【ケの日のこと】編み物をする娘と、お菓子をつくるわたし。
「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野
第4話:娘のマフラー
ぐんと寒くなってきて、毛糸の靴下や手袋が恋しい季節になりました。実家の母は編み物が上手で、幼い頃は手編みのセーターやお揃いの帽子、手袋を身につけていたわたし。自分に子どもが生まれた時には同じことをしてあげたい!と意気込んでいました。ところが、子どもが生まれて早7年。形にならず終わるウニョウニョした毛糸の束と、「簡単!」とか「一番最初の」とか書かれた編み物の本ばかり溜まっていく中、ふと気付いたのです。わたしは編み物が苦手だ、と。
なかなか認めたくなかったこの現実。「こうありたい」という理想の母像が膨らんでいたわたしは、編み物「くらい」できるお母さんでいたかったのです。母がわたしにしてくれたこと「くらい」してあげたい。この「くらい」は料理くらい、おやつくらい、片付けくらい……と果てしなく続いていき、理想と現実のはざまで頭を抱えた数年間。でも、勝手にがんじがらめになっているわたしの隣で、娘はスクスクと育っていたのでした。
現在小学1年生の娘は、学校で編み物に取り組んでいます。棒編みでうさぎを作っているらしく、20目のはずが16目になったり24目になったりして、困った娘に「ママ!これどうなっちゃったの?」と聞かれても、作り目って何だっけ?と聞き返してあきれられる始末。ママはわからないから学校で集中して聞いてきて、なんて言ってせっせとおやつを作ったりしている間に、娘は編み物を習得していました。「ママ、作り目はこうやるんだよ」なんて教えてくれたりする最近。
頼りにならないわたしをよそに、編み物をマスターしていた娘をみて、思ったのです。母であろうとも、わたしはわたし。理想よりも何よりも、わたしが好きなこと、心地よいことを優先しよう。苦手なことも出来ない事もいくつあったっていいじゃないか。そう思えたら肩の力を抜いて、この延々と続く「ケ」の毎日も過ごせるようになった気がします。おかあさんって、どれだけ頑張っても子どもにとっては、それで当たり前と思われがち(かつてわたしも手編みのセーターをありがたみもなく着ていました)。だったら苦手なことに時間を費やすより、好きなことに時間を費やそうと思うようになりました。
そういえば、わたしの母は編み物は上手だったけど、お菓子のレパートリーは2つしかなかったよなあと思い出し(わたしはお菓子作りは苦にならないのです)、親の背中を見て子どもは育つ……ってある意味こういうことかしら?なんて思ったりしています。いつか娘が編んだマフラーを巻くのが、ちょっとした今の夢です。
【写真】馬場わかな(1枚目)、中村暁野(2枚目)
中村暁野(なかむら あきの)
家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。7歳の長女、0歳の長男を育てる二児の母。現在は『家族』2号の取材を進めている。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。http://kazoku-magazine.com
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