【60平米の住み続けたい家】2話:奥行きのあるカウンターがポイント。家事がはかどる“独立型キッチン”のつくり方
ライター 大野麻里
今回おじゃましているのは、「アフタヌーンティー・ティールーム 」で商品開発の仕事をしている坂下真希子さんの自宅です。
15年前に築50年を超えるヴィンテージマンションの一室を購入し、リノベーションした坂下さん夫婦。その後、家族が増え、現在は中2の長男、小2の長女と家族4人で暮らしています。
約60平米の部屋に4人で暮らす工夫を教えていただいた1話に続き、2話ではキッチンにクローズアップ。坂下さんが “私の居場所” と話す、お気に入りの場所を見せていただきました。
奥まったキッチンは “私の居場所”
▲リビングダイニングから見たキッチン。壁の鏡にはダイニングテーブルが映っている
坂下家のキッチンは、大きなL字型の窓がある2面採光。光がたっぷりと差し込む明るい空間になっています。
近年はリビングに対面しながら作業できるオープンキッチンも人気ですが、クローズドな独立型キッチンにした理由はあるのでしょうか?
坂下さん:
「マンションの構造上、キッチンはこの場所しか選択肢がありませんでした。でも、私はこの位置がすごく気に入っているんです。
独立型キッチンのいいところは、ひとりになれるところ。リビングダイニングとつかず離れずの位置にあって、完全に個室というわけでもないから、家族の気配を感じながらもプライベートな空間を保てる感じなんですよね」
▲キッチンの窓から見える桜の大木。春を迎えて満開になると、花びらがふきこんでくることも
坂下さん:
「リビングは共有の場なので何か買うときや変えるときは家族と話し合って決めますが、キッチンはほぼ私の趣味だけでつくった空間。家族の誰にも何も言わせず(笑)、心地よく過ごせる “私の居場所” なんです。
椅子を置いてキッチンカウンターをテーブルがわりにして、ここでひとりの時間を過ごすこともあります」
結果的に大正解!カウンターの奥行きを10cm広げた理由
キッチンのリノベーションにおいて「こうしてよかった!」と感じている場所はありますか?とたずねると、坂下さんの答えは「作業台にもなる背面カウンター」でした。
スペースが限られていることもあり、当初はオーブンレンジが置けるギリギリの奥行き(45cm)で考えていたそうですが……。
坂下さん:
「私は、通路を広くとったほうがいいと思っていたんです。けれども、建築家さんがよく料理をされる方で、『作業台はこれぐらい奥行きがないと中途半端になる』『もうちょっと広かったら大きめのお皿が置けたのに……と思うことがあるはず』と説得されて。
当初の希望から10cm引き出して奥行き55cmになりました。結果、それが大正解! 作業台としても使えるし、システムキッチンから振り返って手の届く距離も便利。通路は狭くなったことで、むしろむだな動きがありません」
この広い作業台のおかげで、緊急事態宣言中に突然リモートワークになったときも仕事スペースを確保できたのだとか。
坂下さん:
「夫はもともと在宅で仕事をしているし、子どもたちも学校は休みだし……。家が狭く、仕事ができる場所がなかったんです。
そんなとき、私はキッチンで仕事をしてみることに。窓があるから気持ちがいいし、意外と集中できて『あれ?いいかも』って。いまでもここに椅子を置いて、メールを返したり、iPadで動画や映画を観たりして過ごすこともあります」
「しまい込むと忘れちゃうから」扉のないキッチンに
リノベーションの際に、リクエストしたのは “隠したくない”キッチンでした。
坂下さん:
「しまい込んでしまうと何がどこにあったか忘れてしまうので、パッと目に見える収納にしたかったんです。扉のある収納はできるだけなくし、オープンなラックを希望しました。
壁に設置したのは吊り戸棚ではなく、IKEAのステンレスラック。鍋や包丁などの道具がすぐ手に取れるようにしたくて。ちょっとした棚をつくっていただき、そこに調味料やキッチンツールを並べています」
システムキッチンは、懐かしのナショナル製(廃盤商品)。コンロ下の引き出しはステンレスラックのようになっていて、通気性がいいところもお気に入り。上から全体が見渡せるのも、使いやすいそうです。
坂下さん:
「その建築家さんは頻繁に料理をされる方で、現実的なアドバイスをたくさんくださいました。『タイルの目地は油汚れが気になるからグレーにしたらいいよ』と言われて。これもその通りにして大正解でした」
“篭れるキッチン”は、家事を効率的に回してくれる?
▲取材日は週末だったので子どもたちとランチ。お揃いのギンガムチェックの服は義母のお手製
平日は共働きの坂下家。お話を聞いていると、平日の夕飯はちょっと変わったルーティンがありました。
坂下さん:
「夕飯は、前日につくり置きしたものを温めて出しています。夫と子どもが食べ終わったら、洗い物をして、翌日のおかずを仕込んでから、私はひとりで夕飯をつまみます。
全員でテーブルを囲んで夕飯を食べるのに越したことはないですが、私も働いていて帰宅は夕方になるし、子どもは成長とともに塾や習い事があって。平日に家族そろって夕飯を食べることが難しいんですよね。
子どもたちもお腹が減っているから、一品ずつ出すとメインを先に食べちゃって副菜を食べてくれないことも。バランスよく食べてもらうためにも、事前につくっておいたものを一気に出したいんです」
▲キッチンからリビング側を見た眺め
坂下さん:
「前日におかずを用意しておけば、仕事から帰宅したあとの心の余裕も違います。子どもの勉強を見る時間もとれるので。
私は翌日の夕飯を仕込みながら、キッチンでちょこっと立ち飲みをすることも。家族の気配を感じながら、料理に集中したり、自分だけのひとときでホッと息抜きできたりするのも、この独立型キッチンのおかげですね。
子どもを見つつ、飲みつつ、作りつつ……。毎日忙しくて慌ただしいからこそ、いまはこれがちょうどいいんです。必ず毎日というわけではないですが、平日は大体こうやって回しています」
キッチンに立つ時間が、自身のリフレッシュにもなっているという坂下さん。ものの配置も、時間の使い方も、たくさんの経験を経て積み重ねたもので、説得力がありました。
続く3話では、限られた空間を最大限に生かす、キッチンを中心とした収納プランについて伺います。
(つづく)
【写真】北原 千恵美
もくじ
坂下真希子(さかした まきこ)
アフタヌーンティー・ティールームに勤務し、焼菓子などの商品開発を担当。自営業で働く夫と14歳の長男、8歳の長女の4人家族。ウェブサイト「外の音、内の香」では「〈毎日パンとサラダ弁当〉ときどき〈山生活日記〉」を連載。料理好きが高じて、著書『パンによく合う かんたんサラダ弁当』 (立東舎) も上梓。インスタグラム(@donuts1010)も人気。
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