【暮らしのみずうみ – 松本便り】第4話:夫が買い物上手な理由。
ライター 桒原さやか
今まで数々の、買い物にまつわる苦い思い出があります。
古着屋さんで一目惚れした、ハッとするようなピンク色のシャツ。
買おうかどうか、店中ぐるぐるまわって悩んだあげく、購入することに。ところが、着ているとなんだかそわそわしてしまい、思い切って買ったわりに出番がほとんどありません。
その他にも、数回使ったきりで棚に眠っている台湾茶器セット、使い道がみつからずオブジェのように飾られているカゴたち……。考えはじめると、ぽろぽろと思い浮かびます。
そのときの直感やトキメキを大事にしたいと思いつつ、これ買ってよかった〜!と、心から満足のいく買い物ってなかなかむずかしいものです。
それと比べて、スウェーデン人の夫は買い物に関してかなり合理的。
衝動買いもほとんどなく、必要なものをさくさくと買っていくスタイル。洋服はとくに顕著で、靴からシャツやズボン、セーターに至るまでひと冬に必要な分を1日で全部買ってしまうこともめずらしくありません。
もっと時間をかけて、いろいろ見てから選べばいいのに……。よく、そう思います。でも、後からあっちがよかったんじゃないかと迷うこともなく、買い物のことは忘れてしまうくらいのさっぱり具合は、見ていて羨ましくもあるのでした。
わが家では家族の共有スペースに置くモノは、ふたりが気に入ったものにするのがルール。ほしいものがあったら意見を聞いて、お互いに合意したら購入することになってます。
直感的なわたしと論理的な夫。買う、買わないで揉めたことも、一度や二度じゃあありません。
何度もやりとりしているうちに分かってきたのは、夫とはそもそも「ほしい」の出発点が違うこと。
わたしの場合、「この椅子かわいい! あそこに合いそう!」がスタートだとすると、夫は「この部屋でどう過ごしたいか」を考えるところから始まるようなんです。
わたしの考え方だと、この椅子を夫が気に入らなかったら、話はそこで終了。せっかく見つけたのに……と、何度これでムッとしたことでしょうか。
ところが、夫の考え方でいくと、たとえ椅子がダメでも、話はそこで終わりません。
「家族の会話を楽しむ部屋にしたい」という目的があるなら、「この椅子じゃなくても、家族みんなで座れる大きなソファもいいかもしれない」。こんなふうに、すんなりとは言いませんが、発想を切り替えることができるのです。
「それなら、ソファは向かい合わせに置いたほうが話しやすそうだね」、「家族の部屋なら、思い出の写真を飾るのもいいね」などといった具合に、どんどんアイデアが広がり、イメージもはっきりしてきます。
あぁ、そうか、こうやって考えているから、夫は買い物にあまり失敗しないのか……。そんなことにようやく気がついたのでした。
今ではわたしも家のことを考えるときに、まずは「どう過ごしたいか」を考えるのが癖に。ちょっと視点を変えるだけで、買い物に目的意識が生まれ、夫との小さな揉めごとも減りました。
買い物に失敗するときは、だれかの暮らしに憧れる気持ちが強すぎたり、こう見られたいと思う自分がいたり。今の「自分の暮らし」が見えてないときなのかもしれません。
買い物といえば、ここ最近のいちばんの悩みは洋服。
ただいま、40代一歩手前。何を着てもしっくりこないんです。今までも同じような状況はあったものの、1ヶ月もすれば抜け出していたのに。今回は髪型を変えてもうまくいかず、洋服迷子な状態が半年以上続いています。
家のヒントが「どう過ごしたいか」を考えることならば、洋服でいうと、「自分がどうなりたいか」ということでしょうか。
この長いスランプを抜け出すヒントは、どうやらそこにあるような気がしています。
ライター・エッセイスト。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。冬の旅行で訪れたノルウェーの北極圏にある町、トロムソに一目惚れし、スウェーデン人の夫と共に、2016年6月〜2017年11月まで住んでいた。現在は長野県松本市在住。著書に『北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし』(ワニブックス)「家族が笑顔になる北欧流の暮らし方」(オレンジページ)
instagram:@kuwabarasayaka
撮影:清水美由紀
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