【大人のふだん着おしゃれ】前編:75歳、雑貨店スタッフ。「いくつになっても気分の上がる服を着ていたいです」

ライター 嶌陽子

今日着る服がなかなか決まらない。街で見かけた素敵な装いを真似してみたけれど、自分にはどうも合わない……。自分に似合う服を見つけるのって、案外難しいものだなあと日々感じています。

しかも年齢とともに、それまで大好きだった服がなんだかしっくり来なくなったりして、ますます迷走状態に。

だから日頃からつい目が行ってしまうのが、年を重ねても自分に合う服を上手に着こなしている人。どんなふうにして服を選んでいるのか、自分に似合うおしゃれはどうやって見つけているのかなど、いろいろ聞いてみたくなります。

そんな気持ちで訪ねたのが 佐々木裕子 ( ささき ゆうこ ) さんです。鎌倉の雑貨店「moln(モルン)」店主、 五十嵐綾 ( いがらしあや ) さんの母親であり、自身も週に1度店に立って接客をしています。

ご自身や娘の綾さんのインスタで時折披露している装いがチャーミングで、よくお似合いの佐々木さん。自宅の庭で育てている草花の写真も投稿していて、暮らしやおしゃれを楽しもうという気持ちが伝わってきます。

佐々木さんの服との付き合い方、日々の過ごし方を聞いてみたくなって、「moln」にお邪魔してきました。


服は好きだったけど、40〜50代は体の不調に悩まされて

▲ヘアスタイルも本当にお似合い。「40年間変わらないスタイル。美容院もずっと同じところです」

現在75歳の佐々木さん。ショートカットに眼鏡、そしてぴかぴかの笑顔が印象的です。

佐々木さん:
「服は元々好きでした。大学を出た頃に一度だけ、原宿で写真を撮られて雑誌のファッションスナップに載ったこともあるんですよ。

社会人になってからも、週末は買い物に行くのが楽しみでした。青山にあったベルコモンズなんかによく行ってましたね。どちらかというとメンズライクな雰囲気のものが好きで、これは今でもあまり変わっていません」

佐々木さん:
「結婚して、子どもが少し手を離れてからはテニスに打ち込んだりしていました。ところが40代の半ばからひどい頭痛に悩まされてしまって。月の半分は寝ているようになってしまったんです。

今考えてみると、更年期障害だったのかもしれません。でも当時は大学病院で検査もしたけれど、原因が分からなくて。当時はおしゃれどころではなく、服はその辺にあるものを着る感じ。外出もあまりしませんでした。

そういう時期が20年くらい続いたんです。貴重な40代、50代の時期を返してほしいという気持ちは、率直に言って今もあります」

佐々木さん:
「その時期に始めたのが庭仕事です。子どもの頃からグリーンは好きで。頭痛がひどかった時期も、庭仕事をしている時だけは不思議と楽になったんですよね。

結局、ガーデニングは今もずっと続けています。我が家の庭はそれほど日当たりがよくないので、いろいろな植物を植えてみては、どんなものが元気に育つかを試してみるのが楽しいんです」


65歳で雑貨店スタッフに。再びおしゃれに興味が湧いてきて

60代半ばでようやく不調が治ったという佐々木さん。やがて娘の綾さんに誘われ、綾さんの店「moln」で週に1回働くことになりました。65歳の時です。

佐々木さん:
「接客業をするのは初めての経験で、自分にできるか不安でした。でも始めてみると、お客様と話すのが楽しくて。

働き始めた頃は『またおしゃれしよう』とは全然思わなかったんです。でも娘に勧められたり、お店に入荷する服などをみているうちに『この服、似合うかな』『これ着てみようかな』と思うようなってきました」

▲娘であり頼もしいおしゃれのアドバイザーでもある「moln」店主の五十嵐綾さんと。

佐々木さん:
「最近は、お店で扱っている服を買うことが多いです。娘がいろいろアドバイスをくれるんですよね。自分には合わないと思っているものでも『試着してみれば?』と言われて試着したら『あ、可愛い』と思うことも。

あとは近所にあるSEITA PLUSというお店も時々のぞいて、気に入ったものがあったら買っています。

インスタでおしゃれな人のコーディネートを見たりもしますし、お店に来るお客様もおしゃれな人が多いので、着こなしを真似してみることもあります」


自分に似合う服、どう選んでる?

あちこちで情報収集しながら自分の好きなスタイルを見つけている佐々木さん。日頃から、服はどうやって選んでいるのでしょう?

佐々木さん:
「身長が152cmと低めなこともあり、全体のバランスやシルエットには気をつけています。たとえばブラウスにしても、あまり大きすぎるものだとバランスが悪くなってしまうので……。

イメージだけで買って失敗してしまうこともあります。たとえば花柄の服を見て『素敵!』と思って買っても、実際に着てみるとやっぱり自分には合わないなと思うんですよね」

佐々木さん:
「大きさや丈もそうですが、色も大事。年齢とともに、似合う色も変わってきたように思います。髪の毛が白くなるにつれ、ベージュなどは何だかぼやけて見える気がして。最近は、顔の近くには白、あるいは黒や紺などのはっきりした色を持ってくるようにしています。

もうひとつ、年を重ねたからこそ、だらしなく見えないように気をつけたいなと思っていて。

Tシャツでも襟が開きすぎているものは避けたり、しっかりした生地のものを選ぶようにしたり。基本的にはお手入れを気にせず着られる服を選んでいますが、たとえTシャツであってもしわが気になる時はアイロンをかけるようになりました」


好きな服を着て、ひとりで映画や美術館に

週1回のmolnでの接客のほかは、ガーデニングに精を出したり、ピラティスに通ったりしているという佐々木さん。去年、膝を悪くしてしまったものの、一念発起して数ヶ月間専門のトレーニングに通い、見事に回復したそう。

新しいことにもトライしながら前向きに日々を過ごしている様子が伝わってきて、こんなふうに年を重ねられたらと思わせられます。

佐々木さん:
「お友達や娘と出かけることもあるけれど、ひとりで行動することも多いです。ひとりで映画を見に行ったり、美術館に行ったり。人と一緒だと気を遣って合わせなければいけないけど、ひとりだと自分の好きなところへ行けて、好きなようにできるでしょう?

服に関しても、ひとりだと『一緒にいる人たちの中で浮いてしまうかな?』と思わなくてすむので、好きな服を好きなように着ています。

年を重ねたらもう服にはこだわらないという人もいるけど、私は好きな服を着ていたいです。気に入っている服を着るとそれだけで気分が上がりますから。

正直言って、出かけた時などに周りを見て年齢を気にしてしまうこともあるんです。でも好きな服を着ていると、自信を持って歩いたりお店に入ったりできる気がします」

佐々木さんの言葉を聞いて、そうそう、と深くうなずいてしまいました。大好きな服を着ていると、誰に見られているわけでもないけれど、いつもよりちょっぴり胸を張って歩きたくなったり、ひとりで過ごす時間がもっと楽しくなったりするもの。服の持つ力を、あらためて教えてもらったようなお話でした。

続く後編では、そんな佐々木さんのふだん着のコーディネートを見せてもらいながら、「似合うものを見つけるには?」というテーマについても聞いていきます。

 (つづく)

【写真】土田凌


もくじ

第1話(10月20日)
75歳、雑貨店スタッフ。「いくつになっても気分の上がる服を着ていたいです」

第2話(10月21日)
パンツスタイルが好き。年齢とともに「少しの可愛らしさ」を求めるようになりました

佐々木 裕子

会社員、専業主婦を経て、65歳から娘が営む鎌倉の雑貨店「moln(モルン)」のスタッフに。週に1度、店頭に立っている。ガーデニングも好きで、自宅の庭で草花を育てて楽しんでいる。

Instagram: @yuuko.garden


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