ハンクスの大ファンで、実家に彼の出演作のDVDがそれはたくさんありました。トム・ハンクスに囲まれて育った僕も見事、勝手に好きになっていました。笑
このzineは、同じくファンの方が作ったもの。熱量が詰まっていて、とても楽しく読みました。お気に入りの一冊です。
ちなみに、実家は田舎なので近くに映画館がなく、新作をすぐに見れない母へ、僕が帰省したり電話したりしたときに『トム・ハンクスの新作映画どうだった?』、『こうでこうでこうだったよ』と、口伝えするのがお決まりでした」
心にのこっている本
・えーえんとくちから 笹井 宏之/ちくま文庫
・ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集 斉藤 倫/福音館書店
野村:
「当時、詩というものの良さをわからないでいたときに、立ち読みでふと手にとった本が『えーえんとくちから』でした。
最初の短歌をひとつ読んだら、もう全部読みたくなっちゃって。なんというか、短い言葉でいくつもの情景が頭に立ち上ってくる豊かさにとても心を打たれたんです。
『詩っていいな……』と思う気持ちに、重なるように読んだのが『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』。こちらは児童書で、やさしい物語調で詩の良さが語られていくものでした。
長編小説やエッセイのように、じっくりと読み進めていくものを手に取ることが多いなか出会ったこの2冊は、今も大切にしています」
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ボリュームを小さめに抑えたラジオの流れる部屋で、ひっそりと壁に寄り添う本棚。その本棚のなかで静かにおさまっている何十冊分の本それぞれに、大小様々な思い出が詰まっていました。
それは眺めるだけで、温かなものにくるまったように感じるのです。
さて、次はどのスタッフの本棚をのぞきましょうか。次回の更新も、どうぞお楽しみに。
【写真】メグミ
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