【商品開発の裏側】一田憲子さんと約1年かけたモノづくり。こだわりのレザーバッグ、本日ついにお披露目です!
編集スタッフ 津田
『「がんばりどきも私らしく」一田憲子さんとつくったラウンドレザーバッグ』が、本日より発売となりました!
これまでに培ったモノ選びの視点から、こだわりをぎゅっと詰めこんでくださった編集者・ライターの一田憲子さん。
一田さんのこだわりを「バッグ」の形に落とし込み、品質面でもアドバイスをくださったデザイン兼生産アドバイザーの講神いつ実さん。
当店のプランナー中居とデザイナー波々伯部を中心に、このお2人を迎えた4人チームでモノづくりをしました。
▲左から波々伯部、講神さん、一田さん、中居。この4人で商品開発をしました!
このコラムでは、約1年に及ぶ商品開発の裏側をお届けします。どうやら理想のバッグづくりは、一筋縄とは行かなかったよう。企画のはじまりから、お客様へのメッセージまで、たっぷりご紹介します。
ずっと「一田さんと何か作りたい」と思っていました
当店スタッフにもファンの多い一田さん。今回の企画は、プランナー中居が以前から温めていた「一田さんとなにか作りたい!」という思いがきっかけでした。
プランナー 中居:
「暮らしやおしゃれにあらわれている『モノ選びの視点』に、とても惹かれていました。一田さんがこれまでの取材で得た様々なエッセンスを、ご自身に合わせて上手に取り入れている様子をご著書やブログで拝見していたんです。
まずはトライして、うまくいかなければ『もっとこうしたらどうだろう?』と工夫する。それを『まねしんぼ』と呼んでらっしゃるんですよね。一田さんのそんな軽やかさを尊敬していましたし、私もそんなふうにお気に入りを見つけていきたいと憧れていました」
プランナー 中居:
「そういう一田さんが培ってきたセンスやマイルール、トライ&エラーを丸ごと盛り込めるような企画にしたい!と思いました。
どんな切り口にしようかと考えて、一田さんと言えば、雑誌『暮らしのおへそ』などの取材によく行かれるイメージがあったので『そういう大事なお仕事にも相棒のように持って行ける、毎日持ちたいバッグを一緒に作りませんか?』と、お声をかけさせていただきました」
ひと目見て可愛い!と心が動くバッグを目指して
無事にご快諾いただき、まずは一田さんのお仕事に寄り添うバッグとはどんなものかをヒアリング……と思っていたところ、最初のお返事には「バッグのデザインのプロを入れたい」と予想外のリクエストがありました。
というのも、一田さんにとって、バッグはおしゃれの決め手になるアイテム。普段アクセサリーをそんなにしないこともあって、その日の用事や会う人に合わせて服を選び、その仕上げに持つものという意識があったのだそう。
一田さん:
「毎日持ちたいとなると、シンプルだけど可愛いとか、気分が上がるとか、機能の便利さよりも、そういうものが大事じゃないかしらと思いました。
それは私だけでは無理だなぁと。軽さや大きさのリクエストは出せるけど、それをどんな形に落とし込むか、どうしたら可愛くなるのかは、さっぱりわからない……。だから、もう1人、バッグのデザインのプロを入れてくださいと、お願いさせてもらったんです」
バッグづくりのプロフェッショナルを探すなか、出会えたのが革小物ブランドa(アー)を手掛ける講神さんでした。
一田さん:
「たまたま、友人の素敵なバッグを見て『a』だと教えてもらったんです。それで『講神さんはどうでしょうか?』とお伝えしました。講神さんが作られるバッグは、なんて言うんでしょう、縦と横のバランスとかが絶妙に可愛いんです。シンプルだけど、ひと目で可愛い!と思いました」
偶然にも、スタッフにaの愛用者がいたり、すでにお仕事の関係があったり、中居たちの側でも講神さんにお願いできないだろうかと考えていたところでした。
プランナー 中居:
「私たちと一田さんの思う可愛さを、言葉ではなく感覚で共有しあえるバッグデザイナーさんとご一緒するのは肝だと感じていたので、奇跡的に双方からお名前のあがった講神さんにぜひ!と思いました。
実は、外部にデザインをお願いするのは、雑貨部門でははじめてのことなんです。当店のことや生産のことも理解してくださり、そのうえで一田さんのこだわりをデザインに落とし込んでいただける方を探し、講神さんにお願いできたことで、無事にプロジェクトが走り出しました」
デザインは「横長型」、サイズは「大は小を兼ねない」
こうして4人の開発体制ができ上がり、いよいよ商品開発も本格的に始動します。
一田さんの好みをヒアリングしつつ、講神さんのアドバイスをいただきながら、それらを元に今回のデザインの方向性を絞っていきます。
・横長型が好き
・シンプルだけどひとさじ個性があるデザイン
・なるべく軽く、持ちやすく、邪魔にならない
・肩掛けできる持ち手(冬のコートでも)
・使うほど味わいの出る革(シボ感は少なく)
・傷や汚れが目立ちにくい
・内側は中綿などクッション性がある方がいい
プランナー 中居:
「お仕事にも使えるバッグという企画ですので、私としてはパソコンやA4の書類がすっぽり収まる大きさを想定していたのですが、一田さんがお仕事のときにお持ちのバッグは、意外なほどコンパクトでした。
好きなのは横長型で、シンプルな見た目で、かっちりしすぎていないもの。肩掛けすると、とても軽くて、ちょうど腰のあたりにバッグが収まるのだそう。さらに気に入ったものは、オフの日でも持つとのこと。この方向性は、ぜひデザインに生かしたいと思いました。
とりわけ印象的だったのは『大は小を兼ねない!』という一田さんの言葉。
ずっと長財布だったのをミニ財布にするなど、年齢を重ねたこともあって荷物を軽量化されているとのことでした。『思っていたより小さくても大丈夫で、iPad、手帳、ミニ水筒、A4のクリアファイルや見本誌はちょっと曲がっても構わないから、ギリギリ必要最小限のものが収まるサイズがいい』と話してくださり、これはのちのち企画で迷ったときの大事な軸となりました」
このままではリリースできないかも……?
滑り出しは順調だったものの、途中プロジェクトが頓挫しかねない事態もありました。
もともと昨秋リリースする予定でしたが、1st、2ndとサンプルを重ねても、なかなか一田さんの「ひと目見て可愛い!」に辿り着くことができず……。プランナーの中居は迷った末、発売を延期して、もう一回追加でサンプルを作ろうと決断しました。
プランナー 中居:
「そのときは『もうどうしよう〜!』って。一田さんも迷われて、まったく別のバッグに変える案もいただいたんですが……。そうなると予算や納期など、商品開発担当としては、現実的なことも考えざるを得ず、悩みました。
何より、そのときまでに出来上がっていたサンプルが、私としては全然0点ではなかったんです。ちゃんとお客様に喜んでいただける方向になっていってる、可愛いものが作れているという手応えと、小さな希望を持っていました。
店長の佐藤にも率直なところを相談し、もう一度、今の方向性でいけないか、一田さんとお話させていただこうということになりました」
一田さんにとっては人生初めての商品企画。ベストを追求したい気持ちも、判断に迷う気持ちもよくわかります。肩の力が抜けたのは、店長佐藤も交えた話し合いで、北欧、暮らしの道具店のモノづくりについてお伝えしたことが大きかったようです。
一田さん:
「佐藤さんから『自分たちが “良い” と思えるまで粘って最善を尽くすが、それが “絶対に良い” かは発売まで分からない。お客さまにお見せして初めて本当に良かったのかどうかが分かるので、自分としては自信を持って出したものでも “あれ?” となることもあるし、その逆もたくさん経験してきた。その試行錯誤をやめないことが私たちのモノづくり』と聞いて、ガーンとなりました。
そうか、自分だけで、最初から正解にたどり着ける、何がなんでもって思うのは、えらく思い上がりだったのかも……と。もうちょっと自分を手放そうと思い、それで次のサンプルを見たら、ひと目で『めちゃくちゃいい!』って。即決でしたね(笑)」
甘さとかっこよさの絶妙なバランスを追求
晴れて最終となったサンプルは、毎日持ちたくなること・大は小を兼ねないことから、A4サイズやパソコンの収納力は優先度を下げて、『パッと見て可愛いと思えるかどうか』を重視しました。
上部はラウンドしつつ、底面をスクエアにしたことで、甘さとかっこよさの絶妙なバランスが生まれ、肩にかける持ち手を細くして引き締まった印象に。いずれも、講神さんのアイデアをいただいて調整したデザインです。
講神さん:
「私から提案させていただいたのは、ぐっと横長のバランスに振ってみましょうとか、その代わりマチはしっかり作りましょうとか、アール(角の丸み)はこのくらいのラウンド感を出して、持ち手は細くして、外側は隠しポケットにしてなど、使いやすさとのバランスを見ながら全体を調整していくことでした。
頭にあったのは、『バッグはバランスが大事』という一田さんの言葉。あれが入る・これが入るというロジカルなことではなく、ここまできたら初心に返ろうと思い、中居さんや波々伯部さんとも相談しながらそこを追求しました。
生産まわりのアドバイザーという役割もあったので、発売時期のことなどから、もうこれが最終サンプルになるだろうと考え、素材となる革選び、縫製のしやすさ、耐久性など、品質に関わることも考慮に入れて、これで工場へお渡しできるというレベルに仕上げていきました」
約1年かけたバッグがついに出来上がりました!
▲プランナー中居がひと足さきに愛用中。「きちんとした素材なので小学校の保護者会にもぴったりです。室内履きもすっぽり入りました」
けっして一筋縄ではいかなかったけれど、そのおかげで機能面や使い勝手はもちろんのこと、一田さんのこだわりである『ひと目見て可愛い!』と心が動くバッグを、ついに完成させることができました。
約1年のモノづくりを振り返りつつ、最後に4人からお客様へのメッセージをもらいました。
プランナー 中居:
「今回の企画で一番大事にしたかったのが『一田さんと相棒のようなバッグを作りたい』という思いでした。
お仕事バッグという切り口はありつつ、開発チームのおかげで、普段のお出かけや、休日のお買い物でも使いやすく、保護者会など少しきちんとしたい場面にも持っていける、まさに相棒のようなバッグに仕上がったと思います。
商品名には『がんばりどきも私らしく』と付けました。人それぞれ、いろんな『がんばりどき』があると思うのですが、そういうときにこのバッグがあることで、いつもより自分らしくいられたり、背中を押してくれたりするような、そんな存在になれたらと願っています」
デザイナー 波々伯部:
「一田さん、講神さん、そして私たちの、いろんなこだわりが詰まったバッグができたと思います。
質のいい柔らかな革を使い、軽量化のため革を薄くする加工もしていただき、緩やかな角度の曲線部分や持ち手の縫製は、かなり難しいことをお願いして、メーカーさんや職人さんにも頑張っていただきました。
すごくシンプルに見えるけど、ひと目見て可愛い!となるために、たくさんの技術が詰まってるバッグでもあります。そういうところも含めて、愛着を持って、長く使っていただけけたら嬉しいです」
講神さん:
「使いやすくて、ストレスのない、自由なバッグができたんじゃないかなと思います。
内側は、中綿を入れてフカフカにしたり、ポケットの仕切りをつけて整理しやすくしたり、今までの自分の商品ではやったことがない仕様も試してみました。一田さんやみなさんのアイデアをどう形にするか?と悩んだのも貴重な経験です。
荷物がある日も、そこまでではない日も、どちらにも寄り添えるものになったと思うので、本当にいろんな人に、自由に使っていただけるのが一番嬉しいです」
一田さん:
「バッグって、ほぼ毎日持って出かけるもの。ただ書類が入って持ち運びやすいだけでなく、見るたび『可愛いじゃん』って思えたら、その日はちょっとウキウキ過ごせますよね。そういう愛着が持てるバッグになったと思います。
私もひと足先に使っていますが、軽いし、疲れないし、肩にかけて持ちやすいし、A4のファイルもするっと曲げれば入るし、コンパクトですが必要なものはちゃんと収まる設計になっています。色は、ブラックもブラウンも、意外とどの服にも合わせやすいのも良かったなと思いました」
一田さん:
「この横長型は、何でも入れておきたいという人には物足りないと思うんですが、私のように年齢を重ねて、持ち物を少しずつ精査しながら削ぎ落としている方にはフィットするはず。年を重ねたからこそ選べるバッグだとも思うんです。
もちろんお若い方が持ってくださっても素敵ですし、バリバリ働いていたけど第一線から下がったという方にも、おしゃれに持っていただけます。
たとえば私は、仕事以外でも、このバッグにノート1冊と単行本1冊を入れて、休日は喫茶店に行ってコーヒーを飲みながら、ちょっとこの1か月の自分を見直す時間にしようとか、そんなふうにも使っています。愛着のあるバッグと出掛けるだけで、何でもない休日も心豊かに過ごせますよね。ぜひぜひ、たくさん使ってください」
§
4人の熱いメッセージを聞いているうち、私もウズウズしてきて、取材の終わりにバッグを持たせてもらいました。
手にした瞬間、あまりの軽さにびっくり! レザーバッグは重いイメージがあったので驚きました。革の質感も大人っぽくて素敵。そして肩掛けすると、自然とバッグ本体が腰のあたりに収まってくれて、これが何とも持ちやすいのです。荷物を探してガサゴソするのも最小限になりそう。
▲中居はブラウンも愛用中。休日のカバンの中身はお財布、スマホ、ポーチ、ミニ水筒を入れても余裕がある。「本や手帳も入るし、出先で買った物もぽんぽん入れられます」
ちなみに、私の当日の服装は、黒のタック入りワイドパンツ+古着のジャケット+スニーカーだったのですが、みんなに見立ててもらったところ「こういうメンズライクな服装のときにブラウンを持つのも、新鮮でいいのではないか?」とのことでした。
商品ページでは、さらに詳しくご案内しています。また今回のコラボバッグの特別企画として、一田さんの私服とのコーデや、カバンの中身をご紹介する動画も作りました。気になった方はぜひご覧ください!
【写真】丸尾和穂
一田 憲子
編集者、ライター。フリーライターとして女性誌や単行本の執筆などで活躍。『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(主婦と生活社)『暮らしのまんなか』(別冊天然生活)では企画から編集、執筆までを手がける。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、多くの取材を行う。著書多数。最新刊は『すべて話し方次第』(KADOKAWA)。ウェブサイト「外の音、内の香」http://ichidanoriko.com/
講神 いつ実
革小物ブランド「a(アー)」を手がけるバッグデザイナー。国内やヨーロッパなどの良質な革を厳選して使用し、日本国内の職人の技術を生かしながら生産している。貴重な素材を無駄にしないデザイン、できるだけ長く使っていただけるようなシンプルなデザインを心がけている。Instagram: @a_talq_official
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