【4月の波にのる】前編:心も体もダイナミックに捉えて。人生の波にのるための、おおらかな海のような学問

編集スタッフ 藤波

暖かい気候に上向く気持ちと、新しい環境へのそわそわと。

さまざまな感情が混ぜこぜになる4月は、気がつかないうちに心や体の調子を崩してしまうことがあります。

無理しすぎる前に自分を整えられたなら……そう思ったときに浮かんだのが、アーユルヴェーダ料理家でありホリスティックケアブランド『eatreat.(イートリート)』を主宰する小林静香(こばやし しずか)さんでした。

アーユルヴェーダというと、およそ5000年の歴史を持つインド・スリランカ発祥の伝統医療。

あちこちで耳にしながらも自分とは遠い存在に感じていましたが、小林さんが「セルフケアや美容の側面に注目が集まりがちだけれど、アーユルヴェーダは本来個人の人生の話をする、人生の波にのるためのおおらかな海のような学問で、医療です」と言っているのを聞いてから、ぐんと興味が湧いていました。

心と体が揺れ動く春、私たちの中ではどんなことが起きているんだろう? そのヒントをもらうことで今より上手に4月の波にのれる気がして、小林さんが営むレストラン「eatreat.ruci(イートリートルチ)」を訪ねました。

前編では、小林さんがアーユルヴェーダ料理家として活動するまでのお話をじっくり伺います。

 

どう生きたい?という問いかけが心地よかった

東京・世田谷の静かな住宅地に佇む小さなレストラン「eatreat.ruci」。1階はガラス張りになっていて、さっぱりとした店内に気持ちのいい空気が充満しているのが外からでもすぐ分かります。

ピカピカの大きなガラス戸を開けると、スパイスや焼き菓子のほのかな香りと一緒にやわらかな笑顔の小林さんが迎えてくれました。

小林さん:
「『eatreat.ruci』はオープンしてから1年と少しほど。アーユルヴェーダをベースにしたカレーや、スパイスを使ったドリンクを提供しています。

食を通じて人が治癒するのをサポートする、ということを目指しているのは料理の道を志したときから変わりませんが、振り返ると先が見えない時期もありましたし、色んな出会いに支えられてなんとかやってこれた気がします」

そもそも、アーユルヴェーダとはどのような学問なのでしょう?

小林さん:
「アーユルヴェーダは、アーユス=生命、ヴェーダ=智慧という2つの単語からできている言葉。命の智慧……つまりはいのちの学問だと捉えています。

学校では体系的に生理学や病理学、 薬理学などを長い時間をかけてしっかり学びました。 学んでもそう簡単には理解できない複雑な世界ですが、学校の先生も含め全体的におおらかで自由で、生きることを楽しんでいる感じに惹かれました。

アーユルヴェーダに出会う前から、自分は社会に対してどういうパートで関わりたいんだろう?と働くことや生きることについて考えてきたので、学ぶ中でどう生きたい?って問いかけられるのは気持ちよかったし、面白いなと思いました」

そう話す小林さんがアーユルヴェーダに出会ったのは30歳を過ぎてから。まずはその出会いについて伺います。

 

おばあちゃんになっても続けたい仕事を探して

新卒でテレビ局に入社し、サーカスや演劇などの興行をサポートする部署に配属されたそう。初めは料理とは関係ないところからのスタートだったのですね。

小林さん:
「そうなんです。もともと芸術・文化的なことが好きで仕事として関わりたいと思っていました。

中高時代に父親の転勤でロンドンに住んでいた時期があったのですが、最初は英語もあまり分からず、遊びたいと思ってもお小遣いでできることは限られていて……。

そんなとき、中心地の劇場の5階席などで子どもが格安で鑑賞できる枠があることを知って、夢中で通ったんです。だんだん内容を理解できるようになるのが嬉しくて英語の勉強を頑張れたし、すごく支えられました」

エンターテインメントを通して人の気持ちが一瞬でいい方向に動く。その原体験からテレビ局という最初の職場を決めた小林さん。

6年勤めたあと、友人に誘われ始めたケータリングユニットの活動をきっかけに料理の道を志します。

小林さん:
「仕事は充実していたけれど、おばあちゃんになってもできることかと考えるとずっと自信がありませんでした。自分じゃない方がいいのではと不安だったし、想像がつかないくらい大きな規模のお金が動くことにどこか理解が追いついていかなかったのも理由の一つです。

ケータリングはホームパーティーの延長のような感覚で始めましたが、企画も料理もとにかく楽しくて、これを極めたいとだんだん思うようになりました。色や食感などテーマを決めてテーブルを創り上げる過程にワクワクしたし、お客さんが食事を喜んで目の前で元気になって帰っていくのも嬉しかったんですよね。

人の気持ちが良い方向に動く仕事をしたいという根っこにある気持ちは変わりませんでしたが、より人の生活に近いものに関わってみたくて、会社を辞めることを決めました」

これだと思える道を見つけた小林さんでしたが、飲食業界に入って2年ほど経ったころ、食物アレルギーを発症してしまいます。

小林さん:
「会社を辞めて最初に働いたのはビストロでした。そこでは仕込みから接客まで全部を教えてもらって、とにかくやることがたくさん。働くってこんなに時間が充満していくんだと驚きながら、毎日が一瞬で過ぎていきました。

でも、もともと体が強くなかったのに頑張り過ぎてしまったんでしょうね。発症したアレルギーはエビとカニとサバでした。アナフィラキシーショックを起こしてしまうような重篤なもので、仕事を続けられなくなってしまったんです

それがちょうど30歳のとき。そこからの5年間は私にとってはまるで暗黒時代、先が全然見えない日々が続きました」

 

そうか、料理の前に人のことが知りたかったんだ

小林さん:
「料理で人の気持ちがいい方向に動くことが嬉しいから、人の体と心がいい方向に動く料理がしたいとはずっと思っていました。でもそれって全然具体性がない言葉で。

ビストロでの経験を経てもそれがどんな料理なのかはまだ見えず、とりあえずは自分のアレルギーを治そうと食事療法について勉強する中で出会ったのがアーユルヴェーダでした。

たとえば便秘一つとっても、人によって全然違うものと捉えるのがアーユルヴェーダの世界なんですよね。乾燥してるのか、冷えているのか、便秘と下痢を繰り返しているのか……症状だけに焦点を当てるのではなく、そもそもの体質や病気の過程、 原因を丁寧に紐といて、 その人それぞれのバランスを取ろうとするんです。

そうやって、目の前の人をまるごと理解しようとする姿勢が面白くて。そうか、私は料理の前に人のことが知りたかったんだと気がつきました」

自身のアレルギーと向き合いながらアーユルヴェーダの勉強が楽しくなっていく一方で、料理の仕事を具体的にどうやっていったらいいか、 迷いは増えていきました。

そんなとき、「eatreat.」が生まれるきっかけとなる転機がありました。

小林さん:
「勉強しながら知り合いの会社を手伝っていたので、ビストロを辞めてからも一定の収入はある状態でした。フリーランスとして時々
料理の仕事もいただいていたけど、前ほど熱意を持って生き生き取り組めないというか……。もう終わりにしてもいいかもしれないとまで思っていました。

そんな時期に、20代の頃にケータリングでご一緒したことのある、東京・町田『しぜんの国保育園』 園長(当時)である齋藤紘良さんと再会する機会がありました。料理をやめたいと打ち明けたら、はっきりと『静香さんは料理をやった方がいいですよ』と言われたんです。

たぶん同じことを言ってくれた人は他にもいたのですが、当時の私には不思議と絋良さんのその言葉がだけが響いたんですよね。背中を押しただけじゃなく、園のイベントに出ませんか?と機会までくれたことも大きかったのかもしれません。

そのイベントのフライヤーに屋号を載せる必要が出てきて生まれたのが『eatreat.』です。自分の治療食として日々作っていたアーユルヴェーダ料理を提供したのも、そのイベントがはじめてでした。彼がいなかったらきっと私は今ごろあのままぼけっと生きていたんじゃないかなと思います」

 

楽しいだけでは生活は続かない。
だからこそ、俯瞰して波を捉えてみるんです

こうしてお話を聞いていると、どんなに落ちているときでも道標は逃さないアンテナを張っていたことが、今の小林さんに繋がっているのかもしれないと思いました。

そう在るのはけっこう難しいのではないかと想像するのですが、何か意識していたことはありますか?

小林さん:
「うーん、なんでしょう。こうやって
振り返って綺麗にしゃべっているからそう感じるだけな気もしますが、昔からこの人の声を聞こうっていう勘を冴え渡らせたり、今だっていうタイミングを逃さないようにはしていたかもしれません。

社会人になってすぐは、楽しい瞬間がやっぱり最高だからそういう瞬間をたくさんお届けしたいと思っていたけど、生活はそれだけでは続かないし、人の体はそれだけでは治癒しないことを身をもって学びました。

自分の体がどうやったら良くなるか考える段階でアーユルヴェーダに出会ったのも今考えると自然な流れです。しんどい経験があったから、人生には落ちる時も上がる時もあると知ることができて、だからこそ目の前の点に意識を向けすぎることなく、時には鳥の眼になって遠くからおおきく人生の全体の波を眺めることも大切なんだと気づきました。

遠くから見たらたくさんヒントが散らばっているし、大事な時には必ず人に助けられたり、助けたりしているので、今いっときが苦しくてもきっと大丈夫な日が来ると信じることができます」

波の話で言うと、小林さんは人生の波にのるのが元から上手な方なのでは?と思いました。

小林さん:
「本当
ですか? でもたぶん、のるのと同じくらい落ちるのも上手ですよ(笑)。

そういえば、以前インド人の占星術の先生に『小林さんの人生は、いっぱい傷つくけど、その度に這い上がってその傷から学ぶことが多い人生です』と言われたことが。できれば傷つきたくないんですけど……と相談したら、もう決まってることだから仕方ありませんって返されちゃいました。

アレルギーが治った今も、ショックなことがあって気持ちが波の下にいく日もあります。でもまた高い波がやってくるから、それまではサーフボードの上でのんびりしていてもいいのかなと思えていて。アーユルヴェーダに出会って、昔よりもそういうダイナミックな波を楽しめるようになった気がしています

***

人生を波にたとえる小林さんとお話していたら、心の中からざぶーんと波の音が聞こえてくる気がしました。

これから先落ち込むことがあっても、きっとまた高い波がやってくる。そう考えたら、今よりゆったり構えた自分でいられそうです。

続く後半では、4月という時期に私たちの中で起きていること、そして心の閉塞感やそわそわとどのように付き合っていったら良いかヒントをお伺いします。お楽しみに。

 

【写真】メグミ


もくじ

 

小林静香

1982年東京生まれ。新卒で民放キー局に入社し、興行事業や番組企画に携わり、食養生への関心から料理の道へ転向。レストランでの勤務や出張料理の経験を積む中で生じた自分自身の身体の不調を食事や生活で整えるよろこびを知り、食養生の源流であるアーユルヴェーダを本格的に学ぶ。料理と対話の両方を行うホリスティックケアブランドeatreat.を主宰。Instagramは@eatreat._から。


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