【ノルウェー日記】わたしの家で、常に空き缶をストックしている理由。
ライター 桒原さやか
突然やってきた、ちいさな訪問者。
家でゆっくりしていた休日のこと。突然ピンポーン!とベルがなり、玄関をでると小さな子供たちが数人、玄関の外で待っていました。
驚きつつも話を聞いてみると、いちばん年上の男の子がはずかしそうに、話しはじめました。
「ぼくたちはサッカーチームのメンバーで、すぐ近くの小学校でいつもサッカーをしています。今、空き缶やペットボトルを集めていて、すこしわけてもらえますか?」
わたしは「何個かあるから、ちょっとまっててね〜」と伝えて、家中にある空き缶やペットボトルをかき集めて、いそいで玄関にもどりました。
するとみんな嬉しそうに「ありがとう!」と言って、手をふって帰っていったのでした。
あれは一体なんだったんだろう……?
その時はまだ移住したばかりということもあり、なにがなにやらわからず、廃品回収か何かだったのかな……くらいに思っていました。
夫(スウェーデン人です)が帰宅したあと、今日あった出来事を話したところ、
「あぁ〜、それはきっと旅行にいくお金を集めていたんだよ。スウェーデンでもよく子供たちが空き缶やペットボトルを集めて、お金を貯めて旅行や遠足にでるんだ」と。
どうやら、北欧ではよくあることのようなんです。
集めるといいことがある、「PANT(パント)」
どちらも「1PANT」と印字されているのがわかりますでしょうか。
ジュースやビールなどの空き缶やペットボトルには『PANT(パント)』という表示が必ずあります。商品を買うときに、このパントに相当する料金を商品といっしょに払って、リサイクルすると払ったお金が戻ってくる仕組みになっています。
◎空き缶は1PANT(おおよそ15円)
◎1.5Lのペットボトルは2.5PANT(おおよそ37.5円)
ちいさなお金とはいえ、たまるとなかなか馬鹿にできない金額ですよね。このシステムのおかげで、ノルウェーの町ではペットボトルや空き缶が落ちているのをほとんど見かけたことがありません。
先日、突然家にやってきた子供たちは、このパントのお金を貯めて、遠足にいくお金を集めていたようです。どこに出かけていったのでしょうか。
聞いておけばよかったなぁ……。
スーパーにはかならずリサイクルマシンがあるので、買い物のついでに空き缶やペットボトルを持っていきます。
わたしの家には、常に空き缶がキープしてあります。
わたしはまだ出会ったことがないのですが、時には一人旅にいく若者が資金を集めるために空き缶やペットボトルを回収していることもあるのだとか。
回収して集めたお金で、若者が旅にでる。そこでいろんな経験をして、大人になっていく……。
その手助けをパントを渡すだけでできるなんて、なんだか夢があっていいなぁ〜と。そんな話を聞いてからは、いつ回収にきてもいいように、数個空き缶を家にキープするようになりました。
このパントの仕組みはとてもわかりやすいですし、自分にもメリットがあるので、リサイクルをしようという気持ちに自然とさせてくれます。
実にシンプルで実用的!北欧らしい解決方法だと思いました。
ライター 桑原さやか
『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。旅が好きで、冬の旅行で訪れたノルウェーの北極圏にある町、トロムソに一目惚れ。スウェーデン人の夫と共に、2016年6月より移住をはじめている。
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