【本屋の本棚から】前編:本屋は、自分を取り戻す場所。人生が愛おしくなる4冊

編集スタッフ 松田

ふらりと本屋さんに立ち寄って、本棚を眺める時間。

それは、とてもしあわせで、豊かな時間のひとつだと感じます。

心の奥にしまい込んでいた興味や記憶が呼び起こされたり、たまたま目にとまった言葉に思わずドキッとしたり、美しい装丁の本に癒やされたり。ふと気づくと店内には、同じようにじっくり本棚を眺めている人がいて、それがまた居心地よく感じたり。

東京・荻窪にあるまちの本屋「Title」店主、辻山良雄(つじやま・よしお)さんは、お店での出来事を綴ったエッセイ本『小さな声、光る棚』の中で、こんな風におっしゃっています。

だから本屋にいる人は自然と口をつぐみ、本が語りかける小さな声に耳をすませながら、本来のその人自身へと帰っていくのだろう。(p.112)

本屋が自分を取り戻すために役立つのであれば、その人には気のすむまでゆっくりと過ごしてほしい。(p.151)

それでも、仕事や子育てなど、忙しい日々に追われて、なかなか本屋に立ち寄る時間がつくれないという方も多いのではないでしょうか。

本屋に訪れ、本棚をゆっくり眺める時間そのものをお届けできたなら。そんな思いで企画した特集。今回はTitile店主の辻山さんに、今こそ届けたいテーマで本を選書いただき、特別な本棚をつくっていただきました。

それでは本屋さんでの時間を、ゆっくりお楽しみください。

前編の本棚のテーマは「わたしの暮らしも、あなたの暮らしも」です。

 


今日の本棚
「わたしの暮らしも、あなたの暮らしも」


暮らしそのものや、人との関わりが
大きく変化し続ける今。

コミュニケーションに悩んだり
ふと孤独に飲み込まれそうになったとき、

解決の糸口がみつかったり、
支えになったりするような本に出会えたら。

自分の暮らしも、誰かの暮らしも
愛おしく感じられたり、
ひとりでななく
誰かと一緒に生きていることを感じられる、
そんな本たちを選書いただきました。

 

【本棚リスト】
『女ふたり、暮らしています。』キム・ハナ ファン・ソヌ CCCメディアハウス
『世界のおすもうさん』和田靜香 金井真紀 岩波書店
『そんなふう』川内倫子 ナナロク社
『異なり記念日』齋藤陽道 医学書院
『だまされ屋さん』星野智幸 中央公論新社
『はみだしの人類学』松村圭一郎 NHK出版学びのきほん
『おやときどきこども』鳥羽和久 ナナロク社
『ありのままがあるところ』福森伸 晶文社
『「利他」とは何か』伊藤亜紗、中島岳志、若松英輔、國分功一郎、磯崎憲一郎 集英社新書
『かなわない』植本一子 タバブックス
『「あいだ」の思想』高橋源一郎 辻信一 大月書店

この本棚の中から、特に辻山さんが今オススメしたい本についてコメントいただきました。

 

困ったことも楽しいことも。まるで友達とおしゃべりしているように

辻山さん:
「韓国の作家さんの書籍は、最近書店でもよく見かけると思いますが、読んでいて別の国の話とは思えない、親近感のわくものが多いです。

この本は、ソウルに住む女性ふたり(そして猫たち)が共同生活するなかでの出来事を綴ったエッセイ。ともに暮らす中で、相手と自分はやはり違う人間なんだと感じる、困った出来事も起きて、感情がぶつかり合って喧嘩することもしばしば。でも、ふたりは、それをひとつひとつ考えて、またいっしょに暮らしていくんですよね。

ふだん私たちが暮らしていく中でのモヤモヤを、このふたりも同じように悩んでいて。等身大の飾らない姿にきっと共感できるはず。

気の合う友達とおしゃべりしながら、自分の暮らしを振り返るような。そんな本です」

『女ふたり、暮らしています。』キム・ハナ ファン・ソヌ CCCメディアハウス

 

それぞれが、それぞれらしくて。それが愛おしい

辻山さん:
「おすもうさんっていうと、大相撲の力士のイメージがあると思うのですが、実は世界中にいて。

少年たち、女子高校生、スーパーマーケットを切り盛りするおじさんたち。年齢・性別・国籍も関係なく、いろんな人が同じようにまわしを締めて楽しんでいる競技、それが相撲なのだそうです。

『多様性』のようなかたい表現を使わなくても、それぞれがそれぞれらしく生きていて、一生懸命に楽しんでいる姿が素晴らしく魅力的だということ。そんなステキな世界もあるということを、相撲を通して伝えてくれています」

『世界のおすもうさん』和田靜香 金井真紀 岩波書店

 

家族だからって、何でも話せるわけじゃない。誰もがきっと共感する物語

辻山さん:
「生きていると、悩みって大なり小なり様々ありますが、すべて家族に話せるかというと、話せないこともありますよね。一緒に家族として暮らしているからって、わかりあえない部分はあるものです。

この小説では、お母さんと娘と息子、それぞれが問題を抱えた家族の物語が描かれています。その問題がとてもリアルで、誰しもが抱えているような悩みなんです。

物語の中盤から後半にかけて、登場人物それぞれの言い合いがはじまります。家族とはいえ同じ人間ではないからすべてを理解できなくても、お互いにわかり合うきっかけになり、自分だけが抱えていたものをさらけ出すことで、心の負担が少し軽くなっていく。読んでいて、まるで自分が体験していることのように感じます。

家族でも他人でも、結局はひとつひとつ言葉を尽くしながら、少しずつわかりあっていくしかないのだと、身につまされるような、それでいて深く納得もできるストーリーです。

ぜひ、いろんな方に読んでほしい一冊です」

『だまされ屋さん』星野智幸 中央公論新社

 

自分の殻から、はみだしてみる

辻山さん:
「文化人類学者の松村さんが、文化人類学ってどんな学問かというのをやさしく解説しながら、『つながり』と『はみだし』をテーマに、さまざまな違いのあるわたしたちがともに生きるための方法を紹介している本です。

日本で暮らしていて、当たり前だと思っている習慣や行動って、別の社会や国では当たり前ではないのこともたくさんあって。

人生を重ねていくと、自分自身の経験やひとつの考え方に凝り固まって、違う意見や人のことを受け入れなくなることも多いのですが、そんなモノの見方を、やさしく、はみだすように変えてくれる一冊です。

たとえ違っていても、そこから歩み寄るためのヒントが散りばめられていて。自分が変わることができると思えば、いくつになってもワクワクするでしょうし、それは生きる希望を持たせてくれるものでしょう」

『はみだしの人類学』松村圭一郎 NHK出版学びのきほん

***

辻山さんが選んだ本たちは、ジャンルこそさまざま。でも、共通して「自分の暮らしも、誰かの暮らしも、愛おしく感じられたら」そんな願いが聞こえてくるように感じました。

つづく後編は、「夜の時間」がテーマの本棚をお届けします。どうぞお楽しみに。

 

【写真】平本泰淳


 

もくじ

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辻山 良雄

本屋「Title」店主。書店「リブロ」勤務を経て、2016年1月、東京・荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店Titleをオープン。新聞や雑誌などでの書評、カフェや美術館のブックセレクションも手がける。著書に『本屋、はじめました 増補版』(ちくま文庫)、『365日のほん』(河出書房新社)など。新著は『小さな声、光る棚』(幻冬舎)。
title-books.com


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