【訪ねたい部屋】第1話:60代で決めた1LDKの団地暮らし。素敵な先輩の住まいを訪ねました
ライター 長谷川未緒
50代を目前に、これからの私にフィットする住まいについて考えることが増えてきました。
そんなときに雑誌やSNSで拝見したのが、D&DEPARTMENTの商品開発コーディネーターで中小企業診断士の資格も持つ重松久惠(しげまつ・ひさえ)さんのお宅です。
明るいリビングに、壁一面の棚、そこにはセンスの良い器が並んでいます。
しかも東京郊外の団地で、66歳で都心から引っ越したのだとか。
きっと将来へのヒントになるお話が伺えるのではないかと、重松さんのご自宅を訪ねました。前後編でお届けします。
家を持ちたいと思ったのは60代でした
重松さんが窓の外にけやきの広がるこの団地に越してきたのは、2年前、66歳のときでした。
重松さん:
「それまで池袋でひとり暮らしをしていたのですが、コロナが流行してしまい、都心で身動きができないことが辛かったんです。
けっこう遠くまで歩かないと緑がない環境ではなく、もっと自然のある場所で暮らしたいと思うようになりました。
加えて家賃問題もありましたね。大学院で教壇に立ったり、中小企業支援機関の仕事をしたりしているのですが、そういった職種の定年はおおむね70歳。定年後も都心で家賃を払い続けられるのかなと不安でした。
そのふたつの理由から、家を持ちたいと思うように。それまではこれっぽっちも思っていなかったんですけれどね」
ファッション関係の仕事を経て、10年前からD&DEPARTMENTの商品開発コーディネーターを担当し、布、織物、生地などを扱いながら中小企業支援もしている重松さん。最初は生地の産地として有名や桐生市や富士吉田市で家を探しはじめました。
重松さん:
「大好きな生地作りのコミュニティに入って老後を暮らすのは良いだろうな、と。私も将来は物作りをして生きていきたいという思いもありましたし。
初めのうちはドライブしながら、ここで生活するのはどんなだろう?と想像しつつ回ったり。ところが探しても探しても、そのときは自分に合う家が見つからなくて。ひとり暮らしでは持て余してしまうような広い家か、逆に学生さんとかお若い方に良さそうなアパートとか。
そこでエリアを広げてインターネットでいろいろと物件を見ているうちに、東京郊外で団地という選択肢もあるな、と思うようになりました」
偶然が重なり、団地に決めることに
2021年末から探しはじめ、2022年のゴールデンウィークにたまたま見ていたサイトで、東京郊外に立つこの団地の間取りを見つけました。
重松さん:
「26畳のLDKと6畳の寝室で、60平米。これはいいかも、とピンときたんです。
でも、リノベーションの工事中で内見不可でした。とりあえず外からでも見てみようと近くまで来たところ、この辺、知ってる!と。子どもの頃に住んでいた実家のすぐ近くだったんです。
実家はもう売却しているのでこのあたりに来るのは久しぶりでしたが、あの頃の土の匂いとか思い出して、懐かしくなっちゃって」
▲6畳の寝室。服の一時置き用のバーは重松さんがリクエストし、リノベーション中に設置してもらったもの。
重松さん:
「見慣れた景色にますます興奮しながら、いったんお昼ごはんでも食べようと近所のショッピングモールへ行ったところ、やっぱり今、部屋の中も見ておいたほうがいいと思いまして。
すぐに不動産屋に電話をして相談したら、内見させてもらえることになったんです。
工事中でしたが、窓が二重サッシになっているところとかやっぱりいいなと思ったので、工事の人に『フローリングはどうなりますか』などいろいろ質問したら、すごくシンプルな家になりそうだとわかったんです。
そこでよくよく不動産屋さんと話をしたら、なんと実家を売却した不動産屋の支店で、これもご縁だしと後押しになり、購入したいと思いました」
じつは重松さん、66歳から家探しをはじめて70歳くらいで購入できればいいと考えていたそう。
重松さん:
「予算がね。一括で購入したいけれど貯金がない。
おかげさまで70歳までは仕事が詰まっているから、それまでの4年間で貯めようと思ってたんです。
ところが思いがけず予定よりも早く決まってしまい、お金がないんですけど、と不動産屋さんに相談したら、ローンを組みましょう、と。
私の年齢でローンなんて組めるのか不安でしたが、個人事業主なので決算書とかいわれるままに書類を用意して出したら、ローンが通ったんですよ」
70歳以降は家賃を払う余裕はないから、と計画した持ち家でしたが、ローンは10年で完済は76歳。
不安になり、友人に相談したそう。
重松さん:
「今は金利がすごく低いから、ローンが組めるならば組んだほうがいい、購入費用を一括で払うよりも、毎月ちょっとずつ返済するほうが手元にも資金が残せるからいいのでは、と。
返済額も池袋のマンションの半額くらいだし、気になるならがんばって繰り上げ返済したらいい、と言われて、たしかにそのとおりだと少し安心できました」
生活の積み重ねが、持ち物に出るから
2021年末から家を探しはじめ、2022年のゴールデンウィークに決めて、引っ越しは7月の末でした。
片付けや家具の選別など、大変だったのでは?
重松さん:
「もう大忙しだったけれど、一気にやったのがよかったのかもしれない。
荷物はそれほど多くないんですよ。というのも、じつは51歳のときに離婚して6畳二間の家に越したときに、ずいぶん片付けていたので。
この年齢になると、生活の積み重ねがあるから、持ち物で人生が見えるみたいなこともありますよね。
この家の前に暮らしていた池袋のマンションも50平米だったので、本でも服でも、ひとつ買ったらひとつ処分すると決め、物を増やさないようにしてきました」
重松さん:
「多いのは器くらいですね。友人を招いて食事会をするのも、旅先で器を買うのも、昔から好きなので。
離婚したときに元夫と半分ずつし、段ボール8箱分を親戚宅の余っている部屋に置いてもらっていましたが、池袋のマンションに越したときに引き取ったので多いんです。
以前は引越し業者に梱包を頼んだこともあったけれど、そんなことに使えるお金はないから、自分でやろうと思いました。
YouTubeで検索し、引越し時の食器の包み方を詳しく紹介してくれているチャンネルなどを参考にし、怒涛の2か月でここに引っ越しました」
ぜんぶが叶うことはないから、優先順位を決めて
ここで暮らしはじめて2年。直感は当たり、ゆとりのある暮らしを楽しまれていますが、思っていたのと違う、ちょっと困ったことなどあるのでしょうか。
重松さん:
「覚悟はしていたけれど、やっぱり都心まで遠いですねぇ(笑)。
池袋で暮らしていたときはどこに行くのも30分でしたが、ここからだと片道1時間半かかります。
ほぼ毎日都心に出るので、往復3時間を有効活用しなくちゃと、電車のときはメールの返信をしたり、ネットフリックスを見たり。車のときも、ポッドキャストやラジオを聞いたり。
家にこもっているより、外に出たほうが気分転換にもなるので、いいんですけどね」
家を決めるときは、好みもあるけれど予算やそのほかさまざまな事情があるから、すべての希望が叶うことはないのだとも。
重松さん:
「優先順位ですよね。私なら、台所とバスルームに自然光がたっぷり入って、緑が近くに感じられて、60平米で、予算内。
ちょうどいい家が見つかって、よかったと思っています」
続く後編では、この家のシンボル的な食器棚や中古で見つけた家具、60平米だからこそますます楽しめるようになった趣味のこと、これからの夢などお伺いします。
(つづく)
【写真】メグミ
もくじ
重松久惠(しげまつ・ひさえ)
文化服装学院卒業後、編集者、アパレル勤務を経て独立。〈D&DEPARTMENT〉では商品開発コーディネートを務める。また、中小企業診断士の資格を58歳で取得し、さまざまな会社のアドバイザー、大学院講師としても活動中。
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