【開発秘話&密着405日】コラボブラウス『hope』制作中、店長佐藤の隣を走りながら見たもの。ドキュメンタリー番組も同時公開!
商品プランナー 斉木
こんにちは。商品プランナーの斉木です。
今日は、一年以上の時をかけてあたためてきた、お店にとっても新たなチャレンジのお披露目の日。すこしだけ緊張しながらこの開発秘話を書いています。
本日発売するのは、マザーハウス代表で「ERIKO YAMAGUCHI」デザイナーの山口絵理子さんとともに作った『hope』という名前の真っ白なブラウス。
わたしははじまりから今日まで、企画の発案者である店長佐藤の隣に並び、その想いに応える山口さんやマザーハウス社の方々、そして当店のスタッフがそれぞれの持ち場でそれぞれに奮闘する姿をみてきました。
1年と2ヶ月。ひとつの企画にこれだけの期間をかけ、ブラウスを作り、イベントを催し、その期間中ずっと動画を回し続けるということは、どこを切り取っても初めてのこと。
長い長い旅のようだったこの期間のことを、どうお客さまにお届けしたらいいだろうと悩み、この記事では、この企画を並走していたわたしから見えていた景色、ごくごく私的な名(珍?)場面集を、すこしだけみなさんにもお届けできたらと思います。
▲写真左:店長佐藤 写真右:わたし斉木
scene 1 :
ある日、佐藤から声をかけられた
「この企画書を読んで、感想を教えてほしい」
「結構な長文なんだけれども……読んでみて率直な感想を教えてほしい」
2023年1月、zoom越しの佐藤は、珍しく緊張した面持ちで社内のコミュニケーションツールに企画書のPDFを貼り付けてくれました。それがわたしと『hope』の出会いです。
その企画書には、なぜ山口絵理子さんと一緒に作りたいのか。なぜその服が「真っ白」でなくてはならないのか。そしてそれを『hope』と名付けたいということが書かれていました。発売を記念したイベントをやりたいこと、発売前にお客さまに商品ページを公開するというチャレンジもしてみたいと。
開店から17年、やったことのないことばかりです。それでも、「来年の春、お客さまに『また北欧、暮らしの道具店がなにか新しいことを始めるんだな』って、ちいさな希望の種を届けられるような企画にしよう」と話し、私の伴走生活はスタートしました。
scene 2:
20歳の私が出会った「本の中の山口さん」と、15年ぶりに再会
話はすこし変わって、今から15年ほど前。当時大学2年生だったわたしが、本屋さんで手に取り、夢中で読み、そして母や友人に「この本読んでみて!」と勝手におすすめしまくっていたのが、今回のコラボ相手、山口絵理子さんの著書『裸でも生きる』でした。
その頃の自分とそう大きく年齢の変わらない山口さんが、どんなふうに世界を見つめ、そこに飛び込み、自分には何ができるのかを体当たりしながらひとつひとつ確かめていく過程に、こんな生き方、生き様があるのかと圧倒されたのを覚えています。
そんな山口さんと当店が『hope』というブラウスを作る。そう聞いた時のうれしさ、驚き、そしてすこしの「やっぱり!」という感覚。それがあったから「このブラウスは、マザーハウス、ERIKO YAMAGUCHIのお客さまにも、当店のお客さまにも、喜んでもらえるものになるのでは」と不思議と期待を持てたのです。
▲写真左:山口絵理子さん 右:佐藤
scene 3:
真っ直ぐで、潔くて、しなやか。
ERIKO YAMAGUCHIチームはカッコよかった
この1年2ヶ月の間、山口さんが佐藤や、ERIKO YAMAGUCHIチームの方々と話す姿をたびたびみてきました。そのたびに頭に浮かぶのが、「勝負師」という言葉。いつだって相手を真っ直ぐすぎるくらい正面から見つめ、言葉にも余計な枝葉がついていなくて、スパッとしているんです。
佐藤の企画書を読んだあと3型の1stサンプルをデザインし、プレゼンしてくださる時もそうでした。
山口さん:
「わたしの服は、着てみてなんぼなので、自分で着たところをお見せしますね」
そういって小部屋に入っては出てくるを3度繰り返す。山口さん自身はそのデザインについて多くを語らない代わりに、3型すべてでコーディネートは変わっている。情報は極力少なく、デザインだけを純粋に見せようとする潔さに、こちらも背筋が伸びる思いでした。
その山口さんの姿勢は伝播するのか、ERIKO YAMAGUCHIチームの皆さんにも、同様の潔さ、思わず「かっこいい……」と唸らされる場面がありました。
サンプルも終盤に差し掛かった頃、洗いざらしで着られるブラウスにしたいという私たちからのリクエストに、裾の縫製の始末を変えればより気にならなくなるかもしれないというアイディアが出たんです。
そのとき先方のパタンナー・後藤さんはパッと腕時計を確認し、「いま3分……いや1分もらえれば、(ミシンで)ガーっとやってみます!」そう言い終わるが早いかミシンを踏み込み、修正したサンプルを手に「この方がきれいですね!」とニッコリ。
そのあまりの早技に、きっと普段からあらゆる場面でこうやってみたら?やってみます!の数えきれないラリーがあり、それによる信頼が積み重なってチームの強さにつながっているんだろうなと感じました。
▲今回のブラウスを製作したインド・コルカタのマザーハウス工房のみなさん。写真中央が山口さん
山口さんも後藤さんも、このブラウスの制作中何度もインドの工房に足を運び、ブラウスの生産を指揮するだけでなく、当店がどんなお店なのか、佐藤がどんなひとなのか、このブラウスがどんな想いを込めた企画なのかをていねいに伝えてくださったそうです。
時にはインド出張中の後藤さんと私たちがzoomを繋ぎ、工房ツアーをしてもらったことも。工房全体が真っ白に見えるくらい至る所で職人の方々がこのブラウスと首っぴきで作業されていて、それでもカメラを向けられるとにこやかに手を振ってくださる。その姿が忘れられず、その後ブラウスを手に取るたびに現地のぬくもりと熱量を感じていました。
scene 4:
私たちの『hope』は、白くて丸い石!?
もうひとつ、思い出すたびにお腹がじんわり温まる場面があります。
まだ夏の暑い盛り、商品ページの撮影に向け、編集スタッフの二本柳と栗村と話をしていた時のこと。二本柳が、「佐藤さんの頭にある『hope』のイメージをもっと知りたい」と投げかけたんです。
佐藤:
「なんだろう……山口さんと出会った時の、海辺の砂浜で、白くてまぁるい、光る小石見つけたー!みたいな気持ち。
会社を経営していたり、国境を超えてさまざまなひとたちとものづくりをする中で、時に裏切られたりという場面もあったと聞いているし、そのぶつかりの中でより硬くゴツゴツしていってもおかしくないのに、むしろ繰り返し波に揉まれて砂浜に辿り着いた丸い石のような屈託のなさを感じて……」
その佐藤の言葉を聞いたとき、私のなかでも『hope』の見方がすこし変わった気がしました。抽象的ですが、どこか先、遠く未来に光っている何かを掴むようなイメージではなく、自分のなかにすでにある、昔から持っていたある部分を手のひらの上にのせ、確かめ、あたためるような。
今回、商品ページのなかに小石が並んでいる写真を入れているのには、実はそんな背景もあったのです。
▲スタイリストさんが集めてくださった石から、どれにしようか真剣に吟味する佐藤(写真右)
▲その直後、「これにしましょう!」と颯爽と石を選び去ったスタッフ二本柳(写真左)と固まる佐藤(写真右)
企画も終盤、無事ブラウスの撮影を終えた佐藤は、こんなふうに話していました。
佐藤:
「なんというか……服なんだけれど、服じゃないような柔らかいオーラを感じますね。
このブラウスの企画書を書いていたとき、この服が、いつか親しくなりたいと願っている人と近づくきっかけになるような一着になったらと思っていたんです。思わず声をかけたくなるような、誰かを引き寄せるような『真っ白なブラウス』にしたいと。
1年前は私の頭の中だけにあった絵が、さまざまな方の手を渡り歩いて、今こうして目の前に現れている。こんなことってあるんだと、なんだか不思議な気持ちです」
長い旅路を追いかけたドキュメンタリー動画も公開しました!
そんなふうに長い旅路を経て『hope』は今日の発売の日を迎えました。
ここで伝えきれなかった出来事や、企画に関わったさまざまな方の温度や眼差しをすこしでも届けられたらと、動画制作チームのスタッフ青木もまた、佐藤と並走してカメラを回し続けていました。
密着期間は405日、撮影時間はおよそ14時間30分(!)。それをぎゅっと20分程度にまとめたドキュメンタリー番組もつくりました。
動画の中で写っているインドの街並みや工房での様子はERIKO YAMAGUCHIチームの後藤さんに撮影いただき、これもまた2社でつくりあげた作品のように、私は感じています。
ひとからひとへ、想いをつなげながら作った真っ白なブラウス。
これを見て、着て、暮らすなかで、それを着る方にちいさな希望が宿ったら。いつもよりすこしだけ足取り軽く、羽ばたくような心持ちを感じていただけたら。
この春、このブラウスが、そんな希望の気配を感じさせる一着になることを、願っています。
※こちらのブラウスは数量限定で、再販を予定しておりません。気になった方はぜひお早めにご検討ください。
<2,5,12,18枚目>
model:Hesui(AMAZONE)
photo:砺波周平
styling:野崎未菜美
hair & make:宇津木明子
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