私たちにとって大切な仲間であった料理家・フルタヨウコさんが逝去されました。
店長 佐藤
本日は「北欧、暮らしの道具店」をいつもご覧いただいている方々に向けて、大切な、そしてとても悲しいお知らせがございます。
6年にわたり当社クラシコムの社員食堂にて料理の腕をふるってくださっていた料理家フルタヨウコさん(享年44才)が、2018年2月5日未明、多臓器不全のため逝去されました。
フルタさんは社員食堂だけでなく、ひとりの料理家として数え切れないほど多くのレシピを提供してくださいましたし、共に立ち上げた「KURASHI&Trips JAM LABORATORY」というジャムのブランドのプロデュースもしていただきました。
6年のあいだ毎週にわたり彼女がつくった手料理を食べ、ときに真剣な議論を交わしながらジャムづくりやその他の仕事に共に携わり、プライベートでも親交の深かった私たちにとって、フルタヨウコさんというひとりの女性は「仕事仲間」にとどまらない大切な、かけがえのない人でした。
(撮影:佐々木孝憲)
(オリジナルブランドでのジャムづくりは2014年3月から昨年2017年10月末まで3年半にわたりました)
フルタさんとのお別れは、本当に突然のことでした。
亡くなられる少し前の1月18日まで、社員食堂でいつもどおりの様子でご飯をつくっておられました。
その前の週にお会いしたとき長かった髪の毛をばっさり顎くらいまでカットされていて、その髪型がとても似合っていたので「わあ、フルタさん、髪切ったんですね〜。素敵ですね」と声をかけたのが、わたしがフルタさんと交わした最後の会話になったような気もしています。
1月の後半から体調不良を訴えて社員食堂をお休みされており、それが二週間と長引きました。
これまでの長いお付き合いのなかでフルタさんが体調不良で社員食堂をお休みされることが一度もなかったので、私たちはフルタさんの状況を心から心配することとなりました。
急逝されたことをご家族から知らされたのは、そんな矢先の、私たちにとって信じがたい出来事でした。
ご家族からは、これまでの通院や闘病の事実はなかったこと、亡くなられる直前までご自分の身体が深刻な状況にあることをご存知なかったからこそ変わらず仕事をし友人などにも会われていたのだということを知らされました。
緊急入院をされてから数日のことだったといいます。あまりにも突然のことに、ご家族の悲しみも計り知れないものがあったと思います。
それからの一週間、二週間。どう過ごし、どう仕事をしたのか。記憶があるようで、ないような、そんな現実味のない時間を過ごしました。きっと他のスタッフも同じだったはずです。
同時に、密にお仕事をさせていただいた者として、ここからできることは何なのか。フルタさんは私たちに何を望んでいるだろうか。そんなことを悶々と考えました。
当店をご覧いただいている方々にこの悲しい事実をお伝えすべきかどうか。
これが一番迷ったことでしたが、フルタさんが書く「クラシコムの社員食堂」コラムの更新を楽しみにされていたお客さま、フルタさんがつくるジャムを好きでいてくださったお客さま、そしてフルタさんのレシピを見て日々のご飯作りをされていたお客さまが数え切れないほど沢山いらっしゃるはずだと思いました。
であるならばやはり、私たちが知っている事実とともにきちんとご報告しよう。
そう心に決め、当店サイトでこうした哀悼の記事を書かせていただくことにしました。「ぜひ」と理解を示してくださったご家族にも心から感謝しています。
(はじめてフルタさんに会った日の写真を見つけました。社員食堂をお願いするにあたり面談と試食をさせていただいたときのものです。2012年春のことでした)
フルタさんは昏睡状態に陥る前に、ご家族にこんな言葉を遺されたそうです。
「これまで悔いのない生活を送ってきたから大丈夫」。
「寿命だったら、仕方ないよね」。
私たちがフルタさんに持っている印象そのままの、彼女ならではの気丈さ、料理家として尊敬に値する良い意味での頑固さ、そして周囲をさりげなく気遣う底抜けの優しさを感じる言葉です。
もちろん仰られたことが彼女の意思や感情の全てではないと理解しつつも、自分の人生に対しての納得感というものを気丈さをもって表現して旅立たれたフルタさんへの尊敬の念や愛は、これまで以上に増すこととなりました。
ご自分の興味の幅や才能を自覚し、それを活かすことのできる仕事に就き、その仕事を通じてたくさんの人の胃袋や心を幸せにし、最後までいつもと変わらない様子で誰かのために料理をされていたフルタヨウコさんに、心からの敬意と哀悼の意を捧げます。
(毎週木曜日になると、まだまだ身体が「社員食堂」でふるまわれるフルタさんの料理を待ってしまいます)
(クラシコムのスタッフもアトリエにお邪魔してご飯をふるまっていただいたりと、お世話になった者が多いです。撮影:木村文平)
フルタさんは私たちのサイトに、たくさんのレシピや文章という宝を遺してくださいました。
少ない材料で作れる。近所のスーパーで手に入る食材や調味料で作れる。
フライパンやボウルひとつと言った、限られた道具で作れる。
ひとつの料理でもアレンジすれば別の味として楽しめる。
「今日は料理したくないな」という億劫さに合理的な提案で寄り添い、ご飯作りに手をかけられていない自分への罪悪感を優しく溶きほぐしてくれるような、そんなレシピばかりだったように思います。
ぜひ料理家フルタヨウコさんが遺してくれた貴重なレシピの数々を、これからもお客さまの日々の暮らしのなかで活用いただけたらと願うばかりです。きっとフルタさんも喜んでくださるはずです。(私たちも作りつづけます)
そして彼女が見せてくれた生き様に恥じない生き方が私たちもできるように、引き続きスタッフと共に「暮らしにまつわる仕事」というものとこれまで以上に真摯に向き合っていくつもりです。
北欧、暮らしの道具店
店長 佐藤友子
2018年3月6日
(私たちが大好きな写真です。昨年6月、一緒に北海道共和町のメロン農家さんへ取材に出かけたときのものです。「メロン色のスカートをあえて履いてきたのよ」と仰っていたそうです。撮影:鍵岡龍門)
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