【今日も明日もおしゃれ】第1話:年齢の変化をおしゃれで楽しむアイデア
ライター 藤沢あかり
自分の体型にちょうどいい洋服に出会えたときや、髪がいつもよりきれいにまとまったとき。新しい色のネイル、歩きやすくてかわいい靴。
おしゃれを楽しむ心は、日常の温度をほんの少し上げてくれます。それはきっと、リボンひとつで特別な自分になれたあのころと同じはず。
大人になったいまも、心にリボンを結ぶように毎日のおしゃれを楽しみたい。同時に、いまの気分にあったバランスやテイストも見つけたいものです。
そこで訪ねたのは、小さな工夫を取り入れながら毎日のおしゃれを楽しんでいる、イラストレーターの堀川波さん。50歳の節目を迎えた堀川さんに、いまの気分とおしゃれについてお聞きしました。
歳を重ねる変化も「成長」のひとつ?
イラストレーターの堀川波さんは、夫と高校生の息子さんとの3人暮らし。この秋、社会人の娘さんが独立し家を出たばかりです。
堀川さん:
「子どもたちの手が離れてきたこと、自分の体に変化が見えてきたことで、ここ数年、おしゃれも暮らしもガラリと変わってきました。
年齢による体の変化というとネガティブに聞こえますが、赤ちゃんの成長と同じだと受け止めています。いまの変化も成長のひとつ。そう思うと、ちゃんと生きている気がするし、変わることをおもしろいと感じられます」
その変化に力を貸してくれるのが、おしゃれの存在です。堀川さんは、どんなふうに取り入れているのでしょう。
ワンピースを味方につけて、着こなしの主役に
おしゃれや着こなし、と聞くと、重ね着や上下の組み合わせを変えながら、着まわしたりアレンジしたり……と想像しますが、堀川さんのスタイルはワンピースが中心だとか。
堀川さん:
「年齢とともに、腕やお腹まわりなど、気になる部分が増えてきて最近はもっぱらワンピースばかり。上下に分かれた服はほとんど着なくなりました。このワンピースは、丈やサイズ感、袖の長さやちょっと遊び心のあるディテールなど、気に入ったポイントがたくさん。買い足しながら、結局3枚揃えてしまいました」
マンネリコーデに、小物で変化を
一枚で着こなしが決まるワンピースですが、ちょっとマンネリになることも。特に目立つ色は印象も強く、また同じ服だと思われてしまうかな?と気になっていました。
堀川さん:
「ワンピース好きなら、ぜひベストを取り入れてみませんか。
この黒いベストは、バックスタイルがかわいくて手に取ったのですが、買って大正解。すごく活躍しています。駅ビルに入っていたショップで1500円ほどだったんです。流行のスタイルも、これなら気軽に試せますよね。
いまは服を買う場所も自由に選べます。若い子だけの場所と敬遠せず、カジュアルなショップもリサーチがてらパトロールしています」
いまの自分に「一番しっくり」を見つけるために
6分丈の袖やすっきりとした胸元、ゆったりとしつつもボリュームの出過ぎないシルエットなど、だんだんと自分の思う理想のワンピースが明確になってきたころ、堀川さんはさらに追求する試みを始めました。それがハンドメイドです。
堀川さん:
「わたしがデザインを考えて、洋裁が得意な友人に仕立ててもらっています。お店で、自分の好みや悩みにしっくりくるワンピースを探す楽しさも大好きですが、悩みがあるなら、とことん自分たちが似合うものを作っちゃえばいい!と、形にしたんです」
腕をあまり出さず、でも動きやすさはキープした袖口のデザイン。あきすぎず、つまりすぎない程よい胸元。ゴムを入れつつも、絞りすぎないウエストのフィット具合など、いまも微調整を重ねているところなのだとか。
堀川さん:
「だんだん、二の腕を出すのをためらうようになってきて、半袖、5分丈ときて、いまは6分丈くらいがちょうどいい気分です。胸元もスッキリ、でもだらしなく見えないように気をつけています」
白髪の悩みが、新しいおしゃれのきっかけに
これまでは原色やベージュなどの明るい服は苦手だと感じていた堀川さん。いまは、赤やベージュ、イエロー、グリーンなど、薄い色、カラフルな色も積極的に着こなします。そのわけは、髪の色にありました。
堀川さん:
「少し前に思い切って白髪染めをやめました。代わりに、ブリーチ(脱色)して明るい色を入れてみたんです。そうしたら、ぐんと印象が変わり、ちょっと攻めた色やデザインも楽しめるようになりました。
白髪染めは黒や茶色などの濃い色をしっかりいれるので、ずっとその色が続きます。でもブリーチをしたあとヘアカラーを入れると、少しずつ退色していくんです。その変わっていく様子に、毎日鏡を見るのがすごくおもしろくて、ちょっと実験みたいな感じかな。ブラウンのなかにもピンクや緑がかったものがあり、黒く染めていたころにはできなかったニュアンスを楽しんでいます」
ちなみに取材当日は、カラーを入れた直後。室内では落ち着いた色のように見えても、日に透けると軽やかに感じるのもブリーチの特徴です。
堀川さん:
「どうしても傷みは避けられませんが、短いスタイルを保つことでカバーしています。それよりも、ブリーチしている自分が楽しい!って、明るい気持ちでいられるほうが大きいです。これまで、白髪染めや天然染料のヘナなど、いろいろ探したり試したりしましたが、隠すよりもぼかして楽しむほうが、いまの自分に合っているみたい。
家族や友人からも好評で、特に同世代の友人からの反応は大きかったですね。みんな気になっているんだと実感しました。いまは、髪が傷みにくいヘアアイロンやドライヤーが気になっています」
悩みがあるからとクヨクヨするのではなく、じゃあどうしよう?と小さな工夫を重ねている堀川さん。次回は、おしゃれを変えた暮らしについてお聞きします。
【写真】滝沢育絵
もくじ
堀川 波(ほりかわ・なみ)
1971年大阪生まれ。イラストレーター、手工芸作家。等身大の暮らしや気づきをイラストやエッセイで綴るかたわら、各地に郷土玩具や手仕事を伝える活動も。『48歳からの毎日を楽しくするおしゃれ』(エクスナレッジ)、『かわいい背守り刺繍』『籐で作るアクセサリーと小物』(ともに誠文堂新光社)など、著書も多数。Instagram:@horikawa._.nami
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