【バイヤーのコラム】遠野で教えてもらったこと。
編集スタッフ 松田
少し前に遡りますが、8月の夏休み、岩手県の遠野を訪れる機会がありました。
以前から行ってみたかった、馬たちと一緒に暮らしを営んでいる、とあるゲストハウスでの宿泊が目的です。
そこで、馬たちがのびのびと放牧されている広原に連れて行ってもらったり、遠野での暮らしのことを教えていただいたりして数日を過ごしました。
夜はみんなで夕食をいただきながらおしゃべり。そのおしゃべりの中で、管理人のおじさんがおっしゃっていたことが、その時の自分にとって、とても印象的な言葉でした。
「山や森の中で暮らたり、馬たちと一緒にいるとねぇ。予想外というか、なかなか自分が思った通りにはいかないなぁということばっかり起きる。でもそれってきっと、人生においては、当たり前なことなのかもしれないって最近思うんだ。
昔は自分も東京に住んでいたこともあったんだけど、ビルや大きな建物に囲まれた中で暮らしていると、たまにそのことを忘れてしまうんだよねぇ。まるで世の中の大体のことは、人とか自分の力で、どうにか思い通りにいくもんだって思いがちだったなぁ。
きっとどこにいても、ハプニングというか、どうにもできないことは起こる。森の中の暮らしで、特に学んだことかもしれないな。
そんな状況に出会ったときに、それをどう工夫して乗り越えるのかも大事なんだけど、時には“受け入れること”も、大事だったりするんだよね」
▲真夜中のお客さん。窓にペタリと可愛らしい姿で。
“努力しても、どうあがいても、自分の力だけじゃ、どうにも出来ないことに出会うこともある。時にはそのまま受け入れることも大切なんだ”
夕食が終わったあと、部屋のベッドの中に潜り、その会話のことを何度も繰り返し考えていました。
わたし自身は、思い通りにならない出来事が起きることに対して、異常に恐れがちなのかもしれないなぁと。
例えば、仕事においても。家族との暮らしにおいても。
そういえば少し前にも、しばらく悩んでいたことで母に電話で愚痴をこぼした時、「あなたは、昔からなんでも完璧にやろうとしすぎるところがあるからね。そんなに上手くいかなくてもいいよ」と言われたっけ。
失敗したくない。
迷惑をかけたくない。
できる限り完璧に近づけたい。
そうして、自分の力だけで「上手くやろう、上手くやろう」としすぎるあまり、それが認められなかったとき、思い通りにいかなかったときに、必要以上に、焦ってパニックになって、落ち込んで。自分自身を責めてしまう。
さらに悪いことには、そんな負のオーラがいつの間にか自分の中だけで抑えられなくなって、周囲にまで溢れ出すというループになることが、しばしばあったのです。
▲「そうそう、思い通りにいくことばっかりじゃないよ。それでも意外と平気なもんよ」と話しかけられているような。
もちろん、工夫や努力をするから、乗り越えられることも、得られることも、たくさんある。
けれど「まぁ、どうにも出来ないこともあるよな。しょうがない」と受け入れて、ちょっと距離を置いてみたり、誰かに助けてもらったり、まわり道したり。時には、そこから別の道を選ぶことの方が、自分にとっても、周りのみんなにとってもハッピーになることもあるのかもしれない。
遠野の森の中で、そんなことを思いながら眠りにつきました。
自分の胸の中に、「受け入れる」ということに対しての小さな覚悟の種を植えてもらったような、そんな感覚でした。
これから先、歳を重ねていったり、人生の階段を上る途中には、どうにも思い通りにならない状況に出会うことが、今よりきっと増えていくのだろうと想像します。
その時までに、いつかの遠野で植えてもらった、小さな覚悟の種が芽吹いていて、おおらかに「受け入れる」自分がいたらいいな。そんな自分に、いつか会ってみたいな、と思っているこの頃です。
▲日々、美味しいごはんが食べられることに感謝。少しずつ、少しずつ、「受け入れる」種を育てていきたいです。
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