【壁の余白にポスターを】第1話:インテリア初心者さんも手軽に。暮らしの景色を変えるアートポスターとの出合い

編集スタッフ 岡本

壁の「余白」になにを飾ろう?

今年の春、リビングダイニングに一枚のアートポスターを迎えました。

扉や作り付けの棚など全体的に白を基調としたインテリアで、壁付の家具もあまりないからか、ところどころある真っ白な壁の余白が気になっていたのです。

「ここになにか飾りたい」

そんな思いから、子どもが書いた絵や旅行で撮った写真を飾ってみたけれど、なんとなくしっくりきません。結局、壁は空白のまま数ヶ月を過ごしていたとき、ストックしていたインテリア写真のなかに映るアートポスターが目に入りました。

それまで「アート」と名のつくものはなんとなく難しいイメージがあって選択肢にも挙がらなかったけれど、一枚のもつ存在感がちょうどよい気がして好奇心は高まる一方。

さっそく調べてみると都内に専門店があることを知り、 週末家族で出かけてみることに。

小さな子どもを連れて入っても大丈夫だろうか? 分からないことだらけだから色々聞きたいけど、店主さんはどんな人だろう?

少しの緊張と大きな期待を胸に扉を開けると、一人の男性が朗らかな笑顔で迎えてくれました。

 

初めてのアートポスター選び

「気になるもの、お好きに見てくださいね」

想像していたよりもずっとカジュアルな雰囲気にホッとすると、目の前のポスターたちが急に色鮮やかに感じられます。

店内には壁や床に飾ったり、見やすいように重ねて置いたり、ざっと見渡しても数百種類のポスターがずらり。水彩タッチの風景画や人物画、幾何学デザインや北欧の景色を写した写真までさまざまなジャンルのポスターを見ることができました。

夫と相談していくつかの候補に絞ったものの、そこから最後の一枚を決めるのに難航していると、店主の方が相談に乗ってくれました。

インテリアにアクセントとして飾りたいのか、馴染ませたいのか。落ち着いた雰囲気が好みか元気をもらえる色のあるものが好みかなど、会話を重ねることで私たち自身、求めるもののイメージのすり合わせができたのです。

そして候補に挙がったポスターについても、どこの国のどんな時代に書かれたものか、作品の生まれた背景について物語のように話してくれたことで、平面だったポスターに奥行きを感じ、「この一枚しかないね」という気持ちで決めることができました。

念願のポスターを迎えられた嬉しさはもちろん、このお店での体験含めて新しいことに触れる面白さを感じられた日として思い出に残っています。

▲選んだのは、フランスのプロダクトデザイナー ロナン & エルワン・ブルレック兄弟の兄 ロナン・ブルレックのポスター「Drawing Poster 15」。

▲繊細なラインや絶妙な色の重なり具合に引き込まれる一枚です。

それから数週間後、選んだポスターがぴったりの額に収められてわが家にやってきました。空白だった壁に色やリズムが宿ったようで、暮らしのなかでたびたび目にしては不思議なパワーをもらっています。

この一枚をきっかけにアートポスターの面白さを実感。

これからも少しずつ大切な一枚を増やしていけたらと思いつつ、まだ分からないことや聞きたいことがたくさん。そこでこの特集をとおして、アートポスターの気になるところを全3話でお届けします。

お話をお聞きしたのは、一歩を踏み出す背中を押してくれたKNAPFORD POSTER MARKET(ナップフォード・ポスター・マーケット)の井上恭太(いのうえきょうた)さんです。

 

1枚のポスターで暮らしの景色を変えて

井上さん:
「この店はウェブデザイナーでもある弟・慶太が始めたオンラインストアとして、2014年にオープンしました。

私自身は当時まったく別の仕事をしていてアートについての知識はゼロだったけれど、声をかけられて一緒にやることに。実物を見て選びたいというお声に応える形で実店舗を構えて8年目です。

当初は弟がバイイングを、兄である私が接客という役割分担でした。何もわからないところからのスタートだったけれど、ポスターを見にきてくれたお客さんと話すために時代背景やアーティスト本人について調べてみるとそれがすごく面白くて。

今は買い付けたギャラリーからある程度の情報はウェブで確認できるのですが、オープン当時はそれが難しかったんです。1枚の情報を集めるのに数時間かかることもありましたが、ポスター文化の奥深さを感じたりお客さんの反応を想像したりして、その時間も楽しんでいたように思います」

井上さん:
「ポスターは人の目線の高さに飾るもの。だから生活していると自然と目に入りますよね。

何もなかった壁に色が加わるだけで、暮らしの景色が変わる。それってささやかな変化だけど、生活を豊かにすると思っています。

私が初めてアートポスターを飾ったときに感じたその力を、お客さんにも届けられたら嬉しいですね」

 

アート初心者だからこその、面白い出合いも

井上さん:
「当店では、常時300枚ほどのポスターを扱っています。

さまざまなデザインがありますが、そのどれにも共通しているのは、パッと見たときに引き付けられるかっこよさ。海外のギャラリーへ行って買い付けをするときは、直感を信じて選んでいます。

なのでお客さんにもぜひ自分の感覚を信じて選んでもらえたらと思うんです。アートに詳しくなくて大丈夫。頭を空っぽにして選ぶ方が可能性が広がって、面白い出合いに恵まれることもあります。

いいなと思うものをいくつか選んでそこから1枚を決めるのに迷ったら、僕らの出番。アーティストの思いやインテリアの雰囲気をおしゃべりするなかで、納得できる1枚を一緒に選びましょう」

アートにまつわるお店は勝手に縁遠い場所だと思い込んでいたけれど、一歩踏み入れてみたらこんなにも面白く、気軽に楽しめることを知ってますます興味が湧きました。

つづく第2話では、インテリア実践編をお届け。アートポスターの種類から、初めての1枚におすすめのデザインや大きさなどについてご紹介します。

(つづく)

【写真】上原未嗣

 

もくじ

井上 恭太

東京・参宮橋にある輸入ポスター専門店『KNAPFORD POSTER MARKET(ナップフォード・ポスター・マーケット)』のオーナー。20代前半から約20年ほど劇団にて俳優として活動後、兄弟でポスター専門店を始める。弟・慶太さんがバイヤーを、兄・恭太さんがショップマネジメントを担当している。HPはこちらhttps://knapford.com/ Instagramはこちらhttps://www.instagram.com/knapfordpostermarket/


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