【家が好き】第3話:物を減らさなくても、暮らしは「シンプル」にできる(スタイリスト・城素穂さん)
編集スタッフ 奥村
家で過ごす時間について、いままで以上に考える時間の増えた今年。
あの人は今どんな暮らしを送られているのだろう? 今回はフードスタイリストの城素穂(じょう もとほ)さんを訪ねました。
1話目では引越しや出産を経た暮らしの変化について、2話目では娘さんが生まれてからのインテリアについてご紹介しました。
最終話では、ここ数年の変化を経て、いま城さんが大切にしたいと思う「暮らしの軸」について伺います。
和洋中、いろいろな料理を作る小さなキッチン
▲こぢんまりとしたキッチンには、壁掛けのラックをしつらえて収納を補う
この家に越してからは、1日3度の食事もほぼ家でとるように。ここ数年は特に、外食の機会が減ったという城さん。
城さん:
「夫婦で共通しているのが、食べるのが好きなこと。2人でキッチンに立ち分担するのが常で、和洋中いろいろな料理を作っています。
家の近くにおいしい魚屋さんがあって、魚の鮮度がとてもいい上に、買う時にちょっとした調理法も教えてくれる気さくな店主さんなんです。
今まであまり魚が得意ではなかったのですが、こんなに美味しいものなんだと知って。魚料理を作るのが好きになりました」
▲イカをさばいた時に出てきた骨が、思いがけず美しく、飾っている
城さん:
「最近夫が凝っているのは、イカ料理。少し手間はかかりますが、イカ墨でパスタを作ると本当に美味しいんです。この間は大きな鮭の切り身を買ってきて、これをどう食べようか?と相談したりも。
2人立つのがやっとなほどのコンパクトなキッチンですが、スペースをなんとかやりくりしながら作るのも楽しいものです」
キッチンは大きな窓に面していて、ここから大きな2本の木が見えます。それは集合住宅の中心に植えられた柿の木とハナミズキで、春には小さな花が咲き、秋には紅葉し、家に居ながら四季の移り変わりを感じられるそう。
このキッチンに立ち料理をしながら、窓から見える木を眺め、傍らのベビーチェアに座る娘さんを眺めるのが、城さんの好きな時間のひとつ。
好きなものがどちらも目に入るひと時だから、と話していました。
ミニマリストにはなれなくても、「本当に必要なもの」は少ないと気づいた
城さん:
「4年前、病気をしたことで、生活する気力も体力もなくなってしまった時期がありました。
今までのように暮らしを回していくことができなくて、その中で、最低限何があれば生きていけるだろうと考えたとき。私にとってそれは、食べることと、家族や大切な人とのつながり。とてもシンプルだと思ったんです。
もちろん、だからと言ってそれ以外の全てを捨てられるわけではありません。家には今もたくさんの物がありますし、ミニマリストになれるとは思っていません。
それでも、それらはいつか手放す段階がきたら、潔く手放すこともできる。本当に必要なものと、あれば嬉しいけれど、なくても生きていけるもの。それらを分けて考えるようになったのだと思います」
これまで身の周りにたくさんの物があふれていたから、本当に大切な物が何なのか、なかなか気づけていなかった。
病気をして、立ち止まったことでそれに気づくことができたから、そんな意味ではラッキーだったのかもしれない。そう城さんは言います。
今、つくづく思う「家が好き」ということ
「今、わたしは家が好きなんだとつくづく感じています」。今回取材のオファーをした時、城さんから頂いたメールに書かれていたこの率直な言葉が、心に残っていました。
朝起きて、もずくの散歩に行き、ご近所さんと挨拶を交わすこと。夫のシャツを洗い、ほつれてきた靴下の穴を繕うこと。
夕方、もう一度もずくの散歩に行き、帰宅後は娘さんにごはんを食べさせて。眠った後の夜21時頃、夫婦でごはんをゆっくり食べること。
そんな暮らしのひとつひとつがとても好きで、今、好きな時間に囲まれている。以前と暮らし向きは変わったけれど、幸せだなあと感じる気持ちは増したような気がする、と城さん。
城さん:
「おかしな言い方かもしれないですが、いま、一番 “暮らせている” 気がするんです。仕事に追われていた頃は、生活らしい生活を、じつは全然できていなかったから。
病気をきっかけに家で過ごすようになったことで、ああ、私は、家にいて、
立ち止まった今だから
当たり前に外に出かけたり、人と接したりすることができなくなった今年。
いつも通りの暮らしが変わり、戸惑った時期もありました。けれど少し時間がたった今、不思議と落ち着いた気持ちになっている自分がいると、わたし奥村は感じています。
それはなぜなのか。「自分にとって大切なもの」は変わらず手に届く場所にあると思えたからなのではないかと、城さんとお話して気付きました。
今日もおいしいごはんが食べられて、そして1日の終わりに腰をおちつけられる、心地いい時間が家にあること。わたし奥村にとっても、「なければならない大切なもの」は、案外とてもシンプルでした。
憧れのインテリアや、欲しい家具、もっと住みやすい間取り。希望をあげればきりはないけれど、たとえそれが叶わなくても、いまの家だって好きだと。
そう思えるようになったのは、立ち止まることができたからなのかもしれません。
【写真】白石和弘
もくじ
城 素穂(じょう もとほ)
スタイリスト・chizuさんのアシスタントを経て独立。食まわりのスタイリストとして活動後、ベルギー・アントワープのレストランへ遊学。帰国後再びスタイリストとして活動。病気を機にしばらく休業し、夫と10ヶ月になる娘、愛犬と共に暮らす。
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