【暮らしのみずうみ – 松本便り】第6話:この家が好きな理由。
ライター 桒原さやか
先日、夫と息子と3人で、友人の家に遊びに行ってきました。お邪魔したのは、10月に完成したばかりの新築の家。
ピンポーンとインターホンを押し、わくわくしながら玄関の扉を開けると、木のい〜い香り。ぐるっと見渡してみると、フローリングも壁の木も、どれも真新しくて明るい色をしています。
リビングの天井には、大きな梁が二本。「立派だねぇ!」と思わず声が出る私。階段の飾りになっている黒の格子は、特別に作ってもらったものだとか。大きな窓があり、太陽の光がたっぷり入る部屋はエアコンだけで十分暖かく、キッチンも収納が豊富で使いやすそう。ふたりがこだわって作った家だというのが、あちこちから伝わってきます。
「家っていいね」
友人の口から、思わずこぼれた言葉が頭に残ります。こちらまで嬉しい気持ちになって自宅に帰ってきたのでした。
ガラガラガラ。
玄関の扉を開けると「さぶーーい」と、息子。
わが家は築43年の純和風の中古物件。古い家は隙間もあるし、一度冷えたら、あたたまるのにも時間がかかるのです。特に朝の寒さは厳しく、毎朝布団から出るのも勇気が入ります。また、夏になると、今度は虫。サッシの隙間から、ムカデやカマドウマがひょいっと家に入ってくるので、常にどこか気を張っています。
エアコンで十分暖まり、虫の心配もいらない、友人の家と比べると、問題だらけな気がしてくるわが家……。
私たちはこの家がすごく好きなんだけどなあ。
そこで、ふと、「なんでこの家が好きなのか?」考え始めたら、うーんと悩んでしまい、なかなか答えが出そうにありません。
夫に聞いてみると、日本の古い家が好きだから、自分が住めるなんて夢みたいとのこと。もちろん、古い家の持つ味わいも好きだし、この土地も、家から見える景色も気に入っているけれど。「これが答えです」と言うには、どれもしっくりこない気がするのです。
そんなことをぐるぐると考えていたら、東京から縁もゆかりもない福岡へ移住した友人のことを思い出しました。
「なんで福岡に住むことにしたの?」
きっと何度も聞かれたであろう質問をすると、こんな返事がかえってきました。
「旅行で訪れたときに、この場所になんとなく住みたいと思ったの。
この土地に呼ばれている感じがしたというのかな?
どれくらい住むかも、何も決めてないんだけど、取りあえず引っ越してみようと思って」
友人を見ると、さっぱりとしたいい顔をしていて、ちょっと羨ましくなったことを覚えています。そして、それと同時に、いつも誰かに納得してもらえる答えを探していた自分に気がついたのでした。
ついつい考え過ぎてしまう私は、物事をいつも難しくしてしまうのです。答えはいつだって、自分で決めていいのに。
住みたいと思ったから、住んでみることにした。
これで十分だし、これ以上説明する必要なんて、ないのかもしれません。自分の気持ちや感覚をもっと大事にしていいし、大事にしたいな。そう感じたことを、友人の家にお邪魔したことで思い出したのでした。
ここを選んだのは、この家が好きだから。
これくらいシンプルでいいのです。
ライター・エッセイスト。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。冬の旅行で訪れたノルウェーの北極圏にある町、トロムソに一目惚れし、スウェーデン人の夫と共に、2016年6月〜2017年11月まで住んでいた。現在は長野県松本市在住。著書に『北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし』(ワニブックス)「家族が笑顔になる北欧流の暮らし方」(オレンジページ)
instagram:@kuwabarasayaka
撮影:清水美由紀
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