【暮らしのみずうみ – 松本便り】第2話:「自分たちで直して住む」を選んで、ひらいた扉
ライター 桒原さやか
今住んでいる家は、築43年の和風中古物件。2年半ほど前に家を買ってから、自分たちの手で少しずつ直しながら住んでいます。
スウェーデン人の夫は簡単なDIY経験はあったものの、家をリフォームするのははじめて。わたしに関しては、まるっきりの素人。そんな状態からのスタートだったので、手を動かしながら学びながら、進めていくという感じでした。
見よう見まねで塗った漆喰はところどころヨレたり、でこぼこしていたり。畳からフローリングに張り替えた床はちょっとゆがんでいるし、ペンキがはみ出ているところもちらほら……。
作業当時は、あぁー!と声が出るくらい落ちこんだものの、今ではあちこちにある失敗の跡も可愛く見えてきて、そんな自分の変化にもびっくり。それくらい、ここ2年間、必死に試行錯誤してきた証拠なのかなぁと思っています。
DIYの中でも、とくに腰が重かったのが、庭の奥にあるガレージ。
ガレージのシャッターは、常に閉まっている状態。がらがらと開けると、昼でも薄暗く、湿っぽい感じ。ムカデがささーっと移動していているのを見かけて飛び上がることもありました。立ち寄っては、小走りで出ていく。
自分の家なのに、見るたびにちょっと気持ちがしずむ場所でした。
さて、この場所をどうしようか……?
夫と何度も作戦会議をした結果、見えてきたのはこんなことでした。
・BBQや庭仕事、タイヤなどの道具をしまう場所は必要。
・ガレージを明るくして、気持ちよく使える場所にしたい。
悩みに悩んだ末、入り口のシャッターは思い切って外すことに。中まで光も届きやすくなると期待したことがひとつ。もうひとつは、庭も広く感じるのではないかと思ったからです。
ガレージ内を明るくするために、床はグレー、壁は真っ白のペンキを塗ることに。天井はところどころサビが出ていたので、サビ止め材をつけて補強しました。
道具類をしまう場所をつくるために、イケアで棚をオーダー。ゴミ箱やBBQグッズ、庭仕事の道具などを収納しました。床にラグを敷いて、テーブルと椅子を置いてみたら、なんだかいい感じになってきたような……。天井にランプをつけたら完成です!
見て見ぬふりをしていたガレージが、今では通るたびに嬉しくなる場所になって、小躍りしたい気持ちです。
「住んでいる場所が少しずつよくなっていくって、こんなに嬉しいことなんだねぇ」
夫がぽつりとつぶやきました。チラッと夫の方を見たら、やりきったようないい顔をしています。
自分たちの手で家がよくなっていく。
よくよく考えてみたら、これは人生ではじめての経験でした。ひとつひとつ部屋ができていくごとに、不思議と自信がついてくるんです。
これができたなら、今度はこっちを試してみようか? あれもできるかも?
そんな感じにイメージがどんどん膨らんでいきます。たとえ壊れてしまっても、自分たちで直せる。ここらへんを直したらいいのかもと察しがつく。
これは家を持つ上で頼もしい気持ちにさせてくれることを知りました。大げさかもしれませんが、生きる力を身につけている感覚に近いような気がします。
わが家の場合、自分たちで直すという選択をしたのは、金銭的な理由が大きかったけれど。
そのおかげで、新しい世界の扉がじわじわと開いていくのを感じています。
ライター・エッセイスト。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。冬の旅行で訪れたノルウェーの北極圏にある町、トロムソに一目惚れし、スウェーデン人の夫と共に、2016年6月〜2017年11月まで住んでいた。現在は長野県松本市在住。著書に『北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし』(ワニブックス)「家族が笑顔になる北欧流の暮らし方」(オレンジページ)
instagram:@kuwabarasayaka
撮影:清水美由紀
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