【夫婦で、服のはなし】第1話:40代からは「大人だからこそ似合うもの」を探していく
ライター 木下美和
いくつになってもおしゃれを楽しむために、40代になった“いま”の自分に似合う服を知りたい。
そんな問いを抱いて訪ねたのは、神奈川県横浜市にあるセレクトショップ「annabelle」(アナベル)。都市部から少し離れた立地にある小さなお店ながら、長く愛用できるつくりのいいものに出合えると、おしゃれ好きの大人の女性が足繁く通うお店です。
今回ここを訪れたのは、店主の伊佐洋平(いさ ようへい)さんと妻の奈々(なな)さん、それぞれの視点で「40代からの服選び」についてお話を聞きたいと思ったから。
▲東急田園都市線・たまプラーザ駅から徒歩約5分。グリーンが生い茂る外観が目標。
洋服店の夫婦が語る、大人のおしゃれ
生粋の服好きで、長年ファッション業界で仕事をしてきた伊佐さんは、とにかく服についての知識量が圧倒的。生地やつくりの特徴から作り手の制作背景に至るまで、その知識と分析力を踏まえて、着る人と服、それぞれが引き立つコーディネートや、似合う・似合わないの理由を、わかりやすくアドバイスしてくれます。
一方、二児の母であり保育士としても働く奈々さんは、週に一度、お店で扱う商品の試着モデルを務めています。伊佐さんが提案する服やコーディネートを一番近くで体感してきた奈々さんは、伊佐さん曰く、「感覚的に自分に似合う・似合わないがわかっている人」なのだとか。
そんな奈々さんが、いま、何を選び、どんなふうにおしゃれと向き合っている? 年齢を重ねる中で変化してきたことは?
コーディネートする側として客観的な視点を持つ伊佐さんと、着る当事者としてリアルな声を持つ奈々さん。それぞれの立場から、40代のおしゃれについて語っていただきました。
お客さまが求める「きれいに見えるバランス」とは
2012年にオープンし、今年3月で丸10周年を迎えたアナベル。その間、伊佐さんはお店で扱う服や、コーディネートの視点が変わっていったといいます。
伊佐さん:
「ずっとメンズファッション畑にいたので、その視点からレディースファッションを扱ったらおもしろいんじゃないかと思い、お店を始めました。なので、オープン当初は僕がいいと思うメンズライクなアイテムが多かったですね。
でも、実際にお店を始めてみると、お客さんは必ず“女性らしさ(きれいに見えること)”を求めていることがわかってきたんです。首は長く見せたい、顔写りはよくありたいとか。そういうのってメンズファッションにはあまりないので、当時は考えもしなかった」
伊佐さん:
「だから、2年目からはアナベルらしい女性らしさのあり方やバランスを模索するようになりました。そこで率直な意見を一番近くで聞かせてくれたのが、奈々さん。とにかく誰よりも素直で、好き嫌いがはっきりしてるんですよ」
奈々さん:
「『全然かわいくない』『好きじゃない』とか言っちゃうよね……(笑)。私、自分ではそれほど服にこだわりはないと思っていたんですけど、意外と好みがはっきりしているんだなあって、試着モデルをするようになって実感しています。
あとは、やっぱり10年間で体型が変わってきたので、前は好きだった形や色が何か違うなと思うことが増えましたね。40代になってからは特に」
家事や育児をしながらでも楽しめるおしゃれ
奈々さんはライフスタイルにも大きな変化がありました。この春、二人の子どもが高校と中学に進学するのを機に、約15年ぶりに保育士としての仕事を再開。
奈々さん:
「もともと子どもの教育の現場に興味があって、結婚前に働きながら保育士の資格を取りました。まだ働き始めたばかりですが、毎日楽しんでいます」
1週間のうち、平日4日間は保育士として働き、1日はアナベルで試着モデルなどを手伝うという生活サイクルは、コーディネートにも表れています。
奈々さん:
「毎日自転車に乗って出勤・移動するので、ふだん着のほとんどはパンツスタイル。今日みたいなひらひらした服はアナベルの日だけって決めています。どちらにしても、着心地と動きやすさを重視して選ぶことが多いです。
特に着心地は、試着をするようになってから価格に納得できたというか。素材やつくりにこわだって丁寧につくられた服って、着ていてこんなに気持ちがよくて、長く着続けられるんだなって」
▲奈々さんが4、5年ほど愛用している「ゴーシュ」の白パンツ。体型維持の“基準パンツ”にしているそう。
▲最近特に出番が多いという「アルテポーベラ」のビッグシャツコート。古着テイストでありつつ、ハリ感の生地が上品な印象。
▲アナベルと同じ建物にアトリエを構える「ソノ」の革バッグは、夫婦二人で愛用する一品。仕切りのないシンプルな袋状のつくりと、使うほどに味が出る革の質感がお気に入りだそう。
母娘でクローゼットを共有してみて、わかったこと
▲奈々さんお気に入りの「メゾンドソイル」のワンピースを羽織にして、「ブルーイングリーン」のバルーンパンツを合わせて。
試着モデルを通して、自分にとって心地いい服を見つけてきた奈々さん。こうした愛用の服の数々は、15歳の長女にも魅力的に映るようで、最近は母娘で服を共有することが増えたといいます。
奈々さん:
「娘が私の服を着るようになって気づいたのが、娘の方が似合う服と、私の方が似合う服があるということ。例えば今日履いているバルーンパンツや、お店で扱っているキュロットのようなシルエットは、華奢な娘より腰まわりにボリュームがある私の方が似合う。40代になったからこそ、よりかっこよく履けるのかなって。
逆に、シンプルな格好があまり似合わなくなりました。Tシャツ1枚だと首元が貧相に見えるし、背中の丸みが気になることも……。だから最近は羽織を1枚プラスしたり、ストールを巻いたり、“重ね着で足していく”ことが増えましたね」
▲毎日必ずつけるというピアス。この日つけていたのは「en」のもの。
▲足元は「ガサ」の靴下と「ヴィエイユ」の革靴。
伊佐さん:
「僕から見ても、奈々さんと娘では同じ服でもまったく印象が違うなあと思うことがよくあります。パンツも、いわゆるジャストサイズのカジュアルなパンツは自然と履かなくなったよね。さりげなく凝った形やぶかっとしたサイズ感のものの方が似合う。
あと、シックな服は娘より奈々さんの方が断然似合いますね。15歳にシックはまだまだ着こなせない。40代半ばへと向かうまさにいまの自分たちの年齢は、“2つ目の曲がり角”。今まで似合っていたもの・好きだったものが変化していく時だと思います」
大人世代だからこそ、より似合う服がある。年齢による変化は悪い事ばかりではないと思うと、前向きな気持ちになれます。では、曲がり角に立つ40代から似合う服とは、具体的にどんな服なのでしょうか。
次回は、伊佐さんが薦めるこの春のコーディネートと、定番アイテムを更新するための服選びのポイントを伺います。
【写真】鍵岡龍門
もくじ
伊佐洋平・伊佐奈々
神奈川県横浜市のセレクトショップ「annabelle」(アナベル)を営む。妻の奈々さんは保育士の傍らお店の試着モデルとしてサポート。服の手触りが伝わってくるような伊佐さんの言葉で綴られたお店のブログやインスタグラムには、コーディネートのヒントが満載。2022年4月にアクセサリーブランド「en」の企画展を開催予定。
HP:https://f6products.com Instagram:@annabelle_104
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