【バイヤーのコラム】何かにつまずいている自分に気づいたら。
編集スタッフ 松田
▲地元の青森では、まだ雪が積もっているそう。北国の春は、もう少し先です。
つまずいて、立ち止まってしまったときに、助けてくれるもの。
何をやっても空回り。小さかったはずの悩みがいつの間にか大きな悩みに。どの道も行き止まりのように感じて、どんな風にあがいていいのか分からなくなる。あれれ、何だかうまくいかないなぁ〜…。ときどき、そんな時期に陥ることがあります。
仕事では、壁にぶつかって。家に帰っても、悶々と後ろ向きに考えてしまう。そういうときは、大好きなビールだって美味しく飲めない。映画を何本観ても、なんだか気持ちが晴れない。
そんなとき、ダメダメな自分を最後に助けてくれるのは、意外にも「料理」だったりします。それも難しいレシピではなく、ごくごく簡単なもの。
肩を落としながらも、まずは台所に立って。冷蔵庫にあった、キャベツと油揚げを刻む。
それは昔、一緒に暮らしていた祖母がよく作ってくれた「キャベツと油揚げの炒め煮」。ざっくり切ったキャベツと油揚げを油で炒めて、お醤油とみりんでさっと煮つけた、とってもとってもカンタンな一品です。
▲最後に七味をふるのがポイント。
小さな頃のわたしは、このおかずが大の好物だったので、それを知っている祖母はいつも鍋いっぱいに作ってくれました。
ごくごく素朴な味だけど、口いっぱいに広がる、キャベツの甘さ。
くったりと味が染みた油揚げ。
出来たても温かくて美味しいし、ちょっと置いて冷まして、いっそう味が染みた頃合いのも好き。白いごはんがすすむし、お弁当のおかずにもなります。
小学生のころだったか、祖母が作ったできたてのそれを、鍋ごと食卓に運ぼうとして(鍋ごと食べたかった欲張りものです)、手がすべって床にまるごとひっくり返してしまい、悲しくて情けなくて大泣きしたこともありました…苦笑
祖母はせっかく作ったのに!とピリリともせず、火傷をしてないかのほうを心配してくれて、また新しいのを作ってくれたっけ。
冷蔵庫にキャベツと油揚げさえあれば、たとえ元気がなくても、すぐに作れる。
味つけだって失敗がないから、難しいことを考えなくて済む。
出来上がって、食卓に並べるころには、「だいじょうぶ、ちゃんと美味しく作れた」と、ひと安心して、ちょっとだけネガティブモードの自分から抜け出せるような気がするのです。
だから、時に、何かにつまづいている自分に気づいたら、この料理を作ります。
東京で一人暮らしを始めたときも、何度も何度も作ったし、夫と暮らしている今もなお作り続けています。
そして、これを食べているときだけは、祖母と暮らしていたときの、泣き虫の甘ったれで、祖母の手料理をいつもお腹いっぱいに食べていた、あの小さな頃の自分に戻ったような気がして、なんだかホッとするのです。
今までたくさん、そしてきっとこれからもお世話になるであろう、大切な「味」。
そんな味を残してくれた祖母に、改めて感謝です。
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