【45歳のじゆう帖】未来に想いを馳せること

ビューティライターAYANA

先のことがなかなか考えられない

人間という生き物は、現時点では200歳とか300歳まで生きることは不可能なわけで、必然的にそれなりのところで寿命を迎えます。

最近は「人生100年時代」という言葉をよく耳にしますが、私は過去に夏木マリさんがご自身のエッセイで「私は欲張って自分の人生を80年と考えている」と仰っていたことが心に残っていて、それ以来、自分の人生もそんな感じかなと思っています。100年あるという感覚はまだないです。

夏木マリさんは80までの人生、この地点でこういうことをする、などしっかりとしたプランを立てられていたように記憶していますが、私はそのようなことは全くできておりません。終点だけ真似して設定してみただけ。

息子が生まれたときには「この子が20歳になる頃、私はもう60歳になってしまうのか」ということに気づき、60歳までは仕事をしなければ、神様どうかお願いします……!とは考えました。

それなら「45歳でこういうことをやって、50歳でこういうことをやって……」と段階的なプランを立てればいいものを、特定の宗教を信仰しているわけでもないくせに神頼みに終わってしまうという、やや情けないことしかできていないわけです。

未来のことは考えられてせいぜい5年先が限界です。それ以上先のことは、もうあまりに遠すぎて考えられない、と思います。ですが5年前や10年前について考えるとき、昨日のように最近に感じてしまうという事実があります。

ということは5年後や10年後もすぐにやってきてしまうはずではありませんか。なぜ想像できないのか、自分でも不思議です。

若い頃を振り返ってみると

学生のころや会社員のころ(私は35歳からフリーランスです)は、いつも将来について焦っていました。自分には何が向いているのかとか、こんな毎日を送っていていいのだろうかとか。漠然とした不安と焦りがあり、何一つ決定事項がなく、自分の無力さに打ちひしがれていたものです。

当時と比べれば、今は自分ができることやできないことがそれなりにクリアに見えているため「自分には何が向いているのだろうか」といったことにはそこまで悩みませんが、それでも基本的なスタンスは全然変わっていないな、という気がします。

未来がわからない。そして自分には何もない、という感覚。若いころは、これを自分の無力さや才能のなさの象徴と受け取っていました。でも今は少し違っていて、だからこそなんでもできる可能性が残されていて、扉を開けるまでどうなるかわからないということについての期待や興味、そんなものを思い描けるように多少なった気がします。

以前別の回にも書いた気がしますが、若い頃の私に、今の自分の職業やライフスタイルはとてもじゃないけれど想像できなかったと思います。

それを選ぶ、選ばないというレベルではなく、自分の脳内に、今の自分を思い描く語彙が少しもなかったということですね。

それは今の私からすれば幸運だったと思います。もちろん未来の理想をクリアに、鮮明に思い描き、それに向かって努力することはとても素晴らしいことです。ですが、もし過去の私の理想がはっきりと固まっていたら、今の私は存在していなかったでしょうし、未知のことに飛び込んで得られた沢山のものが、今の私の糧になってくれているからです。

満足している感覚を忘れない

最近「まあまあいい人生だったな」と思うことがときどきあります。設定した人生80 年が終了するまではまだ間があるのですが、現時点でも、結構色々なことをやらせてもらって幸せな人生だったと言えるのでは、という朧げな満足感に包まれることがあるのです。

正直、わからないながらに、未来を設定できないながらに、私はこれまで上り調子で人生を歩んできたと思います。それは成長ということでもあるし、わかることやできることがどんどん増えていくということでもあります。

ですがこの上り坂の感じが、たとえば10年後、20年後同じ感じで続いているとは思えません。

私は30代の中盤ではじめて恋愛において「振られる」という経験をしました。片想いをしても相手にされないという経験はありましたが、パートナーになった人に「振られる」という経験がそれまではなく、そのときは本当に落ち込みました。

でも、結果として人の心について知るいい経験になったし、それによって私の想像力や理解力には幅が生まれました。「振られたことがない」という記録(?)は破られましたが、それは瑣末なことで、経験から得られるもののほうが私にとって価値があったということです。

これと似たようなことが、今後の人生に起こるのではないか、という気がなんとなくしているんです。上り調子の記録が破られるような経験が。

でも、上り調子であることに固執する必要は全くなくて、また別の経験から学ぶことがきっと沢山あって、それによって人生が豊かになって、結果また別の色彩が加わった「まあまあいい人生だったな」って思える時が来るのではないか。今は朧げにそう思っています。

あとは、これからの人生は自分のことだけを考えていたらだめだろうなということもよく思います。私はもうじゅうぶん良くしてもらったので、ここからどんな風にそのいただいたものを還元していくのかを考えていく必要があるなと。

未来について考えるとき、そんなような朧げなことしか思い描けないのは、本当に相変わらずというほかありません。

 

【写真】本多康司

 

AYANA

ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang  http://www.ayana.tokyo/

 

AYANAさんに参加してもらい開発した
KURASHI&Trips PUBLISHING
メイクアップシリーズ

AYANAさんも立ち会って制作した
スタッフのメイク体験
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