【チープ・シックのある暮らし】第3話:自分の枠にとらわれない、ミックススタイルを楽しむリビング
商品プランナー 斉木
価格やブランドにとらわれず、好きなモノを選んで、自分らしく使う……そんな「チープ・シックな暮らし」をするためのヒントを探る今回の特集。
ブランディングディレクターとして日々多くのモノに触れる、福田 春美(ふくだ はるみ)さんにお話を伺っています。
最終回となる第3話では、家のなかで一番長い時間を過ごす、その人の「好き」が集まりやすいリビングをご紹介します。
※登場するアイテムは、全て私物です。過去に購入したものを紹介しているので、現在手に入らないものもございます。どうぞご理解、ご了承いただけると幸いです。
ものが多くても統一感がある。居心地のよいリビング
備え付けの収納や柱、照明がほとんどなく、「箱」という印象の強い福田さん宅のリビング。
家具や本、趣味のアートピースが飾られ、決してモノが少ないわけではありません。ラグやソファカバー、クッションにも様々な柄が使われています。でも、不思議と統一感があり、落ち着くのはなぜでしょう。
そして何より、パリに住んだ経験や、いまも国内外を飛び回る、福田さんの人生をそのまま表すような空間だと感じました。
そんな自分らしいインテリアをつくる秘訣はどこにあるのか、リビングを見ながら伺ってみました。
蚤の市で買ったレースやドレスを組み合わせて、カーテンに
福田さん:
「引越してきた日に、『あっ、カーテンのこと何も考えてなかった』と気づいたんです。でも、カーテンって作ると何万円とかかるし、採寸やらいろいろ大変でしょう。
パリに住んでいた頃に毎週蚤の市でアンティークの布やドレスを集めていたから、それをとりあえずIKEAのカーテンクリップで留めただけ。それ以来ずっとこの状態なんです。こうすればアンティークの布でもカビが生える心配がないですしね」
▲ところどころにアクセサリーやレースも引っ掛けて
箱と板さえあれば、即席の本棚やテレビ台に
アートや写真が好きな福田さん。リビングにはお気に入りの写真集や作品集がたくさんあります。本棚に入れてあるものもあれば、ラフに床に積まれているものも。
福田さん:
「この本棚、実は渋谷の東急ハンズの木材コーナーで、箱と板を買ってきて組み合わせているだけなんです。どこも固定せず、ただ置いてあるだけなので本当に即席です。
本好きの友人に教えてもらった方法なんですが、この方法なら引っ越すたびに組み替えたり、増やしたりできます。大判の写真集も立てて入れられるので、助かっていて。
テレビ台も、買うと高いじゃないですか。だからこれでいいかなと思っています」
▲テレビ台の土台にしている箱には、花器やオブジェを入れて
代用品は買わない。ずっと埋めるものを探しているカーペットの隙間
福田さん:
「冬はホットカーペットを使うので、それを隠すためにラグを敷いているんですが、一回りサイズが小さくて。はみ出たグレーの部分が埋まるように、細長いラグを2枚敷きました。
でも、グレーの部分があとすこしだけ残ってしまったんです。ここを覆うのにちょうどいいものが、もう3年くらい見つからなくて、ずっと椅子で隠してるんですけどね(笑)
間に合わせは買わないので、この大きさで、ビビッとくるものと出会うまではこの状態です」
▲ほんの少し、グレーのホットカーペットが覗いているラグの隙間
気に入ったラグがあってもサイズが合わない!という苦い思い出がたくさんあるわたしにとって、このアイデアは目からウロコ。でも、柄物同士を混ぜるなんてハードルが高そう……と、そのコツを聞いてみると
福田さん:
「部屋で使う家具の木目の色をざっくり合わせることと、清潔感を感じる白を多めに取り入れることがポイントかもしれません。
そうすると、部屋に統一感が出るんです。あとは柄物をいれたり、多少遊びを入れたとしても、うまくまとまりますよ」
▲楽天で2000円くらいで購入したシルバーのライトは、自分で白くペイント
「枠」にとらわれない。それが次の自分をつくるきっかけに
福田さんの部屋をみると、カーテンひとつ、ラグひとつとっても、その柔軟な発想にハッとさせられます。インテリアは、こんなにも自由なものなのだ、と。
自分の住みやすさや見た目の心地よさに素直に、部屋という「箱」をアレンジしていく福田さん。そのベースには、どんな考え方があるのでしょう。
福田さん:
「自分や誰かの決めた枠を気にしないことが大切だと思っています。
わたし、尊敬している老舗旅館のオーナーがいるんです。460年以上続く旅館なんですが、なかに現代アートがたくさん飾ってあって。
そのオーナーにどうしてアートを飾るのか聞いたら、
『ここには僕の好きなアートを飾っているけど、このアートにどれだけ価値があるのか、これを旅館に飾ることが正解なのかは、正直いって自分にはわからない。
でも、枠にはまったことだけしていても460年は続かない。だから、あえて自分の枠にとらわれないようにしているんです』
とおっしゃっていました。その答えがすごく印象的だったんです」
福田さん:
「フランス語で “アヴァンギャルド” という言葉があります。日本では前衛的ですこし突飛なものに対して使われるんですが、直訳すると『門の前に出る』という意味なんです。
本来の用途と違う使い方をしたり、インテリアはこうあるべき、という考えから外れたことをするのはすごく勇気がいるけれど、それが門の前に出るということなのかなと。そうやって新しい自分が引き出されていくのかもしれません。
だから、正解かどうかはわからなくても、まずやってみる。そうやってたまに挑戦するのも、また楽しいものですよ」
なんにもない部屋に、自分の景色をつくる
▲気づくとよく見ている家の窓辺に、いま好きなものを置いてみました。小さな小さな一歩です
Instagramや雑誌で、すてきなインテリアの方をみるたびに、「いいな」「素敵だな」と思うこころのどこかで、自分の部屋との違いにちいさく落ち込んでいました。
頭の中で自分の部屋のいたるところを四角くトリミングしては、コレを選んでいいかな? この配置や飾り方は正解かな? と、インテリアはこうあるべき、という気持ちでいっぱいだったのだと思います。
飾るインテリアを楽しめるのは、センスのある選ばれし人だけで、どう飾ったら正解かわからないわたしの部屋からは、どんどん物がなくなっていきました。
「自分のこころに素直であることが、自分だけの景色をつくる」と福田さんは言います。
だからまず、正解かどうかを気にする前に、一目惚れするくらい好きなものを置いてみよう。飾ってみよう。
やってみたら自分のセンスのなさや、部屋のちぐはぐさにウンザリするかもしれません。でも、小さな失敗を積み重ねていけばいいんだと思えました。
正解を求める気持ちから束の間はなれ、自分がいいと思うものに素直であること。それが、チープ・シックという暮らし方なのかもしれません。
(おわり)
【写真】岩田貴樹(12枚目以外)
もくじ
福田春美
アパレルショップの店長、マネージャー、バイイングアシスタントを経て『WR』を立ち上げ、2006年からパリで約3年半暮らす。2010年に帰国後、複数のアパレルブランドの立ち上げやリニューアルを行い、現在は『a day』、『to the north』、様々な企業イベントなどのディレクションを手がける。当店オリジナルアパレルのディレクターも務める。
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