【都心の家】第3話:生活雑貨店の店主に聞く、カゴを使った上手な収納

ライター 大野麻里

都心で暮らす、生活雑貨店「jokogumo」店主・小池梨江(こいけりえ)さんの部屋づくりを全3話でお届けしています。

第1話では小池さんの住まいに対する考え方、第2話ではアイデアが詰まった “持ち運べるキッチン” を紹介しました。

つづく第3話では収納上手な小池さんに、すっきりと暮らすためのカゴを使った収納アイデアや、もの選びについて伺います。

 

子どもがいながら、すっきり見えるのはカゴ収納のおかげ

▲本棚をL 字に配置した子どものおもちゃコーナー。小学生になったらここに勉強机を置く予定。

小池さんの自宅にお邪魔して、驚いたのが6歳の男の子がいるとは思えないほどすっきり片づいたリビングダイニング。遊びたい盛りのお子さんがいながら、きれいに保つコツはあるのでしょうか……?

小池さん:
「そう感じていただいたのは、リビングダイニングの扉を開けたときに、子どものごちゃごちゃしたものを置くスペースが死角になっているからかもしれません。

2つの本棚をL字に配置して、少し背の高い本棚を手前に置いています。こうしたことで、散らかりやすい場所がちょっと窪んで見えづらくなるので、すっきり見えているのかも」

小池さん:
「それと、大きなカゴはやっぱり便利ですね。子どものおもちゃなど、きれいにしまわなくても、とりあえずガーッと放りこんでしまえばいいので。おもちゃはカゴに入るだけの量をキープしています。本は図書館で借りてローテーションさせているので、そんなには増えていません。

もちろん子どもがおもちゃや絵本を広げて散らかることもありますよ(笑)。しまう場所をわかりやすくしておいて、子どもには『終わったらここに返すんだよ』と伝えることをできるだけ習慣にしています。

カゴはもともと持っていたものを、おもちゃ用に。赤ちゃんのときはおむつ入れに、それより前は布を収納したり、洗剤入れだったり、その都度必要なものに使っています。少しぜいたくかもしれませんが、長い目で見たらずっと使えるものなので」

 

いくつあっても助かる!カゴのよさ

店で扱うものは、お客さんに使用感を伝えるために、自宅で必ず使ってみるという小池さん。その言葉のとおり、部屋のあちこちにカゴが活用されているうえ、空のカゴを飾っているのも印象的でした。

小池さん:
「必ず全部のカゴに何かを入れて使わなくても、余分なカゴがいくつかあると便利ですよ。ばらばらしたお菓子があるときや、果物をいただいたときとか、パッとまとめて入れられるものがあると、片づけしやすいと思います。

使わないカゴはしまいこまず、壁に虫ピンでひっかけて飾っています」

▲キッチンの収納にもカゴが活躍。沖縄の吊るしカゴにはお茶のストックを。

小池さん:
「どこの地域でどういうカゴがつくられているか事前に調べておいて、その場所を訪れたときに何となく探すことも多いです。

国産のカゴは年々つくり手が減っていて、材料を集めることも難しくなっています。土地の歴史や受け継がれてきた知恵、素材をうまく活かしている工夫などに心惹かれますね。そういう手仕事の魅力が見えると『もう手に入らないかも』と思って購入しちゃいます」

▲いただきもののお菓子や、子どものお菓子などは出し入れしやすいふた付きのカゴにまとめて。

▲水にも強いシダ茎の洗いカゴ。キッチンカウンターに置いて、土ものの器や木の道具はここでしっかり乾燥させる。

少しずつ少しずつ、目と足を使って集められたカゴのコレクション。“いずれ自然に還ること” を基準に選んだ結果、こういうものが集まったのだそう。「心地いいものを長く使い続けたい」という、小池さんの考えがうかがえます。

日本国内以外に、海外のものもところどころに混ざっていて、絶妙なバランスでしっくりと生活に溶け込んでいました。

 

住まいも仕事も、これからはもっと身軽に

今年7月に「jokogumo」を一旦閉め、9月にむけて移転オープン準備を進めていた小池さん。この取材は、旧店舗の片づけがようやく終わったという頃に行われました。

私たちの日常ががらりと変わってしまった今年。小池さんの仕事にも大きな変化があったようです。

小池さん:
「2009年に3坪の小さな空間でjokogumoをはじめました。その後10坪の物件へ引っ越しをして9年間営業していたのですが、この9月からまた以前の3坪の場所に戻ることにしたんです

小池さん:
「商品を販売するだけなく、店としてやれることを増やしたいということはずっと考えてきたことでした。

コンパクト化をはかり固定費を抑えることが、また別の可能性を広げる手段であるということを具体的に考え始めたのが2年前くらい。でも、手放すことって勇気が必要だったんです。

なかなかその勇気もなくタイミングも計れないでいましたが、今回のことでえいっと決断できたと思います」

▲片づけ終わった日のjokogumo。(写真:jokogumo)

▲取材後、小池さんから新しく移転オープンした店の写真が届きました。(写真:jokogumo)

世の中が大きく変わった今年。自宅でリモートワークをする人が増え、とくに東京のような都会では住まいに対する考え方に変化が生まれた人も少なくないかもしれません。

小池さんの暮らしぶりを拝見したり、話を伺ったりしていると、こんなときこそ自分の生活や生き方を見直すチャンスにもなり得ると感じました。

10年後は誰にもわからない。だからこそいつも身軽でいて、“いまの暮らし” をいちばん心地よい状態にしておく。家という箱にしばられすぎないそんな生活スタイルは、これから求められる選択肢の一つになるのかもしれません。

(おわり)

【写真】ニシウラエイコ

 

もくじ

 

小池梨江

香川県出身。環境問題に興味をもったことをきっかけに、生活雑貨店「jokogumo(よこぐも)」を東京・神楽坂ではじめる。店には “長く使い続けられて、心地よく使えて、環境の負担にならないもの” という視点で、全国各地をたずねて仕入れた生活雑貨が並ぶ。2020年9月10日に移転オープン。店のサイト内「よこぐも手帖」では、日々の出来事や気持ちを綴っている。https://www.jokogumo.jp


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