【ゼロからのふたり】前編:今も続く「動機を持った企画づくり」のはじまり(佐藤 × 高山)

ライター 長谷川賢人

ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。

でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。

今回は、オリジナル商品をつくる「PB開発グループ」のスタッフ佐藤と、BRAND NOTEなど企業とのタイアップ企画をプロデュースする「事業開発グループ」のスタッフ高山が登場。

実は、それぞれのグループがクラシコムのなかで立ち上がったときに入社し、自分たちの仕事を一つずつ作り上げていった共通点を持っています。今ではマネージャーを務めている、そんな “ゼロからのふたり”、自身のなかで「変わったこと、変わらないこと」はあるのでしょうか?

前編は高山が主に聞き手となって、佐藤に色々質問してみました。

 

母の影響で、もともと「つくること」が好きでした

高山:
佐藤さんって、たしか神戸の出身でしたよね? 関西弁、出ないですね。

佐藤:
親の転勤が多かったタイプでした。もともとは関東出身で、幼少期の7年を神戸で過ごして、大学時代は東京で、社会人になってから神戸の会社に勤めたりして。だから友達としゃべるときは出ますよ。

高山:
社会人になってから東京へ出ると、関東と関西にも友達ができていいですよね。ぼくもそうなんです。佐藤さんは「関西のノリ」が伝わるところを感じていて、第一印象が「よう笑う人やな」だったんです。なんだか懐かしさも感じて楽しくて。

佐藤:
高山さんも関西ですよね。

高山:
もともとは大阪の堺市で育って、大学も関西で、いろいろあって東京に……。

佐藤:
今日はそのいろいろ、聞きますね(笑)。

高山:
大学のときは何を学んでいて、それが今の仕事にもつながっていたりするんですか?

佐藤:
家政学部の被服学科で、洋服のデザインをしたり、繊維の実験をしたり。子どもの頃から、母親が洋服を作って着せてくれたり、DIYしたりするのが好きな影響もあって、「つくること」が私も好きになったんです。就職活動でも幅広く受けてみましたけれど、繊維商社さんみたいに服飾関係の企業が多かったですね。

高山:
まさしく、いまの仕事のお取引先みたいな。

佐藤:
ものづくりする仕事に就きたいと思って、縁があったのが洋服から雑貨まで扱う通販会社でした。新卒社員でも企画を出せる機会があり、母親が昔から使っていたサービスで知っていて、子どもの頃に住んでいた神戸なら一人暮らしもできそう。ここなら良いな、って思ったんです。

 

「やりたいことは一通りできた」と思っていたはずが……

高山:
商品企画の仕事はできたんですか?

佐藤:
それが幸いにも、雑貨の商品企画をする部署に入れたりして、できたんですよね。やりたい仕事ができて嬉しかったんですが、当時お付き合いしていた方との結婚を機に東京へ移ることに。「もう少し続けたい」も本心だったけれど、「やりたいことは一通りできたかな」とも感じて。新卒から6年くらいお世話になった会社を辞めることになって。

東京で新しい仕事を探すとき、雑貨やアパレルの企画はたくさんできたので、ちょっと毛色の違うものに挑戦してみようと、ポテトチップスが有名なメーカーに入りました。お菓子を食べるのも好きだったし(笑)。

高山:
やっぱり、企画だと試食なんかで食べるんですか。

佐藤:
毎朝、出社したらポテチを食べる日課ができました。その会社は工場も併設されているから、品質チェックも兼ねているんですけどね。仕事中も新しい風味の開発で試食しますし。そのうち、工場で作っていても日によって少し仕上がりにムラがあることがわかります。

高山:
そうなんですね! どんなものを企画したんです?

佐藤:
トリュフ塩味とか、炙り明太子チーズ味とか。狙ったフレーバーを出すために香料を調整したり、パッケージもディレクションしたり。味わいをどう表現すれば店頭でお客さんに買ってもらえるのかを考えるのは楽しかったですね。

そんなときにたまたま、クラシコムの社員募集のお知らせを目にしました。神戸の会社を辞めるときに「やりたいことは一通りできた」と思ってもいたはずが、やっぱり「好きなものに携われて、しかも作れるのは幸せなことだったなぁ」という気持ちが湧いてきて。その募集が、今で言うPB開発グループで、オリジナル商品を作る仕事だったんです。

 

「動機を持った企画を立てる」フォーム作り

高山:
入社してきた佐藤さんは、とにかく「馴染んでる感」がすごかったですよ。「え? まだ入って3ヶ月ですか?」みたいに思えるくらい。

佐藤:
ほんとですか? 本人は必死なんですけどね(笑)。

高山:
でも、これまでの会社とは規模感も違うし、PB開発グループも立ち上げ時期だから、そりゃあ大変だったはず。ギャップとか感じました?

佐藤:
取引先も自社工場も無いわけですから、作ってくださるパートナーをイチから探すところから始めて、製造フローも手探りで決めていきました。それこそ前職で繋がりのあったパートナーさんのツテをたどって、すごく助けてもらったこともありましたし。

高山:
その頃で印象に残っている商品を挙げるとしたら?

佐藤:
パイル地の2WAYバブーシュ」かなぁ。

高山:
今もお店に並んでいるロングセラーですよね。この商品企画はどうやって生まれていったんですか。

佐藤:
「動機を持った企画を立てる」というフォームを作るところからですね。ただ、「スリッパが欲しいから作ろう」ではなくて。それまでの仕入れ商品のページを作るときなどにもすごく大事にしていたと思うんですけど、オリジナル商品はなおさらでした。これは今でも一貫していることです。

自分から掘り起こした動機を、追求したりブラッシュアップし続けたりして、理想に近づけていく。そして、それを叶えるために最後まで諦めない。よく「大人の事情」みたいに言って、「やりたいけどできなかったこと」って結構あるものじゃないですか。

でも、クラシコムの場合は仮にそうなったら、潔く「出さない」という選択をする。それが商品の信頼感につながってくると思うんです。良いものができなかったら、「今回はやめよう」と決断できる。それって、一番に勇気がいることです。

高山:
その信頼感って、わかるなぁ。オリジナル商品が今は売上全体の約5割ですもんね。もともとはゼロから始まって「3割を目指そう」と言っていたんですから。

 

主語を「自分」から「お店」にしてみたら

高山:
佐藤さんの話を聞いていて、僕も事業開発グループの立ち上げ時期は似ていました。ツテ、たどりましたもん。それって自分が持っている資産みたいなものだから、最初にそこから繋がりを作って、自分の仕事づくりから始めていったんです。

それに、広告主や広告代理店からも、ありがたいことに「北欧、暮らしの道具店と取り組みをしたい!」ってご要望いただくんです。でも、それがちゃんと自分たちの「動機」やお客様が求めていることと結びつかなかったり、社内に何かしらの無理を強いてしまうようなら、やっぱり潔く断ることもあります。

佐藤:
クライアントの「こうしたい」という思いは、つい叶えてあげたくなってしまいそうだけれど……その落としどころを考えるのは難しそう。

高山:
でも、僕たちプランナーが編集チームとミーティングをしてみると、取り組みの動機に関する率直な疑問や質問をもらって、うまく答えられない……ってこともあるんですよね。やっぱり読むお客さまがあってのことですから。だから、常に編集チームの視点を頭の片隅に持ちながらクライアントの話を聞けているのがいいんだと思います。

佐藤:
そういう「貫き通す力」みたいなものは、部署や仕事が変わっても共通しているのかもしれないですね。

でも、それって「我を通す」ともちょっと違っていて。私もクラシコムに入社する前は「自分がこうなりたい」とか「良い企画を作って世の中に生み出したい」みたいに、「自分」を主軸で仕事をしているところが大きかったんです。でも、「北欧、暮らしの道具店」のお客様は、ここでのお買い物体験を楽しみにしてくださっていることがわかってきて。

だんだんと「お店として」という主語のなかで、自分自身をそこに重ねて考えられるようになってきたのは、変わってきたことだなぁと思いますね。

高山:
僕もそうですよ。事業と自分自身を切り離して考えるのは大事だと思っています。まずはいつも主語をちゃんと「事業として」に切り替えないとだめですね。そうでないと、なにか上手くいかないことがあっても、自分自身のスキルやパフォーマンスだけに根拠を求めてしまいがちになってしまう。

でも、自分自身だけで解決できることには限界があるし、そもそも「弱さを克服しよう!」なんて挑み続けるだけでは、しんどいじゃないですか(笑)。

佐藤:
それは……たしかに(笑)。

 

夢は、家まるごと。暮らし全体を提案できるようになりたい

高山:
まだ何の計画もなくても、次に作っていきたい商品カテゴリって何かあるんですか?

佐藤:
下着をずっとやりたいと思っていたんです。だから「素肌がよろこぶシルク混のなめらかインナー」がリリースできたのはすごく嬉しかったです。もっとアイテムを増やしていきたいです。

高山:
じゃあ、商品だけに限らずに、「これからやってみたいこと」は、ありますか?

佐藤:
もっともっと、トータルでお客さんに提案できるようなアプローチをしたいですね。もちろん、今みたいに特徴のある商品を作っていくことは続けながら、さらにそれがお客さまの暮らしの中に加わることで、「どういうふうに暮らし全体が良くなっていくのか」みたいなことまで提案できるようになりたいんです。

店長の佐藤とも「ホテルとか作ってみたいよね!」なんて話していて。

高山:
あー、いいですね。それこそ家まるごと、とか!

佐藤:
街まるごと、とか(笑)。

ちょっと話は変わるんですけど……高山さんは振る舞い上手だなって、私は思うんです。実はマネージャーとして「こんなとき、高山さんならどうするのかな?」と参考にしているところもあって。すごく、その場のバランスを見ながら動ける感じを受けるんです。どうしてそうなれるようになったのか、聞かせてもらえませんか?

(つづく)

【写真】川村恵理

 

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