【44歳のじゆう帖】音楽と私

ビューティライターAYANA

音楽とは神秘で崇高なもの

音楽に対しての憧れが、昔からずっとあります。

実家にテレビはなかったけど、レコードがそれなりにありまして、コンサートなども割と早い段階で親に連れて行ってもらっていました(最初のコンサートは小学校低学年、おそらく矢野顕子さんか井上陽水さんのどちらかだったと思います)。

その素地が関係していたかわからないけど、小学生のときはアイドルの音楽に、中学からはバンドブームにハマり、私もギター弾きたい!高校生になったらバンドを組む!って思っていました。

そこからまあバンドを組んだり組まなかったりしたのですが、いざやってみると音楽がどうやってできているのかが全然わからない。メロディに乗せて歌うことはできるし、そこに歌詞を乗せることもできるのですが、ギターは弾けないし曲が作れない。どうやって作られているのかが全然わからない。

20代中盤くらいまでバンドの真似事をしていましたが、音楽を生み出すということに対してハテナなまま、結局ギターも手放してしまいました。

今思えばすごくおこがましい話なんですが、音楽だけが神秘でした。

服も雑貨も演劇も絵画も、どうやって作られているのかっていうのはなんとなく想像できるのだけど、音楽だけが目に見えず、何か特別な才能がある人でないと作れないものなんだ、ってますます憧れの気持ちを強くしたものです。

今は服だって絵画だって音楽だってなんだって「何か特別な才能がある人でないと作れないもの(同時に誰でも作れるもの)」だと思っていますが、音楽に対する特別な憧れの気持ちは色あせることがありません。

音楽に救われて、今がある

学生時代、というか比較的最近までは、サブスクもYouTubeもなかったし、音源ってお金を出して購入するものでした。

ジャケ買いをしたり、レーベル買いをしたり、雑誌なんかのレビューを頼りに店で物色したりするのも楽しい時間で、自分がお金を出して買った音源には少なからずの期待と責任があり、初回ピンとこなくても、聴き込んではじめていいと思えた音楽もたくさん。

歌詞カードやクレジットを読み込んだり、ジャケットのアートワークに惚れ込んだりもしていました。

時間はたっぷりあったし、移動中はいつもヘッドホン。

カセットケースを10本持ち歩くなんてザラで、はじめてiPodが出た時は、このなかにアルバムが100枚も入っちゃうの?と衝撃を受けたものでした(今思えば少なすぎますけどね)。

ヘッドホンで音楽を聴いていて、目の前の風景と頭のなかに注がれる音楽の空気がバチッと合う瞬間というのがあって、泣きたくなるようなしんみりするような高揚するような、ごくごく個人的で瞬間的なものなんだけど、その体験は私が私でいいんだと言ってくれているようなもので……、何度も助けられた気がします。

ライヴハウスやクラブにもよく行っていましたが、我を忘れてのめり込むというよりは、なんとなくいつも頭の中がしんとしていて、謎に進路みたいなことについて考えちゃったりしていました。

だから、なんというか音楽って私にとってすごく個人的な聖域というか、自分と向き合う機会というか、ある種の精神安定剤だったなと思います。

これからも音楽を好きでいたいから

しかし出産後、音楽を聴く時間が激減し、サブスクの台頭もあってお店に音源をチェックしにいくこともなくなってしまいました。単純に忙しいというのもあるんだけど、そこに割く精神的リソースがないというか。アルバム1枚通して聴くとか、何回も何回も擦り切れるまで聴くみたいな経験もかなり減ってしまいました。

しばらく、自分が音楽好きということを忘れるくらいになっていて、息子が夢中になってるアニメの主題歌くらいしか最近は聴いてないなぁ〜なんて日々が続いていたのですが。

ここ1年くらいで、雨のパレードとかLicaxxxとかあいみょんとか、素敵な日本のアーティストがいきなり目に入るようになり、自分の音楽に対する解像度みたいなものが上がった(回復した?)感覚があって、またちょっと音楽への熱が高まっております。

そうしたら、この5年ほどであの人もこの人も新譜出してるじゃんということがザクザクわかってしまい、高揚しております。そういうのが瞬時にわかっちゃうのはサブスクの便利なところですよねぇ。アートワークの詳細やクレジットが謎なのは地味にすごく困っているのでなんとかならないかなと思うのですが。

ただなんだか久しぶりの感覚すぎて、久しぶりに刀を抜いたら結構錆びてんね、みたいな。ちょっとまだ音楽との距離がよそよそしい感じもあったりします。

音楽を作ることは今後もないと思うのだけど、音楽に感情を委ねたり道を示してもらったり、そういう経験はこれからもしていきたい。今はライヴやイベントも自粛しなければならない世の中だけど、それが開けるまで少しずつ、刀を研いでおこうなんて思っています。

 

【写真】本多康司

 

AYANA

ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang  http://www.ayana.tokyo/

 

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