【柳沢小実の家づくり】第1話:ずっと賃貸派だったハズが……!?
柳沢 小実
みなさま、こんにちは。柳沢小実です。
本日より、連載コラム『柳沢小実の家づくり』がはじまります。
私は、42歳になるまでずっと「賃貸」を選んで暮らしてきました。インテリアの好み、生きる場所、「変わりたい」と思えばいつでも変えることができる。その自由を手放したくなくて。
そんな私が、昨年ついに家を建てることになりました。
ゼロから自分の好きなように家を作る。そう聞くと夢が広がりますが、おしゃれな家を建てようとは思ったことは一度もなく、「暮らしやすさ」を第一に考えました。
賃貸のときと違うのは、10年後、20年後の自分を視野に入れなければならないこと。気力や体力が落ちたときにもキレイを保てるかどうか、モチベーションは持てるか……。暮らしは、きれいごとではないと常々思います。
この連載では、そんな私なりの家づくりについて、全10話で綴っていきたいと思います。
第1話
「ずっと賃貸派だったハズが……!?」
結婚してからの12年間で、3軒のマンションに住みました。どれも賃貸で、築40年以上の建物。古さはあれど大切に手入れされていて、設備面の不満もなく、快適に暮らしていました。
最初に住んだのは、自由が丘と駒沢公園が徒歩圏内のマンション。コンパクトな部屋でしたが、日当たりがよく、さっぱりと華美でないところも気に入って。おっかなびっくりの新生活を始めるにはぴったりでした。
その部屋に6年住んだ後、同じ駅でお引越し。次は低層のヴィンテージ・マンションでした。外観も内装も雰囲気が良く、場所も便利。ウキウキ暮らしていたけれど、どこかで疑問も感じはじめていました。
楽しいだけで、ずっと暮らしてはいけないな……と。
そんなふうに思っていた矢先、夫の勤務地が変わり、引っ越しをすることになりました。ごく一般的な住宅地にたたずむ新居は、空が広々として、窓から外を眺めているだけで心が満たされる。家賃が下がったおかげで車も持てて、週末の行動範囲もぐんと広がったのです。
自宅での撮影が多いこともあって、これまでずっと、味わいのある古い物件に絞って家探しをしてきました。けれども、実家も含めて6軒を転々としてきたおかげで、「どんな部屋でも気の持ちようと小さな工夫で楽しく暮らせる」、という自信がついたようです。
マンションを買う機会は何度もありました。新築マンションを見にいったこともあれば、住んでいた古いマンションもなんとか買える金額で、チラシがポストに投げ込まれるたびに揺れていました。
「買うチャンスはあったのに、そういえば買わなかったね」
つき合ってすぐに結婚したこともあって、恋愛の延長でふわふわしていた30代。今思うと、その時はまだ大きな決断をする段階ではなくて、仕事や人生が変化する余地を残しておきたかったのでしょう。
だから家を建てることに、当初いちばん驚き、戸惑ったのは私たち自身でした。
夫39歳、私42歳。決まってみたら、人より早いとか遅いとかは関係なく、自分たち家族にとっての「家を持つ時」が来たのだと、すんなり受け入れていました。
もちろん、なんて大きなものを抱えてしまったのだろうと、今でも気が遠くなります。けれど、思いのほか縛られてはいません。一生ここにいるかもしれない。でも、人生はわからない。愛着はあっても、いざとなったら家に縛られずに、変化することを選ぶでしょう。
「絶対」「一生」ここに「住まなければ」と考えたら、そもそも決断などできませんでした。
これまで住んだ部屋を懐かしく愛おしく思い出すことがあります。あの日々があったからこそ、今があるのだと。
私の暮らしと住まいの研究は、まだ始まったばかりなのです。
(つづく)
【撮影】上原未嗣
もくじ
柳沢小実
衣・食・住・旅にまつわる著書多数。収納好きが高じて、整理収納アドバイザー1級を取得。ラクチンですっきりな収納法を日々研究している。近著は今年1月に発売された『これからは、がんばりすぎない 40歳からの暮らし替え』(大和書房)。 http://www.furarifurari.com
▽柳沢小実さんの著書はこちら
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