【クラシコムのしごと】はたらき方を体現するオフィスって? 完成までの裏側をデザインチームに聞きました
編集スタッフ 吉野
3月末、新しいオフィスに引越しをしたクラシコム。初めのころは慣れない間取りにソワソワすることも。けれど最近は、新鮮さに加えて心地よさもおぼえながら出社しています。
オフィス内装の設計・デザインを主導したのは、コーポレートクリエイティブ室(CC室)。オリジナル商品のデザインをはじめ、クラシコムの「デザイン」に関わること全てを担っているグループです。
今回はデザイン事務所「SIGNAL Inc.(シグナル)」の皆さんと、約1年間、二人三脚で進めていきました。
▲(左から)今回のオフィスデザインを担当した、CC室デザイナーの野村と佐藤
CC室として本格的に空間をデザインしたのは、今回が初めて。しかもその空間は、私たち社員が集う「オフィス」でした。
その道のりには難しかったことはもちろん、普段大切にしていることを改めて実感した出来事も多くあったのだそう。
今回はCC室のスタッフ2人に、オフィスが完成するまでの裏話を聞きました。
撮影、会議、ラジオ収録…
働き方をリアルに感じられるオフィス
佐藤:
「新しいオフィスの内装をCC室が担当することが決まったのは、引越しの1年ほど前。はじめに、どんなオフィスにしたいのかを社内で握り合うためのミーティングがありました。
私たちはリモートワークが中心なので、その働き方の中で新しく作るオフィスである、ということは常に意識していて。そこでまず挙がったのが『訪れた人が、一目でリアルに、クラシコムの働き方を感じられるオフィス』。
ドアを開けると、あっちでは商品ページに掲載する写真の撮影をしていて、こっちではチーム会議中。ガラス越しにはラジオ『チャポンと行こう!』の収録をしているのが見えて……といったイメージです」
▲仕切りをできる限り除いた空間。エントランスのドアを開けると部屋の奥まで見渡せます
「好き」よりも「違和感」から共有してみる
野村:
「社内で新しいオフィスの方向性を握り合った上で、次に考えるべきはそれをデザインにどう落とし込むか、ということ。
でも、『こうしたい』と感じるデザインを言葉で表すのってなかなか難しくて。ちょうどその頃、設計士さんから内装のイメージを共有するために様々な建物の写真をいただいていたので、それらをベースにしてさらに写真を追加し『ありなしワーク』を行うことにしました」
野村:
「写真をテーブルにずらりと並べて、こんな空間がいいな、ここは少しイメージしているものとは違うかも、と意見を交わしていくワークです。設計士さんにも来ていただきました」
野村:
「ただ、私たちが作りたいのは写真そのままの建物ではなくクラシコムのオフィス。なのでひと通り『あり』『なし』をすり合わせたら、この空間のどういうところがいいのか?というように、私たちの感じる『こうしたい』の要素を、少しずつ具体的にしていきました」
佐藤:
「まずは『あり』よりも『なし』と感じるものから話していきましたよね。
『あり』とか『好き』って心浮き立つ感覚なのですが、朧げになりがちだし、どこまでも広がっていくなあと。対して『なし』『違和感を覚えること』って広がりにくく、不思議と共有しやすい面もあると思っているんです」
▲クラシコムのロゴは、新オフィスの入り口にも
佐藤:
「思えばこれまでデザインに関わったロゴ、Webサイトも、社内外問わず同じように方向性を擦り合わせてきていて。私たちにとって、多くのことに当てはまる考え方なのかもしれません。
こうして、オフィスのデザインもより具体的になっていきました」
カーペットの編み目も、ソファの生地も、意思を持って選択したい
佐藤:
「基本的にはCC室に全て委ねられていたので、選択すべきことがたくさんある中で一つひとつ決めていきました。
間取りはもちろんですし、もっと細かなところだと、社内で以前のオフィスから『ファミレス席』と呼ばれ親しまれているソファは、ハギレから選びましたよね。会議室のカーペットは、編み目の向きを決めるのにすごく時間がかかりました」
▲社内で「ファミレス席」と呼ばれているソファ
佐藤:
「オフィスが入っている建物自体の良さも反映した場所にしたかったので、編み目の向きで空間の感じ方が変わるからこそ悩んで……。
と、話し出したらキリがないですし、そんなところ?と言いたくなるような細かいことばかり(笑)。正解もないですしね。
でもはじめに握り合った『一目でリアルに、クラシコムの働き方を感じられるオフィス』という方向性があって、それに沿って『意志を持って選択した』場所にしたかったんです。なんでもいいやじゃなくて、一つひとつ、ここまでにみんなで握り合ってきたことを軸に選択した、という場所です」
▲木やグリーンに囲まれた空間を引き締めたくて、椅子はブラックに
野村:
「私たちの進め方を見て、設計士さんがとても丁寧に選択肢を提示してくださったのも、この方法を続けられた大きな理由です。だから、粘れるところは最後まで粘ることができました。本当にご一緒する方々に恵まれていたなと感じています」
感覚的なことを伝えるのって難しいから
野村:
「今回は設計士さんに依頼する側でしたが、私たちの普段の仕事は依頼を受ける側。それが新鮮で、だからこそ感じる難しさもたくさんありましたね」
▲施工途中のオフィスには何度も足を運び、細かな部分までやり取りをしたのだそう
野村:
「例えば設計士さんが提案してくださった間取りに対して、クラシコムとしては違うことをお伝えしたいとき。今ここを『変えたい』と伝えたら大変だろうな、と感じるけれど伝えなければいけないとき。気持ちが分かるからこそ、やっぱり言いにくいです。
でも言いにくいことって、気をつかいすぎると伝わりにくいことってありますよね。うまく言えないまま進んでしまって、結局もっと困らせてしまって、ああ早く言えばよかった……とか。
だからこそ、誠意のある伝え方やタイミングはいつも試行錯誤していました。その中でも、相手が『なぜ』この提案をしてくださったのかを考え、聞いた上でまた考えて、大事にしたいことを伝える、ということを徹底していたように思います」
佐藤:
「まず相手の意図や背景を聞くことはチーム全体で心がけていましたよね。
それを聞いた上でなら、こちらもなぜ違うのかをクリアに伝えやすいので。感覚的なことは伝える側も受け取る側も難しいと感じているからこそ、できる限り論理的に伝えられるようにしていました」
佐藤:
「そしてこれはクラシコムの社風にもつながることですが、『人格についてではなく、作ったものについて話している』という前提や、それを意識できる信頼関係があったのは大きいかもしれませんね。『作ったもの』に集中することを認められている空気、というか。
でもそれが成り立っていたのって、一緒に仕事をしていた方々の理解があってこそ。場所や状況によっても異なると思うので、どんな環境でもこのやり方が成り立つわけではない、ということも常に頭に置きながら取り組んでいました」
ここで働くスタッフを見て、やっと実感しました
▲主に商品開発の業務で使う作業台も、収納したいものや使い勝手を考え、細かく調整してもらいました
野村:
「このプロジェクトに携わって、ほぼ1年間。最後まで『完成』を見られないことは、サンプルを確認しながら進められる普段の業務と大きく違いました。
図面から3Dモデルを起こして見え方を確認したり、施工途中に何度も現場に足を運んだりはしていたのですが、実際に引越した後のことは想像つかないままだったんです。
なので、引越し当日にスタッフが仕事をしているのを見て初めて『オフィス、ちゃんとできてる!』と感激して、ようやく一区切りついたような達成感があったことを覚えています」
佐藤:
「スタッフたちが出社して、肌や髪の毛の色、服の色などが入って初めて完成するオフィスにしようと考えていたので、本当の意味で完成した状態を見たのはそのときが初めてでした。
だからこそ私も、その様子を見て心から安心したことをよく覚えています」
佐藤:
「他にも今回の仕事ならではだな、と感じたのは、自分一人ではないたくさんの方々と作ったものを、このオフィスに来た人みんなに使ってもらえるということ。『みんなで共有できている』という感覚がより強く感じられたんですよね」
***
一つひとつ、なんとなくではなく「選択する」こと、より良いものをお届けするために「作ったもの」に焦点を当てること、好きなものや違和感を感じたことに対してなぜ?と深掘りすること。
一見全く違うことをしているように見えるグループでも、同じことを握り合っているんだと感じることが何度もあります。
どれも決して簡単なことではないけれど、私はそれを読みものにして、このオフィスからお客さまにお届けできたらと思います。
【写真】鍵岡龍門(1, 4, 8, 12, 15枚目)
オフィスを巡る、読みものや動画もご覧いただけます
読みもの「クラシコムのオフィスツアー」やムービーもありますので、あわせてお楽しみいただけたら嬉しいです。
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