【スタッフコラム】真っ赤なマフラーと、半信半疑のお買いもの。
保育園児の頃から、家族や親しい友人に繰り返し言われてきた言葉があります。
「こだわりが強い」
その日の髪型からどの靴下を履くかに至るまで、自分で決めないと気が済まない子どもだったのです。特に洋服や自室に置くものは、納得したものしか身につけたくない、置きたくない。
人見知りで、人前に出るとガチガチに緊張してしまうので、身近なものはリラックスできるもので固めたくて……なんて今となっては後付けで考えてみたりするのですが、結局は「自分で決める」ということに固執していただけなのだと思います。
そんなわたしですが、先日「人から勧められたものを半信半疑で買ってみる」という経験をしました。
それは1月の半ば、代わり映えのしない冬服のコーディネートに心底飽き飽きしていた頃。普段からよく行く洋服屋さんで、あるマフラーに目がとまりました。
もともといつか欲しいと憧れていた老舗ニットブランドのもの。マフラーには珍しい、目の詰まったリブ編みになっています。
メンズライクでシンプルだけど、編みの立体感に程よいニュアンスがあるところが、なんとも自分にちょうどよく感じて。
すると、そのお店でよく接客をしてくれる店員さんが「そのマフラーいいですよね~」と話しかけてくれました。ブランドの背景や、使われている素材や手入れの仕方をていねいに教えてくれます。
アイテムへの信頼感を増したわたしが、コレ買います!とお会計に並ぼうとすると、店員さんが、「色って、ネイビーにするんですか?」と一言。
お店にあったマフラーは2色、ネイビーと赤。わたしはずっとネイビーを持っていたのです。
だって、ネイビーは昔から大好きな色だし、手持ちの洋服のどれにも合うし、雑誌で見た憧れのデザイナーさんが首からネイビーのマフラーを掛けている姿を真似したいと思っていたし。次から次に “私が決める理由” が出てきます。
すると店員さんは、はじめはおずおずと、でも途中から一息にこう言いました。
「あの、多分なんですけど……赤も似合うと思います。今日のコートにも、いつも着ている洋服の色味にも。
もちろんネイビーは絶対に使えるし、シックです。マフラーはこれ一本と決めるなら、間違いない。
でもこの糸ならではの光沢感がきれいに出て、お顔立ちや雰囲気に合うのは赤だと思います。いつものコーディネートにこの色が入ったら絶対にすてきです。嫌じゃなければ、一度、試着だけでも……」
その店員さんの今まで見たことのない勢いに圧倒され、そんなにおっしゃるなら……と、試着もそこそこに(鏡に映る真っ赤なマフラーの自分を見ることすらできず)、半信半疑のままお会計を済ませてしまいました。
それから約1ヶ月。赤いマフラーがわたしにもたらしてくれたのは、“ちょっと違う日常” でした。
巻くたびに、「わ~真っ赤~」と思いながらも、なんだかちょっと元気が出ること。
見飽きていた手持ちの洋服が、どれも見たことのない表情を見せてくれること。
いま思い出すとクスッとしてしまうほどに、必死の形相で勧めてくれた店員さんのこと。
自分以外の誰かを信じてみることで、ひとりでは知ることのなかった感情や景色に出逢えたこと。
すべてを自分で決める生活は、失敗は少ないし、安心感もあります。でもその裏側には、ピーンと張り詰めたような緊張感があることにも、いつからか気づいていました。心地よさのために決めたいくつもの「マイルール」に、いつのまにか自分が、がんじがらめにされているような。
他人の判断軸に、たまにはえいやっと乗っかってみる。信じてついていってみる。
そこには、がっかりする出来事やしっくりこないモヤモヤも待っているかもしれません。でも同時に、わたしが想像もしていなかったような刺激や、ユーモアが入り込む隙間も生まれるのだと思います。
こうしてみたら? これ、いいんじゃない? そんなふうに勧められても、つい「いや……」とお茶を濁してばかりでした。でも、次もし誰かにそんな言葉をかけられたら、素直に受け入れることから始めたい。
クローゼットを開けるたびに、ひときわ鮮やかに目に映るマフラーを見ながら、何度も自分に言い聞かせています。
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