【店長佐藤の新しい家】ここから始まる「ものづくり」。北欧、暮らしの道具店の、今とこれからの交わる場所を訪ねました
店長佐藤が新しい家をつくって引越しをする。さらに、そこで使う景色をイメージして、新たにオリジナルの雑貨や家具もつくっているそう。
そんな話を耳にしたのは数ヶ月前でした。長らく賃貸ライフを選択していた佐藤が、なぜ今、家をつくることにしたのか。どんなふうに次のものづくりのことを考え、どんなプロダクトが生まれているのか、気になります。
新緑まぶしい5月のある日、新居を訪ねてきました。
薄曇りのしっとりした日差し、窓から見える木々、通り抜ける風。そこはまるで静かな森の小屋のような、居心地のいい家でした。
店長佐藤の人生で初めての家づくりと、ここから始まるものづくりのことを、聞いてきました。
はじまりは、この景色に出会ったこと。
もうずいぶん前から「暮らしと仕事が同じ一直線上にある」という佐藤。
今年50歳になる節目で、いつかと遠く夢見ていた家づくりに向き合ってみるのもありかもしれない。その経験が、これからの店づくりやものづくりに生かされる日も来るかもしれない、と感じていました。
次の家も、カーテンなしで生活できる場所がいい。ストックホルムを初めて訪れたときに、どの家の窓にもカーテンがされておらず、キャンドルや雑貨を飾っていたことに、静かな衝撃を受けた思いは変わりません。
佐藤:
「窓からたくさんの木が見えるような自然豊かな場所で暮らしたくて、二拠点?、引っ越し?、はたまた中古物件のリノベーション?と、ゆるく探していたときに、本当にたまたま、この土地を見つけたんです。
お向かいの敷地とお隣の借景が素晴らしくて、まるで森にいるかのような、イメージしていた通りの二拠点的風景に出合ってしまった。それが始まりでした」
家は乗り物。真っ白い箱をつくろう、と思った。
一度は「いや、やめておこう」と諦めたものの、それから半年間、この土地からイメージする家や間取り、そこで暮らす姿が、どんどん浮かんできて「腹をくくった」のが当時の心境でした。
佐藤:
「家づくりは大変だと諸先輩から聞いていたし、暮らしやインテリアのこととなると、自分のこだわりやしつこさもよーく分かっていますから、大変なことが始まるぞ、仕事と並行してやりきれるかな、というのが正直な気持ちでした。
なので、あえて終の住処になると背負い込みすぎないように考えました。それは賃貸のときと変わりません。家は『乗り物』で、目的地=その時々のフィットする暮らしに到着するために乗っているもの。
この先も大きな変化があるかもしれないし、その時はもしかしたら手放したり、間取りを直したり、できる範囲で選択していけばいいのかなと。まずは10〜20年くらいのスパンでどんな家にしたいかを想像しました」
新しい家で最初に思い描いたのは、キッチンでした。階段を上がって正面。コの字型のキッチンは、すこし個室っぽくて、佐藤が以前に住んでいたマンションのようなおこもり感があり、居心地も使い勝手もよさそうです。
佐藤:
「お隣の庭に、立派な木があるんです。キッチンに立ったとき、その木を眺められる四角い窓がほしい、というのが間取りの起点になりました。
あとはピンタレストなどでイメージをたくさん集めて、文房具屋さんにスケッチブックを買いに走り、自分なりに空間イメージを描いていって。アクセントに入れた深いゆらぎのある緑のタイルは、この家のテーマカラーにもなっています」
シンボリックな空間のキッチンとは対照的に、リビングダイニングは無垢挽板の床と白い壁でいたってシンプルに仕上げています。
その理由は、長年愛用してきたダイニングテーブルや椅子、ソファ、北欧ヴィンテージのチェストや本棚などを、引き続き使うつもりで空間を設計したから。
佐藤:
「家そのものは "真っ白い箱" にしておきたかったんです。
本棚は、リビングのここに置きたくて、ぴったり収まるように何度も何度も採寸したので、うまくハマらなかったらどうしようとヒヤヒヤしたり、パントリーの上は大好きなカゴをずらっと並べて収納できる設計にしていたり。いざ収まったときには『この景色が見たかった!』と達成感がありました(笑)」
あちこちに「今」と「これから」が詰まっている。
引っ越して、間もなく3ヶ月が経ちます。
住み始めるまでにも、雑貨やグリーンをちょこちょこ運び入れて、新しい家に「身体を慣らしていた」佐藤ですが、あらためて長年使い続けたものが収まったときには、感慨もひとしお。ようやく自分の家になった、とホッとしたようです。
佐藤:
「ダイニングに置いたフランスの古い食器棚は、京都でギャラリーを営む友人に見つけてもらいました。その友人の提案で、棚板を、自分たちの手で深いグリーンに塗り直しているんです。この家の、シンボル的な家具になりました。
『これが割れたら泣いてしまう』というほどの大事なカップアンドソーサーやグラスは、引っ越しの段ボールに入れず、事前に自分の手でここへ持ってきたんです。
すると、だんだん自分の場所になっていくと言いますか……。少しずつ雑貨を運びながら、スイッチの位置、動線、そういったものに身体を慣らしていったので、違う家で生活しているザワザワ感はあまりないかもしれません」
▲リビングの壁に作りつけた白い棚には、これまでに集めてきた雑貨や愛読書が並ぶ。
▲書斎は一面だけウィリアム・モリスの壁紙を選んだ。少女時代からの憧れと、前の家から気に入っているチェストや花瓶が同じ空間にある。
食器棚と器の関係のように、新しい家には、これまでに少しずつ集めてきた好きなものが、あちこちに居心地よく収まっています。どの空間にも、佐藤の「今」と「これから」が散りばめられているように感じました。
佐藤:
「多分、それがやりたいことなんだと思います。これまでの家とはちょっと違うテイストでも、昔から憧れていたものや好きなものを、うまくミックスさせていけたらなと。家をつくるって大きなことだけど、なんというか、延長線上だといいなと思うんです。『ずっと佐藤さんってこんな感じだよね』というふうに」
▲リビングの片隅には、この家で使いたいと買ったスウェーデンの飾り棚を取り付けた。ここにも20年前から集めてきた北欧ヴィンテージの花瓶が並ぶ。
いま「オリジナルの家具」をつくってます。
ずっと好きなものと新しいもの。この家に入ったときに感じる居心地のよさは、そんな長い時間軸からも生まれているのかもしれません。
そして実は今、オリジナルブランドで初めてとなる「家具」の商品開発をしています。間もなくリリースを迎える予定ですが、この家づくりは、家具をつくる上でも大きく影響したそう。
佐藤:
「もともと、花やグリーンを飾れる花台を探していたんです。新居に置きたいけれど、素敵なのは一点ものばかりで、空間のさりげないアクセントになるような、白い壁に合う理想的なものにはなかなか出合えませんでした。
だったらオリジナルでつくれないか?と、検討を始めたのが1年以上前。『わたしが見たい景色をつくるための家具』というコンセプトを考えて、協力くださるパートナーさんとも出会えて、念願のプロジェクトが動き出しました」
佐藤:
「その後の開発期間は、まるっきり家づくりとも並行していたので、お互いにすごく影響を与え合っていたと思います。
この花台を、新居のどこにどんなふうに置きたいかのイメージと、我が家だけでなく、様々なライフスタイルや家で暮らすお客さまも想像して、『これならちょっと取り入れてみようかな』と思っていただけるものってどういうものだろう?と。
デザインも素材選びも、とことん突き詰めた自信作なので、ぜひ楽しみにお待ちいただけたらうれしいです」
北欧、暮らしの道具店のこれからのこと。
佐藤:
「おかげさまで、オリジナルブランドを立ち上げて今年で10周年を迎えます。
ここからしばらくの間、オリジナルの雑貨にも服にも、ある一定の同じ空気をまとわせたいと感じていたときに、家をつくることになり、これは良い機会かもしれないと思ったんです。
少し前に発売した『陶器のキッチンツールスタンド』も、もちろん様々なお宅で使いやすいように考えたものですが、この家のキッチンで深いグリーンのタイルの前に置くことを想定しながらつくったものでした」
佐藤:
「今まで大事にしてきたことを守りながら、より遠くへ。北欧、暮らしの道具店の第二章、第三章へ、ここでの暮らしが繋がることを願っています。
暮らしと仕事と。プライベートな出来事が、お店づくりにも影響してきたのはこれまでも一緒ですし、ここからも良き変化をしていきたいです」
§
秋に向かって、オリジナルブランドの家具カテゴリーの新しい商品が、少しずつリリースされていく予定です。
見たい景色を、自分でつくる。
その選択肢の一つとして北欧、暮らしの道具店の生み出すプロダクトに希望を感じてもらえたら。引き続き、私たちみたいな誰かのフィットする暮らしをつくるお手伝いをしていけるように励みます。どうぞ、これからも楽しみにご覧ください。
【写真】木村文平
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